ハラホロヒレハレ
昔、「シャボン玉ホリデー」のコントでクレージーキャッツが使っていた「ハラホロヒレハレ」というギャグの出所が、以前から気になっていた。これは、不条理なオチに対する脱力の表現というか、場をシメる約束事である。
なんていうと見た事が無い人には訳が判らんだろうが、例えば何がしかのやり取りの後、谷啓が主人公だったら「ガチョーン」で落とし、他のメンバーは「ハラホロヒレハレ」」と踊り狂って場が終わる、そんな展開になるのである。こう書いたらバカみたいだが、マンネリ化しつつもある種洗練ともいえるコント手法なのであった。
ネットで検索してみても、「失敗したときや、わけがわからないときの気の抜けた状態」、「クレイジーキャッツがシャボン玉ホリデーで使ったギャグ」というはてなキーワードの定義が出てくるぐらいである。浜松町には「ハラホロヒレハレ」と言う名前の居酒屋があるらしいが、店の案内サイトを見てもその名の由来は書いてない。
ところが先日、押入れに放り込みっぱなしになっているCDが詰まった段ボール箱を整理していて、たまたま手に取った、いつ買ったのか全く記憶にないアルバート・アイラーの”Love Cry”を聞いてみた。そうしたら、まさしくそこで「ハラホロヒレハレ」を発見してしまったのである。
このアルバムは1967年8月と翌年2月に録音されており、67年7月に肝不全で死んだジョン・コルトレーンに捧げられたと言われている。葬送曲として作られたとは言うものの、そこはアイラー、天然感覚でブリブリバリバリと吹きっ散らかしていて見事である。
そのアルバムの一曲目、アルバムと同じ名前の”Love Cry”で、アイラーが自ら「ハラホロヒレハレ」と歌っているのである。細かいことを言うと、ハラヒリハラホロヒレハラヒ~アとか、ちょっと変異もあるが、何度も繰り返している部分は日本語的聞き取りでは「ハラホロヒレハレ」そのものである。(音源サンプルはこちら)
ジャズマンであるクレージーキャッツのメンバーは、当然このアルバムを聴いていただろう。年代的にもちょうど会うように思う。私も昔この曲と出会っていただろうに、「ハラホロヒレハレ」だとは聞き取っていなかったのが不思議である。ジャズ喫茶みたいなものが流行っていた70年代初期には、アイラーは一種の政治的アジテーターとして神格化されていた面があり、それがクレージーキャッツとの結びつきをブロックしていたのかもしれない。
ジャズプレイヤーが政治的状況などと交錯するわけもなく、アイラーはただ吹きたいように吹いていただけなんだろうが、そのハチャメチャな吹きっぷりが、変革だの破壊だのと言うような親不孝なメッセージと混同され、いい加減な評論家達の原稿料稼ぎに利用されたのだと思う。
「ハラホロヒレハレ」だけで検索して見つからなかったウェブ記事も、「アイラー ハラホロヒレハレ」で調べるとちゃんと見つかった。長年の疑問が、ひとつ解決した、と言いたいのだが、考えてみればA ・アイラーはこの言葉をどこから引いてきたのだろうか。ゴスペルあたりに由来があるのかと、ちょっと調べてみたが今のところ不明である。大体、「ハラホロヒレハレ」をどう英文表記すりゃいいのかが、すでに判らんのだしね。




8月 11th, 2009 at 3:33 PM
何となく山下洋輔なんかも(というか中村誠一)関係ありそうですが、風雲ジャズ帳その他が見つからず…
8月 11th, 2009 at 10:37 PM
ファラオ サンダースの”アッパーエジプト云々”と関係あるみたいですよ。
8月 12th, 2009 at 9:41 AM
ちょっとこれは時代があわないのでは?「シャボン玉ホリデー」はたしか昭和36年放送開始で,アイラーがこのアルバムを吹き込んだ頃には,すでに盛大に「ハラホロヒレハレ」はやっていたはずですが。。。
8月 12th, 2009 at 1:00 PM
私の記憶では「ハラホロヒレハレ」は、シャボン玉ホリデーの中では比較的後期のギャグだったと思います。
当初は例えば「お呼びでない…、これまった失礼」で、ボヨーンというような効果音+全員乱舞のみ。
「ハラホロヒレハレ」が加わってきたのは60年代後期からではなかったですかねぇ。
もしかして、「シャボン玉ホリデー」を見たアイラーが、それを自分のアルバムに入れたのかも。アイラーには来日経験がないという問題はあるものの。
ファラオ・サンダースのコルトレーン以降のアルバムは聞いた事が無いので判断できません。何れにせよ、時期の問題はついて回りますね。ま、「関係ない」と言うのが一番可能性が高そう。
8月 12th, 2009 at 2:49 PM
harahorohirehareと書いたら必ず子音と母音の組み合わせになっていていかにも日本語っぽいので、ひらがな検索をかけました。
次のような記述を見付けました。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail.php?queId=2090774
8月 12th, 2009 at 7:53 PM
またまたあやふやな記憶で申し訳ないんだけれど、初めて「ハラホロヒレハラレ」を聞いたのは、小松政夫の台詞だったような気もするのです。小松政夫は植木等の付き人だったのが、後半から本格的にコメディアンとしてコントに出てくるようになったので、私のハラホロヒレハレ60年代後半説の傍証になるかも。
A.アイラーはどうなったんだ、というのは保留と言うことで。生前のアイラーに中上健二が会っていて、これを教えたと言う話だったら面白いんだけどね。