非国民症候群2
非国民症候群とまとめた例の二例目。初診は1982年、64歳の本人に、その妻、福祉事務所職員が同行してきた。受診は本人の意図と言うより、生活保護を継続するためのチェックといわれて、半ば無理やり福祉事務所職員に連れられてのものだった。
主訴は「周囲の騒音による不眠」。彼と妻は福祉事務所の援助で町外れに建てられた掘っ立て小屋のようなところで暮らしていたが(以前、町営住宅にいた時に近隣とのトラブルが絶えず、苦肉の策として町営地の一角にささやかなスラムを作ったそうだ)、その目と鼻の先に生コンプラントがあり、出入するミキサーカーがうるさいと、何度もそこの事務所や役所に抗議を繰り返していたのである。
役場はその騒音は法定内のものであると説得したが本人は納得せず、次第にその抗議は執拗さを増し、棍棒をもって殴り込むという暴力的なものとなったため職員に伴われての受診となった。それは明らかな違法行為なのだから、刑事事件にすればいいではないかと私は思ったのだが、長年の「世間」の論理がそれを避けたようである。
他者に自分を印象づけようとして、有名人とのつながりを強調すると言うのはよく行われる戦術の一つである。著名な人との密接な関係を主張することで、その人の本来の能力や魅力以上のものが相手に伝わるに違いないと人は期待するのだが、果たしてこれは効果的な戦術なのであろうか。


