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悪臭は道徳的判断を厳格にする

2009年4月24日 at 10:34 pm in 医学・科学一般 | 3 コメント »

fart「マットは夜遅く猫と遊んでいました。猫が股間の上を歩くので、興奮してしまったマットは性器を猫の体に擦りつけ始めました。猫もゴロゴロと気持良さそうです。猫を相手にこんなことをするのをどう思われますか?」

「あなたは数百ドル入りの財布を拾いました。それにはアメックスゴールドカードと、持主の名前と住所がわかるIDカードも入っていました。お金はもらっておいて、財布とカードだけ持主に匿名で送付するとしたら、どう思われますか?」

プリマス大学心理学教室のシモーヌ・シュナル講師たちの研究チームは、具体的な嫌悪感が道徳的判断に及ぼす影響を調べるため、上のようなシナリオを用意し、被験者の学生たちに7段階の評価をつけるように求めた。評価1は「全く許しがたい」で、7なら「問題なし」である。

第一の実験では被験者は3グループに分けられ、きついオナラの臭いがする部屋、ちょっと臭う部屋、臭わない部屋で調査紙に向かわせられた。その結果、臭い部屋で調査されたグループは、無臭部屋グループに比べ、より厳しい道徳的判断を行う傾向を見せた。

匂い以外の要素を見るために、他にも三つの付加的な実験が行われている。ひとつはピザの空き箱がゴミ箱からあふれ、机はベタベタに汚れている部屋での調査と、清潔な部屋の比較、個人的な嫌悪体験を思い出してもらったグループと普通に調査したグループとの比較、もう一つは映画(どうも、トレインスポッティングらしい)の嫌悪感を覚えるようなシーンだけを取り出したビデオを見せたグループと、コントロールとの比較である。

最後の調査はかなり個人差が出たらしいが、他の二つでは、オナラ臭実験と同じように、嫌悪感を刺激されたグループは、より道徳的判断が厳しくなる傾向が見られた。倫理道徳的な判断という、個人的に明確な基準が確立されていると考えられているものが、その時の嫌悪感によって一定の方向に変化するというのがチームの結論である。

こういう研究結果を踏まえれば、当然その逆を検証したくなるのは世の常であるが、ほぼ同時期にシュナル講師が別チームを率いて行ったのが、「清潔さは道徳的判断を緩める」というもの。嫌悪感の反対だから、快適さとか満足を指標にするかと思えば、清潔さを持ってくるのが意外。満足というものでは、個人差が大き過ぎるのかもしれない。

この実験でも、上と同じようなシナリオがいくつか用意されていて、被験者はそれに9段階の評価をつけるように求められる。今回は、調査前に手を洗ったグループと、洗わなかったグループとの比較であるが、予想されるように、手洗いグループはコントロールと比べると、道徳的判断がより緩やかになる傾向が見られた。

付加実験として、調査前に”WASHED”とか”PURE”などの清潔と関連づけられる単語のスペル並び替えテストを行ったグループと、普通の単語のスペル並び替えを行ったコントロールとの比較もされているが、この場合も清潔連想組には道徳的厳格性が乏しくなる傾向が見られたとのこと。

元論文は二つとも有料なもので、仕方なく抜粋と解説を読んだだけだから、誤解があるかもしれないが、どうもこの実験には、ちゃんとした統計的検証が欠けているようである。オナラ実験、手洗い実験ともにコントロール群とのスコアの差はそう大きいものではなく、被検者もせいぜい50人未満らしいので、本当に著者たちの主張を受け入れてもいいものか、かなり疑問は残る。

もしホントだとしたら、裁判官が判決文を書くとき、まず斎戒沐浴して事に当たるなんてのを聞いたことがあるが、そうすれば多少の道徳的逸脱は「ま、いいか」になってしまうわけで、結構笑える話である。触法者には、汚らしい格好をしている法関係者が鬼門というわけですな。コロンボが汚いレインコートを着ているのはそのせいか(違う)。

ある種の精神疾患において、単に無精なだけとは言えないのに、清潔維持が困難になる状態が続くことがあり、そういうのと何か関連があるのかなぁ、というのが私らの立場からの印象。強迫性障害の手洗いなんかも、倫理道徳的自責を和らげるという側面があるのかもしれない。

なお、上のブッシュ元大統領とパウエル元国務長官の写真は、この論文内容とは全く無関係。オナラの臭いでパウエル氏の倫理道徳的判断が厳しくなり、政権から離れた訳ではありません。

なお、この研究は昨年12月に新聞で取り上げられたらしく、日本語ブログでもいくつか記事が書かれていた。しかしどうも、元記事がまとまらないものだったようで、あまり正しく内容が伝えられていないように思われ、屋上屋を架してみた次第。

3 Responses to “ 悪臭は道徳的判断を厳格にする ”

  1. # 1   元院生 Says:
    4月 25th, 2009 at 3:01 AM

    >裁判官が判決文を書くとき、まず斎戒沐浴して事に当たる
    それって、判決が決まった後にするか、その前の判決を決める前にするかでも違う事になりますよね。という事は判決前に裁判官の家の前をピカピカに清掃すればよいのかも。
    っていうか、これが正しければ、北朝鮮のロケットを騒ぐか騒がないかも、日本側の清潔度で決まるって事になりますなあ。

  2. # 2   watanabe Says:
    4月 25th, 2009 at 11:46 AM

    ”触法者には、汚らしい格好をしている法関係者が鬼門というわけですな。”
    これ全くその通りですわ。

    久しぶりに笑わせていただきました。ありがとうございます。

  3. # 3   みやひろ Says:
    4月 25th, 2009 at 7:25 PM

    単にストレスから来る八つ当たりではないかと

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