病院に行こう:初診外来編
病院受診の為に夏休みを取るという、損失感をぬぐえぬ夏の日の朝、海岸通りを一路H山ハートセンターに向うのであった。裕次郎の300SLなら、ちょっと走るのは難しかろうと思われる狭く彎曲した道路の傍らに、目指す病院はあった。こちらのほうはモナコのプチホテルだと言っても通りそうな、リッチで瀟洒な作りである。
渋滞を覚悟してやたらに早く出たので、まだ受付も始まっていない時間に着いてしまったが、それでも応対する職員は親切に番号札を渡してくれ、時間通りに受付は始まるのである。もっとも、ここから関門は数多く、問診票書き入れ、血圧・身長・体重測定、簡単な問診、心電図・心エコー検査、採血、造影3DCTをこなしていかないといけない。
実際の診察は、聴診やらの儀礼的理学検査もなく、今後の治療方針の確認という一点のみ。多分、ほとんどの患者も他の病院からの紹介患者なので、同じようなものだろう。まあ、同業者だという理由もあるか。
私の不整脈(心房細動)は数年前にはじまり、初めのうちは発作性であったが、次第に固定してしまった。当初は夜間や食後などに急に頻脈が出て、かなり気持ちが悪かったが、逆に慢性化したらそういう不快感はむしろ無くなった。普通は、頻拍にならないようにコントロールしておけば良し、とされる状態である。
と言っても、いつも胸元がすっきりしない感じが続くし、言うならばいつも心臓がズンドコドコドコズンドコドコと言うような感じで勝手に動いていて、急な運動量変化に応じた脈拍の調整が出来ず、ポンプとしての性能も2割方落ちるため、強めの運動にも差し支える。
一応心エコーだけは定期的に受けて、経過は確かめていたが、最近左心房径の拡張が目立ち始めた。このままでは心機能の更なる低下や、心房内血栓形成→脳に飛んでいって脳梗塞で麻痺やら植物状態なんて不吉な予感もするので、ここは思い切って先端医療に身を任せるのも一つの選択か、と思い直したわけ。
今まで、この状態を根治させる為には、心房内で過剰な電気刺激を引き起こす部分をカテーテルで焼くと言う方法があった。しかし、なにせ肺静脈から左心房に流入する部分のそこら中に、異常興奮の起源となる組織があるので、何十ヶ所もジコジコと焼き潰して行く必要があり、やり過ぎると心臓に穴が空く危険がある。やらなさすぎると効果は無いし、多少効いたと思っても、再発頻度が高いという問題点があった。
それが、このH山ハートセンターでは、言うならば先端に小型電子レンジを組み込んだ風船をつけた焼灼用カテーテルを開発して、一気に治療効率を高めたという(Link)。今までもカテ先端を平面にして、焼灼を容易にしたと言うのは聞いたことがあったが、風船という立体を使うことでさらに手技を容易にし、効果を高めたという主張。
もっとも、物事には改良があれば必ずどこかに犠牲になる面があるものだ。その点にもう一つ納得できない感じは残る。今日の説明でも、今までの心房細動治療実績はほぼ300例だとのことで、もう少し多数の症例を予想していた私は、少々考え込まざるを得なかった。もちろん、他の膨大なカテーテル治療の経験の積み重ねがあるわけで、まあここは身を任せるしかない、というところ。毎朝、駅の階段で冷や汗流しているのも、情けないものねぇ。
一応、一週間抗凝固剤を飲んで量を調整し、処置のための入院日程を決めるという話になった。あーあ、今年の夏休みは、病院暮らしで終わりそう。来年にはせめて遠泳大会出場が可能になる程度の回復がないと、どうにも元が取れんぞ。


