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友人の友人の友人が幸せなら、私も幸せ

2008年12月7日 at 10:28 pm in 医学・科学一般 | 4 コメント »

以前よくネタ元にしていたBritish Medical Journalは、だいぶ前に有料化されてしまい、取り上げにくくなってしまったが、年末になるとやはり何か大ネタを振ってくるのではないかという期待があり、ついつい注目してしまう。

12月4日号に掲載された論文、“Dynamic spread of happiness in a large social network:longitudinal analysis over 20 years in the Framingham Heart Study”は、そんな期待に多少は応えてくれる一品。珍しくタダ、というのも有難い。

題名を直訳すると、「広い社会的ネットワークにおける幸福の力動的伝播について:フラミンガム心臓研究における20年間の長期的分析」ということになる。フラミンガム心臓研究というのは、畑違いの私でも知っている有名な大規模調査で、マサチューセッツ州近郊のフラミンガムという町で、1948年から現在に至るまで続けられているコホート研究である。

コレステロールが高いと心血管系異常の危険性が高くなるとか、タバコをやめると脳卒中や冠動脈疾患、肺がんのリスクが減る、なんてのは皆この研究から出てきた知見なのだが、「幸福」の処方箋まで求めようとする研究が付随していたとは知らなかった。論文の主著者はハーバードで医療政策と社会学を教える、ニコラス・クリスタキス教授である。教授たちによれば、この研究の目的は、まず幸福が人から人へと伝播するものかどうか、どのような経路で伝わるものなのか、ということを明らかにすることであるそうだ。

クリスタキス教授たちは、1983年から2003年の20年間、フラミンガム心臓研究の被験者グループ(正確には調査発足時グループの子供世代を対象にした第二次コホート)5124人を対象にして、全てのメンバー(彼らはエゴと呼ばれた*)の友人、家族、配偶者、隣人、仕事仲間との社会的つながりを調査した。エゴと社会的つながりを持つ人はアルターと呼ばれた*。狭い地域のこと、アルターはしばしばエゴでもあって重複しており、調査対象は12067人であった。

*なんでこんな呼び方をするのかよくわからないが、何か精神分析をからかおうとする意図があったのかもしれない。

その上で、研究者たちは各々の対象が「幸福」かどうかという調査を行う。利用されたのはThe Center for Epidemiological Studies depression scale(疫学研究センター抑うつスケール)、略称CES-Dと呼ばれる簡単な質問紙検査である。例えばここあたりでCGIになったものが利用できる。私はやってみたら0点、つまり何の憂いもないアッパラパーであると判定された。

研究者はそれをさらに簡略化し、20の質問から「私は将来に希望を持っている」、「私は幸福だ」、「私は人生を楽しんでいる」、そして「私は他の人と同じように元気にやっていると感じる」の4っを抽出して、全問に「はい」と答えた人を「もっとも幸福」であるとした。

はじめに掲げた図は、調査対象同士の関係性を図示したもの。丸が女性で四角が男性、その色が黄色だと幸福、青が不幸、緑は中間。個々を継ぐ黒線が友人と夫婦関係、赤線が家族関係である。ちょっと判りにくいが、不幸な人々は固まって現れる傾向があるように見えると思う。研究者たちは、社会的つながりの中で、不幸な人と接する人々は不幸に、幸福な人と接する人は幸福になる傾向があると結論する。

当然、直接的につながる人々が幸福であるほうが、自分も幸福になりやすいという傾向はあるものの、その差はそう大きくはなく、友人を例に取ると、友人の友人、友人の友人の友人までは、はっきりとした幸福化作用が働くという。これは社会的距離だけでなく、住居の距離、また時間的な間隔でも、結構離れていても同じことが言えるらしい。不思議なことに、仕事仲間では、こうした関係性がまったく認められなかったと言うことだ。

つまり、直接は名前も知らない友人の友人の友人が幸福なら、自分も幸福になりやすく、それは10数キロ離れたところに住んでいる人であっても、二年ほど前に幸福であることを知っているだけでも、統計的優位な「幸福化」作用が働くということだ。

