ゲイは搭乗お断り
これはアンセット・オーストラリア航空の従業員、ゲイ氏が会社から従業員向けの無料搭乗券を貰い、利用したときの体験である。
ゲイ氏が機内に入り、自分の席につこうとしたら、そこには既に正規航空券を持った乗客が座っていた。そこでゲイ氏は不満も言わずに空席に座った。
ゲイ氏は知らなかったのだが、たまたまアンセットの別便で機器のトラブルがあり、そちらの乗客が他便に乗り換えていたのだ。ゲイ氏の便にも何人かの乗換え客が来たので、無料券乗客は後回しと言うことになっていた。
客室乗務員はリストをもって機内を回り、既に搭乗している無料客を降ろし始めた。覚えておられるだろうが、われらのゲイ氏は予約席とは違うところに座っている。係員はゲイ氏が座るはずだった席に向かい、そこに座る乗客に「あなたはゲイですよね?」(”Are you gay?”)と尋ねた。
その男は恥ずかしげに肯いたので、乗務員は「それでは当機から降りていただかないといけません」と告げた。ゲイ氏はそれを聞き、乗務員に説明しようとした。「間違いだよ。私がゲイなんだ」。そうすると、さらに第三の男が現れ、乗務員に怒りの声を上げはじめた。「ふざけるんじゃない。俺だってゲイだ。俺たちを放り出そうったって、そうはいかないからな!!」。
機内ではあちこちで「航空会社にゲイを飛行機から降ろす権利なんかないぞ」と怒鳴り声があがり、大混乱となってしまった。< 上のニューヨーク・タイムズ記事切り抜きとされるものを、いい加減に和訳>
これは先日、しばしばパクリ元にさせていただいているThe Museum of Hoaxにアップされていたもの。記事へのコメントによれば、これは昔からあるジョーク化した都市伝説で、ジャン・ハロルド ブルンヴァンの著書にも収集されているという。記憶にないので確かめようと思ったが、本がどこにあるのか見つからない。
ちょっと検索してみれば、航空会社がUSエアーになっているバージョンが「ジョーク」として結構あちこちで紹介されており、このアンセット・オーストラリア航空版は、もっぱら「びっくり世界ニュース」として転載されていることが判る。
なかなか面白い話ではあるが、乗客に乗務員が”Are you gay?”と尋ねるのが妙。なんぼなんでも、”Are you Mr.Gay?”と聞くのでは。記事の最後も、オチのない関西落語みたいで、まるで新聞記事らしくない。
The Museum of Hoaxによれば、この話がニューヨーク・タイムズ記事になった記録はないらしいが、三度ほど別の新聞が事実として報道しているそうだ。ちょっと前に、毎日新聞英字版が、デマ記事を事実として報道して問題になったが、似たようなことはよその国でもやっているんですな。
私もざっと検索していて、フロリダのキリスト合同教会の牧師さんが書いた記事を見つけた。この方は、1999年にシドニー・モーニング・ヘラルドに掲載されたとする、上の記事とほぼ同文の文章を引用し、次のように続けておられる。
「オーストラリアは偏見にたいする免疫が出来ているとはいえない。しかし、この出来事で示されるように、人々は明らかな差別に対して声を上げている。我々は重要な教訓を同様な話から得ることが出来るだろう。ストレートとゲイが共に暮らし、明らかな不公平に直面するときには、やがて力強い変化がおこりうる。問題は、何がそれを起こさせるかだ」。
それに続けて、イエスと悪霊に取り憑かれた娘をもつカナン人の女に関する聖書の記述を引き、差別と偏見の克服について書いておられる。都市伝説ともジョークともつかないストーリーを材料に、これだけの格調高い提言をされる手腕というか、倫理観に脱帽。


