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チチカット・フォーリーズ

2009年7月3日 at 10:35 pm in 本・映画・舞台・TV | 4 コメント »

titicut_follies_sフレデリック・ワイズマンというドキュメンタリーの鬼才がいるんだそうで、その人の第一作目がアメリカの大規模州立精神病院を描いた、「チチカット・フォーリーズ」(1967)とのこと。ちょっと出所の怪しいDVDを借り受け、視聴。

撮影の際には当然病院側の全面的協力を得ていたのだが、実際出来上がったのをみて驚いた関係者により訴えを起こされ、91年まで上映禁止だったという曰く付きの映画だという。

ドキュメンタリー映画のつくりからして、説明なし、インタビューなし、字幕なし。ただただカメラで現実を切り取ってきて、それを並び替えたものが映し出されるだけである。

印象は実に不快。人をただ絶望的な不信感に追いやるものである。でも、これが現実なんだよなぁと、人は何かを学び取った気分になって映画館を出るのだろう。

私は純粋に、アメリカが70年代に解体した大規模精神病院を見学する気分でこの映画を見た。この病院は一応精神障害のために犯罪を犯した人のための矯正院とされているが、私が本で読んで知っている範囲では、州立精神病院への入院契機になるのは何らかの触法行為であったと思う。

それが冤罪だろうが、人違いであろうが、いったん入院になると退院要件は治癒と言うことになるので、結局一生入院するのが通例なのだ。一般的に、看護する職員は警察官で、医療スタッフは最低限の数しかいない。

映画は何かの記念宴会のシーンから始まる。あんまり熱心とはいえない患者たちのコーラスと踊り、芸達者な職員による余興、善意にあふれたボランティアおばさん達の活動に、病院内の日常がカットバックされる。

自殺企図を理由に丸裸にされ、ベッドもマットもない保護室に隔離される荒廃患者。拒食のためにやせ細り、手荒な鼻腔注入を受けるが死んでしまう緊張病者。言語新作を連発した大演説を続ける妄想患者。

普通の刑務所から移され、環境の悪さと薬物療法への不満を大声で訴え続ける躁病患者。ウラジミールと呼ばれていた彼は、妄想型分裂病と診断されていたが、あれは誤診だろう。まあ、ここではあんまり診断に意味はない。どうせクロールプロマジンの一律投与だろうから。

英語がちょっとつたない医師による性犯罪患者の診察場面で、交互に視点が切り替わるショットがあったので、あれ、もしかしたら演出しているのか?と感じた。でも、医師による一方的な決め付けに、どう反応すべきかと当惑する様子が結構リアルだったので、粘り強いショットの積み重ねの結果なんだろうと納得することにした。

TVに流れる歌をバックに、それとは違う別の歌を上手に歌う患者と、逆立ちしたまま歌う別の患者、中庭での運動時間にトランペットを吹く患者(ちょっと仕込みの匂いが強かったが)のショットを見ていて、人はどんなところでも楽しみを見つけて、それなりに力強く生きて行けるものなんだなぁと思った。

その後の精神病院開放化・解体改革で、彼らの殆どは追い出されて地域で暮らすことになり、結局、病気を抱えたホームレスになっていくのだが、その時にも彼らはあの歌声を持ち続けていけたのだろうか。それが一番気になった。

なお、題名のチチカットは病院周辺の地名だというが、フォーリーズは明らかに「キチガイたち」という意味であろう。演芸会の舞台にそう書いてあるのだが、これは向こうの精神病院で行われるお祭りの定番である、価値の逆転が中途半端に引き継がれて、結局は本来の侮蔑語になっているのを皮肉をこめて引用しているのだと思う。

4 Responses to “ チチカット・フォーリーズ ”

  1. # 1   imomushi Says:
    7月 4th, 2009 at 7:01 AM

    64年製作の『ジークフェルト・フォーリーズ』という
    ミュージカルにあやかったんじゃないですね。
    http://loyd-theater.com/movie-collect-1/mgm/mgm.html#25

  2. # 2   webmaster Says:
    7月 4th, 2009 at 9:06 PM

    その映画に限らず、「フォーリーズ」というレビュー型式、取り留めなくいくつかの歌と踊りのシーンを継いでいくもの、があるのは承知しています。多分、演芸会を主催した人はそこから採ったのでしょうが、その善意を形成する前提となっているのか、彼らと患者との絶対的差異感覚であることが、図らずも現れているのではないかなと言うのが私の意見。ワイズマンは悪意あふれる視点から、それを強調したのだと思います。

  3. # 3   Cru Says:
    7月 5th, 2009 at 1:19 AM

    >結局、病気を抱えたホームレスになっていくのだが、その時にも彼らはあの歌声を持ち続けていけたのだろうか。それが一番気になった。

    んー。どうすればより良いのか、私などにはわかりません。
    しかしホームレスで放置されている人がいるのを許容する社会ってのはなんか間違ってる気がします。
    それを解決する事で税金が上がっても。
    全てのホームレスが(現状バイアス無しで)それを望んでいるという事なら喜んで前言撤回しますが…。

  4. # 4   ss Says:
    7月 6th, 2009 at 12:50 AM

    OTやってるのかと思いました。

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