医薬販促景品の効果
「日経メディカル」オンライン版に「薬のロゴ、見れば見るほど使いたくなる?」という記事があった。面白い医学論文を記者が紹介する、という趣向の記事らしい。(登録者のみ閲覧可能記事のため、リンクせず)
取り上げられていたのは、米国医師会が出している内科学アーカイブの最新号に掲載されたこちらの論文である(抜粋のみ)。
製薬会社が薬の名前を書いた文房具などを医師に配るのは、洋の東西を問わず一般的であるが、果たしてそれは薬物処方に何らかの影響を与えるのか、という疑問に答えようと言うものである。
調査は二つの大学の医学部学生(3年生と4年生)352人を対象にして行われた。ご承知の方も多いだろうが、米国の医学部は大学院大学で、ストレートに進学してきても3年生は日本の卒後1年目と同じである。臨床教育でもかなりの医療処置を実際に行う(らしい。昔、TVドラマの『ER』見てたらそんな感じだった)。
それらの被検者学生を無作為に二群に分け、それぞれ「臨床的な意思決定について調べる」と説明された一連のPCを使った学習プログラムを受けさせる。その際、一方には高脂血症治療薬の商品名ロゴバナーが出るプログラムを、もう一方には出ないプログラムを見せる。
その後アンケートをとり、バナーに書かれていた薬物と、同効薬との好みの差が調査された。その結果、二つの大学の被検者全体をとれば、好みの差は認められなかっものの、一方の大学(マイアミ大学)ではロゴ介入群は有意にその薬を好む結果が得られた。
当然、もう一つの大学(ペンシルバニア大学)では、ちょうどその逆の結果が得られた。バナーに商品名が書かれた薬は好まれなかったのである。
これはマイアミ大生が観光客をナンパすることばっかり考えているアホばかりだから、と言うことでは(多分)なく、大学自体が採っているポリシーの違いからくるらしい。マイアミ大は米国では多数派の「程度を超えなければ、製薬企業から販促贈答品をもらうことは許される」という立場だが、ペンシルバニア大学はそのような接触を禁じているのだそうだ。
もっとも、差があったとはいえ、それは臨床行爲によりかかわる4年生での結果であって、3年生では関係なかったらしい。それに、ロゴバナーを見せるという介入の性質から、二重盲検になっていないのも多少の問題点。介入群と対照群を入れ替え、もう一回別のセッティングでロゴを見せた後、態度の変化があるのか考察すべきだろう。
結果として、「せっかくプレゼントしてくれるんだから、貰っときゃいいじゃん。別にそれで薬の使い方が変わるわけではなし」と思っている人間はやっぱり宣伝に影響され、プレゼントで宣伝なんかとんでもないと思っているカタイ人には逆効果だ、というのが著者の主張。粗品とはいえ何かのブツを貰うのと、単にロゴを見せられるのとは違うのではないか、というツッコミはなし。
私はもちろん「貰えるものは何でも貰う」という立場であるが、それで薬の使い方が変わることはない。何ぼボールペンやらティッシュを貰っても、その程度のインセンティブで、自分の職業的評価にかかわる行爲の根幹が変わるわけはない。逆に、自分の薬についての経験が単なる思い込みではないかと反省する、いいきっかけにもなるので、一律に禁止するような考え方はどうかと思う。
もしも、十分なインセンティブ、例えば今の年収と同額の終身年金+リビエラにクルーザーつき別荘なんて言われたら、そんな原則なんぞ、どこかに放り出してもいいが、世の中そんな甘い話はおまへん。
ところで、製薬会社の方にお願いなのだが、ボールペンを配っていただけるのはありがたいのだが、せめて書きやすい水性ゲル製品にしてもらえないだろうか。だいぶ前にも同じ事を書いたような気がするが、やはり今もなお、昔ながらの油性ボールペンが主流なもので。
そうして頂いたとしても、売り上げには多分無関係であろうと予想されるのが、ちょっと心苦しいのだけれど。



6月 6th, 2009 at 12:40 PM
会社名、薬品名を覚えてもらえれば、販促品の目的の半分以上は達成されていると思います。
フリスクとミンティアが同じ値段で売っていたら、普通(メディア露出の多い)フリスクを選んでしまうというかんじで。
薬効にさほど違いがなく大きな副作用を考慮に入れる必要がないとか…。ジェネリック薬の名前にまだなじみがない(≒直感的に実績が感じられない)とか…。
――以上、素人の想像でした。