今のところ日本では、この関連の噂が流れるところまでは行っていないものの一つに、この注射針による恐怖を煽るものがある。様々なところに麻薬中毒者たちが使った注射針が隠されていて、それによって麻薬中毒そのものになる、もしくはエイズなどが感染する、というものだ。注射針、もしくはそれが付いた注射器が隠される動機は、単に使用済みのものを放り出しただけだったり、中毒者同士の器具頒布目的であることもあれば、無差別に人々を傷害する目的であったりする。以下転送メールとして出現した順序にまとめたられたものを抄訳する。引用は主にここから。
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危険!公衆電話に注意!
麻薬中毒者たちが使用した注射針を、公衆電話の硬貨返却口に隠している、という情報がある。お金が戻っているか確認するために指を入れると、この針で突かれてしまい、肝炎やエイズ、その他の疾患に感染する可能性がある。注意してほしい、命はお釣りなどに釣り合うものではない。これは電話会社から直接得られた情報だ。決してデマではない。
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注意!
友人の友人が救急処置の講座で聞いた話です。公衆電話の硬貨返却口には充分注意が必要です。注射針を細工した”物”が最近仕掛けられていると言います。初めは公衆電話だけでしたが、いまは色々な自動販売機にも仕掛けられているそうです。この針を調べたところ、エイズウイルス陽性だったそうです。どうか注意して下さい。
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アジアの公衆電話には注意を!
シンガポール警察のタン・キム・レン氏によれば、最近多くの人々が公衆電話に仕掛けられた注射針でB型肝炎やエイズに感染しているらしい。硬貨返却口の内側に汚染された注射針が仕掛けられ、お釣りを取り出そうとすると刺される仕組みだ。硬貨自体も汚染されるのでシンガポール・テレコム社の多くの職員もこれで感染している。これはまだ一般には知らせられていないが、早晩報道される予定だ。公衆電話ではお釣りを取らないのが賢明だ。命はお釣りにはかえられない。
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映画館に注意を!
私の妹の友人が経験した話だ。もしあなたが映画館に行ったら、座席と座席の間には手を入れないことだ。少なくとも座る前に座席を何回か上げ下げして、よく見るようにした方が安全だ。殆どの人はそのまま座ってしまうが…。妹の友人の場合は、座席に座ると同時に何かに刺された。その人がよく調べると、座席に注射針が仕掛けられていて、それにはメモが添えられており、「ようこそ、現実へ!あなたはHIV陽性です!」と書かれていた。医師がその針を調べると、やはりHIV陽性であったという。これはハワイでの話だ。映画館では充分注意してほしい。
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私の息子に起こったこと。(引用はこちら)
私は3才の息子ケビンとテキサスのシュガーランドに住む主婦です。私は息子の3才の誕生日を祝うため、近くのマクドナルドに出かけました。食事が済んで、プレイルームで遊ばせていたところ、突然ケビンが泣き始めました。どうしたのかと聞いたら、お尻を指さして「ママ、ここが痛い」というのですが、どこも悪いところは見あたりません。家に帰ってお風呂に入れると、左のお尻に小さなみみず腫れの様な物があり、そこにしこりが触れました。翌日医師の診察を受けることにしましたが、すぐにケビンの容態は急変しました。嘔吐と震えがはじまり、すぐに救急センターに行きましたが、夜半、ケビンは死にました。お尻のしこりは、折れた注射針だったのです。解剖で死因は急性のヘロイン中毒だと判りました。警察がマクドナルドのプレイルーム(そこはプラスチックのボールが敷き詰めてある)を片づけて調べると、そこには腐った食べ物や汚れたおむつ、便や尿、ナイフやまだ中身が残っている麻薬の注射器がたくさん発見されました。
子供が遊ぶところが安全でないと言うようなことがあっていいはずはありません。ケビンの出来事は新聞で詳しく報じられました。是非これを多くの母親に転送して下さい。
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最後のマクドナルド物はマクドナルド社自体への中傷も意図されており、例のミミズバーガーなどとの混交もあるのだろう。このデマにはさすがマクドナルド社もあわて、「悪質な作り話だ」という声明を発表したらしい。もちろん、このような子供の死亡事件など実際には起こっておらず、どの様な新聞記事になったこともない。大体、針に残った量程度の麻薬で急性中毒死というのはまず無理な設定だ。#
最初の噂話が囁かれるようになったのは98年の中頃からだそうで、初めは映画館やナイトクラブなどで注射器で襲われ、「エイズの世界にようこそ」と書かれたカードが渡されるという内容だったようだ。エイズ・マリー、ハリー物のより攻撃的バージョンだと言えるが、その分叙情性(?)には欠ける。この系統のメールは文章も全体に稚拙で、映画館のシリーズなど、想像をたくましくしないと内容がよく分からない。
