3と8を書くと気持ちが悪くなる

近代脳神経科学は、脳機能障害に起因する症候学を、様々な形で蓄積してきた。しかし、それらによって人間活動全般を支える脳機能の全般に関わる障害が捉えきれているとは言えず、なお個々の症状を記載するに止めざるをえない場合も存在する。
我々は古典的神経症機制によるものとも、脳器質的な障害による知覚障害とも判断できない訴えのある症例に接する機会があった。ここにその詳細を提示し、症候論的、病因論的な考察を加えたい。
症例は60歳台前期の男性で、症状を自覚したのは数ヶ月前からである。男性はある製造業生産ラインの管理をしており、一日の仕事を終えた際に報告書を記入する。その際に生産量の数字を記入するのだが、3、5、6、8、9のように、丸みをもつ数字を書こうとすると違和感が出るのを自覚するようになった。
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