NHK「認知症-なぜ見過ごされるのか」を見る
ヒマに任せ、今夜のNHKスペシャル、「認知症医療を問う」を見る。と言っても、神助の番組とザッピングしながらみたので、全体の流れは今ひとつ不明。
見ていた限りでは、なぜ痴呆性疾患を早期発見出来ないのか、というのを医療問題とし、適切な治療体制がないことをもっぱら行政の責任として取り出すというような姿勢であるようだった。後の方の問題は別として、最初の方が問題にされる理由がわからん。
認知疾患というのは誰が見ても明らかな客観的症状が出るわけで、専門家が診断しなければ判らないと言うようなものではない。周りの人が気がつかないような症状しかないのなら、専門家だって知らんふりして放っておけばいい。具体的な不具合が出てから、ケアを考えれば充分だろう。
行政課題として、介護施設では薬物費が出ないので、アリセプトが処方出来ないというのを問題にしていたが、TVで紹介していた人たちのような病状では、アリセプトなんぞ何の役にも立たないし、むしろ行動障害が悪化するのがいいところ。処方して喜ぶのは薬屋だけであろう。
現在の介護保険制度には様々な問題があるが、一番まずい点は家族がケアすることを基本的前提にしている点である。施設も病状の進行度に応じたケアを提供する体制になっておらず、特に精神症状対応にはまるで無力なところがほとんど。もっとも、対応に困る精神症状の出現率というのは、そう高いものではないのだけれど。
いったん精神症状が出現し、対応に苦慮するということになると、アリセプトみたいな「効かない事がないわけでもない」薬に、魔法の薬効を期待するのだろうが、そりゃちょっと甘い。アリセプトが効くのは、初期の健忘症状、というより、それによる二次的全般的な意欲低下ぐらいであって、せん妄状態などを示す場合、使ってもまず無意味である。(もちろん、例外はある)
そういう異常行動には、やはり昔からの向精神薬を慎重に使う必要があり、このあたりは痴呆老人をみるなら、何科の医師であろうとそれなりに精通して貰うしかない。おざなりに抗不安薬が投与されて、老人を腰砕けにさせていたりするのはよく見るところであるが、確かにこれは「医療課題」と言えるのかも知れない。
総体として、「治療」への無意味な期待ばかりが肥大した番組の論調に、いささか不安を感じた。現在の段階では、痴呆を根本的に改善させたり進行を大幅に遅らせるということは、まず不可能であることを前提にするしかないと思うんですがね。
しかも、こういう番組では誰も言いたがらないので、私が代わりに言うなら、痴呆性疾患というのは、確実に死に至る病なのである。これは悲しむべき事ではあるが、同時に、ある意味吉兆でもある。
発症から数年、長くて10年以内にまず間違いなく彼らに死は訪れる。この病を得た人々に、尊厳ある生を全うさせるため、多少贅沢なケア体制を作ったって、そう無茶苦茶金がかかるというものでもない。人生最後の困難な時を、どのような形で乗り越えるかは家族の選択の問題とも言えるが、私はあまり無理せずに、安らかな最期を得られるよう、専門施設が関わればいいのではないかと思う。
いずれにせよ、それには「延命」ということだけに絶対的な価値観を置いた、今までの医療理念からの大きな転換が必要であろう。充分な議論が要求されるであろうが、そのための前提が準備されているかと言われると、この番組などを見る限りでは、いささか不安が尽きないのである。



1 月 21st, 2008 at 12:27 AM
身内の話であれなんですが一番上の伯母が言う事は支離滅裂、ズボンとセーターの区別さえ出来ずセーターを穿く、下は垂れ流しに近い状態、実印もその辺の小物の区別も付かずという状態になって、もうダメだと入院させる施設の候補調べと選定にまで至ったのですが、お家騒動のかたが付いたら元にもどっちまいました(笑)
子供がいない後家なので、都心へ出てきたがる地方の親類の子なんかの面倒見たり住まわせて学費出したりしていたのですが、その辺がこじれて、財産を盗られる家を乗っ取られる、みたいなストレスでおかしくなったらしいです。
その問題が片付いたら、一時期もう寿命も長くないだろうと言われていた人が、頭も身体もピンピンに戻っちゃいましたわ。物忘れはありますけどその程度。
精神的ストレスって恐ろしいねと、親と真剣に話す日々。
1 月 21st, 2008 at 3:27 AM
番組冒頭で問題視されていたのは、痴呆症は改善は不可能なまでも進行を緩やかに抑えられる処方もあるのに、見当違いの診断を下されて明後日の投薬を施される不幸を防ぎたいという趣旨でした。
痴呆症の明確な診断基準が未だ確立されず、医師側の五十台、六十台での発症の可能性も低いという先入観もあり、鬱症状と診断されたケースが紹介されていましたが、当初の投薬で一時的な改善が認められるも、やがて副作用がつのり、患者、医師、家族を含めた混乱に陥った例が。
