「白菜」ダイエットによって昏睡を来した一例
88歳の中国人女性が家族に連れられ救急外来を受診した。彼女は3日前から嗜眠的となり、歩行や摂食が不可能になったということだった.
この女性はここ数ヶ月、糖尿病のコントロールのため、一日1~1.5kgの生の”Bok Choy”(白菜)を食べていた。なお、今まで甲状腺疾患の既往はない。
診察時、患者は嗜眠状態で、体温は36.1℃、脈拍は58/分、血圧は181/89mmHg、呼吸は22/分、血液酸素飽和度は92%であった。
眼窩周囲には浮腫があり、巨舌が認められたが、甲状腺は触知不能であった。下肢にもまた浮腫があり、皮膚乾燥、毛髪の荒れも目立った。
神経学的検査では右下肢にクローヌスと反射亢進が認められたが、これは以前の脳卒中発作によるものと思われた。他の所見は正常であった。
血液検査では著明な低Na血症(118mmol/L)と甲状腺刺激ホルモンの高値(74.4mIU/L;正常値0.4-4.8mIU)が認められ、FT3は低値のため測定不能であったが、甲状腺ペルオキシダーゼ抗体は正常値であった。
患者は低酸素・高二酸化炭素呼吸不全状態であったため気管内挿管され、重度の甲状腺機能不全による粘液水腫性昏睡と診断されてICUに収容された。そこでメチルプレドニゾロンとレボサイロキシン投与によって改善が得られ、ナーシングホームに移ることになった。(NEJM 362;20)
ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン5月20日号に寄せられた一例報告である。引用部分に続く解説によれば、Brassia rapa chinensis、チャイニーズ・ホワイト・キャベツ、”Bok Choy”と呼ばれる野菜の仲間には、グルコシノレートと呼ばれる物質が含まれていて、この代謝物には甲状腺機能の抑制効果があるのだという。
すでに1920年代には、キャベツだけで育てたウサギに甲状腺種が発生することが報告されている。精査の結果、Brassia類に共通して含まれる1,5-vinyl-2-thiooxazolidoneが、甲状腺組織のヨウ素取り込みを阻害するという詳しい発病機序も知られている。
今回報告された症例は、大量のBok Choyを生で食べたため、グルコシノレートの代謝を活性化する酵素が多量に摂取され、重篤な症状発現に至ったと考えられる。熱を加えた場合、この過程は大部分が抑制される。
それはいいとして、Bok Choyを辞書で引くと「白菜」と書いてあり、語感からしても白菜だろうとは思うのだが、Google画像検索するとチンゲンサイに近いもののように見える。WPで引いてもやはり「白菜」と書いてあり、写真もチンゲンサイもどき。いわゆるチンゲンサイはBaby bok choyと言うらしいので、厳密には違うものなんだろうけど。
そんなわけで、チンゲンサイであれ、白菜であれ、生でむさぼり食うのは止めたほうがいいというのが本日の教訓。


