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Archive for the ‘医学・科学一般’


ダメな研究者、ダメな研究テーマ

何故か毎年9月初め頃になると思いだす話である。すでに書いたことがあるかと検索したが見つからなかった。検索の仕方が悪かっただけかもしれないので、それ、すでに聞いたぞという方は指摘していただきたい。

それは私が医学部を卒業して一年目、研修医になったばかりの秋、ちょうど9月に入った頃だった。学生の夏休みが終わった頃で、ある人気教授が学生に向けたパーティーを開くというので、卒業したばかりの私も、オープン参加ですからと後輩に誘われて参加したのだった。

その教授は内分泌内科学の権威ということになっていて、積極的に臨床研究を進めており、研修医になったばかりの私もそこの教室からの依頼で数例の症例検討を依頼、というか下請けされていた。私自身の考えでも、指導医との相談を踏まえても、そこの依頼症例にはかなりの問題があり、その手のパーティに出て、直接トップと話をする機会を得るのも一つの手かもしれないと思ったのである。

その教授ははじめ極めて上機嫌であった。「私はねぇ、テーマを二つもっとるんだ。一つは癌。もうひとつはシゾフレニア(分裂病)だよ。これが人類の宿痾なんだ。あとはなんとかなる小物なんだ。これを生化学的な異常として突き止める。これが私の人生を掛けたテーマだね」。

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骨盤にミッキーマウス

ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンのホームページに連載されている”Image Challenge“の最新版。

さてこれは何か?と言うのだが、選択肢は5つ。①膀胱憩室。②造設新膀胱。③住血吸虫症。④移行上皮癌。⑤膀胱結石。

なんで③のような選択肢があるのかが判らず、もしかしたらそういう珍しい病気では、妙な画像が見られたりするのかな?と不安になるが、ここは素直に考えて①を選択。

答えを見れば正解でした。さすがに③を選んだ人は少数派だが、引っかけられる人はいるものです。この憩室はハッチ憩室とも呼ばれ、ほとんどが先天的で、男性に多い。多くは一側性で、無症候である、との解説。

じゃなんで尿路造影検査なんか受けたんだろと思うが、ここまでデカくて二つもあれば、残尿⇒尿路感染がひどくなっても不思議ではない。「膀胱がミッキーマウスになってるよ」と言われたら複雑な気持ちでしょうな。

エコ消費は人を邪悪にする

save earth今年の4月、”Psychological Science”誌に掲載された論文”Do Green Products Make Us Better People? “より。

”消費者の志向は価格と品質のみによって定められるものではなく、社会的、道徳的な価値も反映していることは、最近の「オーガニック」商品や「環境にやさしい」とされる製品の全地球的な成長を見ても明らかである。

我々は行動の決定と道徳的規制に関する研究を行ない、いわゆるエコ商品に触れることと、それを購入すことには、極めて大きな結果的行動の違いが生じることを発見した。エコ商品に接した人々はより利他的になるが、実際にそれを買った人は利己的になり、人を騙し盗むこともあえて行う傾向が見られた。” (抄録のさらなる抜粋)

この研究はトロント大学の心理学者、Nina Mazar とChen-Bo Zhongによるもので、全文がPDFで公開されている。東欧系ユダヤ人(多分)と中国人(孫さんですかね)という組み合わせが味わい深い。決してエコ万歳にはならず、必ず皮肉なオチを用意しているに違いないと予想はされるが、「反社会的行動の免罪符」という表現まで出てくるのはすごい。甘っちょろい日本人も彼らのシビアな社会観を知るべきかも。

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飛び降り防止柵は自殺を防いだか?

昔、自殺対策を理解するためにと称した、こんなクイズというか質問を目にしたことがある。曰く、米国中西部地方都市のとある大学で、キャンパスの一番高い建物の屋上から学生の飛び降り自殺が相次いだ。大学当局はその事態に対処するため、いくつかの対策をとったが、その中で一番効果が高かったのは次のどれかと言うのである。

①学生向けカウンセリングサービスを拡張した。②大学新聞に自殺報道を禁じた。③建物屋上を立入禁止にした。

正解は③である。効果は①<<②<③なのだという説明も付いていた。自殺する人は死を選ぶ手段そのものに魅せられていることがあり、それが模倣されることも多い。差し当たっての手段を奪われることで自殺そのものを思いとどまることは少なくない。それ故に、一見一番姑息的な対策である③が最も効果があるのだと。

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頭がデカイとボケにくい?