番組中では問診、ペーパーテスト、画像診断の三点セットで明確なガイドラインを定めるべきだと(できるのかしらん)提唱されており、また現場では多くがこのうちのひとつかふたつで済まされ、結果として脳の萎縮を見落とすという実例が紹介されていましたが。
箱の透視図を書かせる、時計の文字盤を書かせるなどのテストでは、最初から書けなかったのだろうという診断も。そりゃ絵の下手な人もいるけどさ。
これに対する医師側の発言として、だって痴呆症の専門医になってもメリットが無いんだものという素晴らしく明瞭な返答がありましたが。
ここから、では何から始めるべきなのかという公開討論に入ります。
ってか、客観的な症状が出てからではケアは遅すぎるという前提があるもので。
在宅ケアを建前としている以上は、物忘れや不眠などの初期症状の段階で進行を食い止める必要があるわけで。
認知症と在宅介護に関しては、いぬあっちけースペシャルでは一連のシリーズとなっておりますので、他の番組と比較検討すれば、いぬあっちけーなりに何を言わんとしているのかがおぼろげながら見えてきます。
1 月 21st, 2008 at 11:56 AM
うちの婆様は精神科併設の老健に入っている時は相当落着いた物の、
大腿骨骨折後外科併設の老健に入った途端に悪くなり・・・
大腿骨骨折後の「良くある悪いパターン」の一つとも取れなくは
ないですが、向精神薬の匙加減、精神科の心得のあるスタッフは
重要だと思った次第。
然し、そもそもボケない老人というのも不自然な訳で。
統失が常に一定比率で発症するように・・・
難治性鬱が存在するように・・・
何か医者に行って薬を付ければの様な多幸的なお話の先には
幻滅しか無いような。
1 月 21st, 2008 at 10:21 PM
>客観的な症状が出てからではケアは遅すぎるという前提
これは正しいとは言い難いです。ごく普通に、尊重されるべきお年寄りとして接するのが一番で、妙に「疾患」として接してもロクなことはありません。まして、早めに薬を飲んだからといって、メリットはないでしょう。
1 月 21st, 2008 at 11:06 PM
苦しんだりは別ですが、
赤ん坊は泣く。
若者は暴れる。
年寄は繰言を垂れる。
人間100人も居ればそうのうちには妙な奴も結構居るし。
適切な向精神薬の投与というのは痴呆症より他の精神疾患のケース
の方が問題が大きくて・・・
製作者は余程歳をとるのが嫌なんでしょうな。
1 月 23rd, 2008 at 12:39 AM
NHKの一連の報道では、アリセプトが症状の進行を遅らせると言う一定の論調があるようなんですが…。
コリン分解の阻害薬が、脳神経系の萎縮を保護する機序が存在する?
アミロイド沈着との関係?
あるいは疫学研究で何らかの知見があるんでしょうかね。
初期・中期症状の軽減であって、死亡率に変化無し、見かけの進行を遅らせるだけというのが妥当なところ?
それと、阻害剤の常として、体が阻害剤前提のホメオスタシスを獲得してしまえばもう効かない?
1 月 23rd, 2008 at 1:25 AM
初めて書き込みさせていただきます。
認知症に限らず、精神科の診断にまつわる功罪は難しい問題だと思います。
つまりは、「診断されるもの=(薬物療法)で治療されるべきもの(あるいはなんとかすべきもの)」という構図がどうも当たり前のようになっていきつつあることです。
今回の放送の内容は私のような臨床精神医学をしているものにはどうも違和感を感じますね。認知症の方のQOLを改善するのは介護の質と周辺症状をうまくコントロールする(ドネペジルよりは)安価な従来の向精神薬の使い方だと思うのですが。
1 月 24th, 2008 at 1:36 AM
初めまして。なんか場違いかもしれませんが・・・。
グループホーム(認知症対応型なんとか)に勤めているもの
です。
アリセプトは・・・ あんまり意味ないような、効かない気がします。
(というかグループホームに入る段階のお年寄りがなんで飲んで
るんでしょう)。
ビタミン剤でも飲んだほうがよっぽど有意義じゃないかと思います。
あの。
薬は、ほんとに怖いです。
夜寝られない・・・で、すぐ眠剤が出ますけど。
すごいです。夜間譫妄とか昼間の無気力とか。
眠剤を飲まなくなっただけで(介護側からずいぶん強く
言いました。長くかかりました)、
ずいぶん良くなった方もいます。
もちろん、ふつうに熟睡できる方もいますけど。
精神科に限らず基本的にお医者さんは「先生」なので、
本当に難しいです。
>ごく普通に、尊重されるべきお年寄りとして接するのが一番
妙に「疾患」として接してもロクなことはありません。
これにすごくホッとしました。
ほんとそうです。日ごろ接していると逆にふつうのばあちゃん
じいちゃんとして扱いすぎちゃうのでダメですけど・・・
最近は新聞見ても治療ばっかり宣伝してるんで、
もやもやしてます。
無理な在宅の押し進めもどうかと思いますが、
お国の方針なんでどうにもできません。
・・・ほんとなんか流れ無視ですみません。
コメントにかこつけてグチ言ってしまいました。
これからも更新楽しみにしてます。