こちらの図で「幸福化」作用を見ると、もっとも効果が強いのが「近くに住む親しい友人」で、次が「隣人」、その次が「近くに住む普通の友人」、その次に「近くに住む同朋」が来て、「一緒に暮らす配偶者」は5番目、というのが一番の笑いどころ。

幸せな友人たちと付き合い、見知らぬ幸せそうな人と道端ですれ違い、幸せな隣人に囲まれていれば、不機嫌でイラついた不幸せな嫁さんと暮らしていようと、幸せでいられるということのようだ。ちょっと距離を置いた他者のほうが、より感情的な影響性を与えられるというのは確かに感じることなので、その辺が社会的な側から示唆されていると言うことなのかも。

「幸せとは、自分が幸せだと思っている状態」という定義のところで、なんかいいように誤魔化されてしまったような気がするんだが、考えてみればそれしかありませんわな。もし、これが一般的な真実であるのなら、政治経済目標には根源的な組み替えが必要になってくるのではないだろうか。

とは言いつつ、やはりお金はもっと欲しいなぁ……。

4 Responses to “ 友人の友人の友人が幸せなら、私も幸せ ”

  1. # 1   Cru Says:
    12月 8th, 2008 at 11:46 PM

    んー、不幸な人は幸福な人と居るより不幸な人と居るほうが快適だったりして。
    相関関係は因果関係を必ずしも示さないというアレで。

  2. # 2   Dr. Marks Says:
    12月 9th, 2008 at 4:06 PM

    >なんでこんな呼び方をするのかよくわからないが、何か精神分析をからかおうとする意図があったのかもしれない。

    私がこの注の意味を取り違いているかもしれませんが、ラテン語の ego(自己、自我、エゴ)とalter ego(他の自己、自我、アルター)は、哲学では伝統的な identity の表現ですから、「からかい」は感じられません。なお、アルターは自己内の「他の自己」なのですが、自己とは違う「他人」の意味で使われることもあります。

    不思議なもので、家庭内で一人でも暗い顔がいると皆が沈鬱になるし、職場で明るい人がいると皆が活発になる。それが見知らぬところで伝播するのでしょうか。昔ある先輩から諌められたことがある。険悪になりかけていた私の友人に対し、お前のほうからは険悪な顔つきや物言いはするな、それが私の友人の心に反映してますます険悪になる、ということだった。結果として先輩の忠告どおりにできたかどうかは知らないが、以来なるほどと思って肝に銘じています。

    私もお金はもっと欲しい。自慢じゃありませんが、物欲はありありです。今週も州の宝くじを買いました。しかし、そんな今の状態(物欲状態)は、まだまだ幸せなほうかもしれません。お金など要らなくなるときは、極めて幸せであるというよりは、限界状況の不幸の只中にあるときのような気がします。

  3. # 3   webmaster Says:
    12月 10th, 2008 at 9:44 AM

    >ラテン語の ego(自己、自我、エゴ)とalter ego(他の自己、自我、アルター)は、哲学では伝統的な identity の表現

    耳学問の精神分析学用語としてのエゴとアルターエゴの使い方しかしらないもので、普通は分身の意味で使われるアルターの方に、ちょっと引っかかってしまいました。

  4. # 4   元院生 Says:
    12月 11th, 2008 at 6:36 AM

    タイトルを見た時に、任意の3人のうち一人が素直である確率が高い話かって誤解しました。
    本人がその素直な一人と仮定すると、友達も友達の友達も『他人の不幸に嫉妬するタイプ』であり、友達は、その友達が不幸の時に幸せになり、友達の友達は、更にその友達が幸せになると不幸になるところから、友達の友達でなく友達の友達の友達が幸せである事が友達の幸せの条件で、それが唯一素直な本人の幸せの条件(素直なのは3人のうちの誰でもいいんだけど)、ってな具合で、、、。
    その方が面白かったのになあ。

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