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斜めに寝るのはボケの兆候?

2010年1月11日 at 9:23 pm in 医学・科学一般 | 4 コメント »

昨年暮れのBMJクリスマス特集論文集の中から、これを紹介するのを忘れていた。原題は”Lying obliquely—a clinical sign of cognitive impairment: cross sectional observational study“(認知障害所見としての斜め寝:横断的観察研究)、ヴュルツブルク大学神経学講座の研究者によるものである。

研究の主眼は、自発的にベッドに横になったとき、ベッドの縦軸との角度が大きくずれて、斜めになって寝てしまう老人患者には、認知障害があるのではないかと言う事を確かめる事にある。

論文著者たちは神経疾患で入院中の60歳以上の患者110例について、寝ている時の姿勢をデジタルカメラで撮影し、体軸の角度を測定した。全く別の研究者によって彼らに三種類の認知能力テスト(MMSE・DemTect・時計描写テスト)が行われ、それぞについて寝ている時の角度との相関を見た。なお、角度測定とテストは同日に行われた。

その結果、三つのテストそれぞれについて体軸の角度との負の相関が統計的有意に示された(結果グラフ) 。寝ているときに斜めになっていればいるだけ、その人の認知能力は落ちている傾向があると言うことだ。著者たちは、この斜め徴候の存在は、認知障害スクリーニングテストよりも敏感な指標となりうると主張している。

この論文は他のクリスマス特集論文とは違って、それほどネタの要素はないと言えるのだが、どうにも解せない部分がある。というのは、こういう「斜め徴候」というのは昔からある言葉で、それも認知障害ではなく、パーキンソン病の症状として知られているのである。

パーキンソン病で斜め兆候と言うのは、普通は立位や座位の時に身体が傾くことをいい、その様子からPISA徴候と呼ばれることもある。筋強剛や固縮の問題なんだろうな、と言う程度のとらえられ方で、それが「寝ているときにも斜め徴候が見られる」と添え物的に扱われている場合が多い。

考えてみれば、座っている時や立っているときに斜めになってしまうのと、寝ているときに斜めになるのはかなり違う現象のはずである。少なくとも、寝ている時の斜め徴候は、筋緊張の障害の要素より、空間的な身体感覚認識障害の要素が強いように思う。

今まで、パーキンソン病の時には寝ていても斜めになる人がいると言っていたのが、実はパーキンソンに随伴する認知症状の要素を見ていたのかもしれない。パーキンソンと無関係であっても、そういう症状は出現するのかも、と言っては見たが、自分の経験からは、パーキンソンなしの斜め寝というのは、注目してこなかったからか、全く記憶にない。

自分の例では、酔っ払って寝た時なんか、90°~180°回転している事はよくあるので、あれは一過性の知的能力全損状態の表現なのかもしれない。パーキンソン病にはこの斜め寝だけでなく、あれだけ無動状態で寝ていながらあまり褥瘡(床ずれ)ができないとか(全く出来ないわけではないが、軽症で収まるように思う)、いわゆる風邪をまず引かないというような、不思議な現象が幾つかあるが、あまり納得のいく説明は聞いたことがない。

この研究は、パーキンソン病の人も多数入院しているであろう神経疾患病棟で行われたのに、それとの関連について全く触れていないと言うのが謎である。いままでの「斜め徴候」についての常識に挑戦する事になるので、そこらはぼやかしたのかなぁ。でも” oblique sign”なんて、堂々と書いてるしなぁ。

なお、パーキンソン病者が寝ている時に示す斜め徴候というものは本当に常識なのか、ちょっと自信がなくなったので検索すると、高名な神経内科医であるDr.マッシー田中のサイトで、ちゃんと写真が提示されていたので一安心。これが座位の斜め徴候。こちらが臥位の斜め徴候。池田先生、無断拝借ゴメン。

4 Responses to “ 斜めに寝るのはボケの兆候? ”

  1. # 1   スポック Says:
    1月 11th, 2010 at 11:13 PM

    > 自分の例では、酔っ払って寝た時なんか、
    > 90°~180°回転している事はよくあるので、
    > あれは一過性の知的能力全損状態の表現なのかもしれない。
    先生、それは単に寝相の良し悪しの問題でしょう。
    ウチのチビなぞ、特に夏など、平面回転だけでは飽き足らず、下半身を座卓に載せて寝ていたりしますが、特に痴呆があるようには思えません。(頭が良いとも言いかねますが。)

  2. # 2   元院生 Says:
    1月 12th, 2010 at 3:40 AM

    畳で寝るといくらでも回転出来るため、頭が冷えて足が温まる角度に収束する気がします。ベッドの場合は重力バランスで一番安定した状態を選ぶのかな。そういえば、子供の頃の方が明らかに回転が早いのですが、子供ってノーマルですよねえ。それはそうと、グラフの右側の2点を除くとかなり球状の分布をしているように思えるのです。

  3. # 3   小狸工房 Says:
    1月 12th, 2010 at 8:33 PM

    ごめんなさい、当サイトのボケ役としては、ここでどうしても「妖怪枕返し」と一言入れねばならないものでして。

    明けましておめでとうございます。
    今年もよろしくお願いいたします。

    今度こそ余計な発言は避けようと決めたはずだったのですが、辛抱できませんでした。

  4. # 4   問題児 Says:
    1月 14th, 2010 at 4:38 AM

    病院のベッドって概ね壁を頭にして寝てる気がしますが、採光の加減かベッドのヘタり具合か、逆向きに寝ると妙に寝やすかったりします。
    但し、看護士ちゃんの軽い悲鳴で起こされやすいですが。

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