どこかで書いたことがあるが、私は変に頭がデカく、子供の頃から苦労した。幼稚園に入った時、通園用の帽子のサイズが合わず、仕方なく園長先生の帽子を借りたぐらいである。そんなわけで、入園式の記念写真では一人だけ色の違う帽子を被っているのである。

それに関するその後の苦労を書き出すとキリがないので止めるが、今だって”Fits All”なんて書いてあるキャップが合うことはまずない。たまに合うものを見つけると嬉しくなって買い込む癖があるので、ファッションには殆ど関心がないのに、こと帽子に関しては山ほど揃えているのである。

こういう身体的特徴をもつ人間を、昔関西では「ダイモンジャ」と揶揄したものだが(私もそう言われた)、今は死語になっているように思う。グーグル検索しても、小松左京の「日本アパッチ族」というSF小説の登場人物と、昔の思い出話に使われているのを見る程度である。

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良い誤診、悪い誤診

昔々、どこやらの内科教授が引退するときに、自分の誤診率を30%だったか、もうちょっと低かったか忘れたが、そのぐらいだと発表し、世の医療関係者はその低さに驚嘆した、なんて話をよく聞かされた。

今なら診断手段が格段に進歩しているので、身体疾患になった人が大病院でごちゃごちゃと検査を受ければ、まず誤診率は0%になるだろう。ちゃんと診断がつくことと、治療ができると言うこと、ましてやその病を持った人が苦しみから解放される、と言うことはまったく別の話ではあるものの。

精神科医療の領域では、昔はこの「誤診」はそれほど問題にならなかった。言うならば分裂病群とうつ病群、そして神経症群の3つ位しかないのである。アミダくじで決めたって、イチローの打率を越える結果がでる。

分裂病に関しては、あんまり言語化されないようなフィーリング診断が決め手で、言うならばこのフィーリングを感じ取れるかどうかが精神科医の専門性なのだった。若い頃はなんといい加減な話かと思ったものだが、今はこれに勝るものはないと考えている。

というのも、DSMのような診断基準の明示化を図る試みは、結局精神科医の無能化をもたらしただけだったからである。初診患者がドアを開け、診察椅子に座るまでの数秒で「あ、この人は分裂病だ」という独特の感覚を得られることが前提でないと、こうした言語的基準は役に立たない。

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「白菜」ダイエットによって昏睡を来した一例

88歳の中国人女性が家族に連れられ救急外来を受診した。彼女は3日前から嗜眠的となり、歩行や摂食が不可能になったということだった.

この女性はここ数ヶ月、糖尿病のコントロールのため、一日1~1.5kgの生の”Bok Choy”(白菜)を食べていた。なお、今まで甲状腺疾患の既往はない。

診察時、患者は嗜眠状態で、体温は36.1℃、脈拍は58/分、血圧は181/89mmHg、呼吸は22/分、血液酸素飽和度は92%であった。

眼窩周囲には浮腫があり、巨舌が認められたが、甲状腺は触知不能であった。下肢にもまた浮腫があり、皮膚乾燥、毛髪の荒れも目立った。

神経学的検査では右下肢にクローヌスと反射亢進が認められたが、これは以前の脳卒中発作によるものと思われた。他の所見は正常であった。

血液検査では著明な低Na血症(118mmol/L)と甲状腺刺激ホルモンの高値(74.4mIU/L;正常値0.4-4.8mIU)が認められ、FT3は低値のため測定不能であったが、甲状腺ペルオキシダーゼ抗体は正常値であった。

患者は低酸素・高二酸化炭素呼吸不全状態であったため気管内挿管され、重度の甲状腺機能不全による粘液水腫性昏睡と診断されてICUに収容された。そこでメチルプレドニゾロンとレボサイロキシン投与によって改善が得られ、ナーシングホームに移ることになった。(NEJM 362;20)

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