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月別アーカイブ: 2008年10月


病院へ行こう:番外編その2

この抗がん剤で治療していた五年間ほどの間、主治医の側にも色々あったらしい。この人はもともと、「患者よ、がんと闘うな」という著書で有名なK医師の盟友で、K医師が診ている患者の外科治療面をサポートしていた。妻がこの病院で治療を受けるようになったのも、K医師から紹介されたのが理由である。

K医師は日本のがん治療の現状をかなり鋭く批判していて、その意見には妥当だと思える点も多い。しかし、ある意味、K医師は徹底した原理主義なのである。それは抗がん剤の評価に最も典型的に現れる。

要は、K医師は抗がん剤治療がほとんど患者にメリットを与えず、単なるアリバイとして投与されていて、副作用をまき散らしているだけだという、それなりに正しい面もある批判を展開していた。運悪く再発したなら、無意味な抗がん剤治療でQOLを下げるのではなく、残された時間を有意義に使うことに専念すべきだというのだ。

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病院へ行こう:番外編その1

9月の終わり、職場に辿り着き、さてこれからまた仕事かと小さなため息が出たとき、娘から電話が入った。たった今、妻の容態が急変した、意識水準が低下し、心室頻拍を起こしていると。

看護婦さんに後を頼み、急いで妻が入院している病院に向かう。いよいよ来るものが来たかという思いと、大手を振って仕事を休める安堵感が混じりあい、なんだか雲の上をふわふわ歩いているような、妙な気分である。

あまり接続のよくない電車を乗り継ぎ、妻の病室に着いたのは連絡を受けて二時間近くたったころであったが、状態は変わっていなかった。呼びかけにも反応はなく、枕元におかれたモニターは振幅の深いサインカーブを呈していて、120から150あたりの心拍数を行き来していた。

「もう対光もないよ」、付き添っていた長女が言う。こちらも何か言ったほうがよかろうと、「リドカインは使っているのかな?」と見当はずれな質問をする。「使ったらそれっきりだろうから、何もしないよ」と、極めて理性的に答えられ、後は黙り込むしかない。

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病院へ行こう:入院処置編その2

ふと気付くと、枕もとに妻が付き添っていてくれていた。もう終わったのかと尋ねようとするが、うまく喋ることができない。だめだめ、まだ話すのは無理、気管挿管されているんだから、それに今はまだ処置中なんだし。

まだ処置中?声にはならないが、妻はそれに答える。難航しているみたい、標準処置では不整脈が止まらないんだって。すると、やはり説明にあった右心房内の焼灼を加えることになるのか。打つ手が残っているのは、まだラッキーと考えるべきか。

ところで、どうして君がここにいるのかな?たしか二週間前に、君の葬式をしたような気がするんだが。あなたの入院に重ならないよう、精一杯の配慮をしたつもりなんだけど、その辺に感謝が足らないような気がしてね、苦言ついでにちょっと様子を見に来たわけ。

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病院へ行こう:入院処置編その1

入院予約時間は午後二時だったので、外来エリアは閑散としていて、誰もいない瀟洒なロビーでしばらく待たされていると、やがて受付嬢が現れ、静やかに「お部屋に案内いたします」と告げ、先導してくれる。荷物までは持ってくれないところが、ホテルとは違う。

海に面した病室からはかすかに富士山の輪郭が望めて、勿体なくもやんごとなき御一家の御用邸を見下ろすこともできる。しばしの間、リッチな気分に浸った後、リッチさとは無縁の病衣に着替え、ID腕輪を付けられて術前の検査をいくつか受けていると、水平線に見事な夕日が沈む時刻となる。

明日の処置説明まで何もすることはないが、バーやレストランもなければネット接続環境もないので、波の音を聞きながら、ただただボンヤリと時間の過ぎるのをまつ。

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