日本でもよくスーパーの商品に縫い針が仕込まれたりする陰湿系の嫌がらせ事件があるが、麻薬やHIV陽性血液がそこら中で調達が出来る環境だと、上のような事件にエスカレートさせるのは簡単なわけで、実際、99年にタイのバンコクと、アメリカのツーソンで注射器を使った襲撃事件が起こっているという。両方ともオリジナルパターンの噂話を真似したもので、針で刺した後、「エイズの世界にようこそ」と被害者に言う物だ。加害者はどちらも逮捕されているが、使った針が本当にHIV陽性血液で汚染されていたかどうかは定かにされていないようだ。ただ、仮に汚染注射針で刺されたとしても、HIVに関する限りは感染可能性はそう高くないと思われる。いずれにせよ、この上もない悪意と殺意にもとづく犯罪であるが、確実性がいまいちないので、そうめたらやたらに引き起こされる事ではなさそうなのが唯一の救いと言えよう。(2000/03/13)
#これはより以前からある「プレイルームのヘビ」の焼き直しのようだ。ファーストフード店のボールを敷き詰めたプレイルームで遊んでいた子供が、毒蛇にかまれて死ぬという物。ここで紹介されている話は細かな言葉の使い方まで、上と全く同じつくりだ。(3/15補足)
もういい加減食傷気味かとも思われる米国版「オナニー伝説」関連。パクリ元のsnopes.comに前から出ていたけれど、リンク構造が変わっていたので見逃していた。日本物と比べてジョーク要素が強いが、先の「デッド・ロブスター」のバリエーションなどを考えれば、もっとエグイものもあまた存在すると想像される。
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パーティで酔っぱらってしまった女子学生、ボーイフレンドと一緒に帰ってきて事に及ぶが、彼はもっと酔っぱらっていてどうにもならない。いらついた彼女は台所にいって冷蔵庫を物色し、冷凍のホットドッグ(たぶんどうもソーセージだけのようだ)を発見してそれで自分を慰める。しかしそれは彼女の体内で壊れてしまい、それを取り除くために病院にかつぎ込まれる。
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ここではこのバリエーションが細かく説明してある。
1.ソーセージが取り出されるのはもっぱら腟からであるが、直腸というものもある。
2.ホットドッグを自分で取り出そうとしてうまくいかなかったため、この女学生はそのまま放置する。何週間か後、局所の焼け付く感覚で病院を訪れ、ホットドッグの残骸が取り出されるが、それは腐敗していて、たくさんのウジ虫がわいていた。
3.女学生が一人だったという場合も多い。彼女は気が強くごう慢で、デートの最中に機嫌をそこねて帰ってしまう常習者とされる。
4.女学生はこのホットドッグを使用した後、冷蔵庫に戻しておく。彼女の兄弟が事情を知らずにこれを食べてしまう。
5.ホットドッグではなく、コーラのビンが使われる。取れなくなって病院に行くのは同じ。
これには「胃洗浄が必要になったチアリーダー」という類似バージョンもあるらしい。学校のフットボール(バスケット、野球だったり様々)チームが大事な試合で勝ったら、全員に特別なサービスをしてあげる、と約束したチアリーダーが約束実行の結果、胃洗浄が必要になって病院にかつぎ込まれる話だ。さすがに「食傷」なので詳しくは書かないが。
この噂話は向こうでは本にもなっているそうだ。だいたい70年台初頭頃から、中学生、高校生相当の年代の青少年たちによって主に受け継がれ、「自分たちの行っている学校の近くの学校での話」とされることが多かったという。私自身の経験とほぼ同じパターンだが、10年近いタイムラグが米国版にあると言うことは、原産か中継地が日本である可能性もある。
このサイトを主宰しているバーバラ・マイケルソンは、これが思春期の少年が女性を性的対象として取り込む際の不安を解消する機能を持っている、という観点からこの伝説を分析している。自分たちが日夜悶々と性に飢えて固執している以上に、女性は性的結合をもとめている、恥じ入ることなどないのだよ、ということだろう。女性の欲望の結果、最終的には病院にかつぎ込まれる、というどのバリエーションにもある結末は、主導権はあくまで男性側にあるべきだという男性優位主義が表現されているのだろう。それはロブスターバージョンや私が聞いた電球・真空管物においてはさらに顕著だ。ただ、ここでは「ホットドッグ」という米国人にとってもっとも日常性を代表すると言える物が選ばれているところに、少年期の性幻想が身も蓋もなく白日の下にさらされる幻滅があらわされているようにも思える。(2000/03/16)
こちらからの引用。全く同じ文章が別のサイトにも掲載されていた。
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オーストラリア、メルボルン発
81才の老女、アバ・エステルが拳銃を携えて、孫娘をレイプした二人のならず者を独力で追跡し、この連中の睾丸を撃ち飛ばした。「この老女は一週間かけてレイプ犯人たちの居場所をつきとめ、自分のやり方で復讐したんです」メルボルン警察の捜査官はそう誉め讃えている。「事をなし遂げると彼女は近くの警察署に出頭し、当直の机に銃をおいて静かにこう言いました。『この連中は二度と誰もレイプなどする事は出来ないでしょう』」
当局によると、レイプと窃盗の常習犯であるディビス・ファース(33)は、アバの拳銃によってペニスと両睾丸を撃ち飛ばされており、共犯のスタンレィ・トーマス(29)は両睾丸はうしなったものの、ペニスはかろうじてつながってるという。「医師によればトーマスの方もとても昔のような使い方は出来ないとのことです。でもまあ、生きていられただけでも幸せというものかもしれません」
この「ランボーお婆ちゃん」は、孫娘のデビーがスラム街近くを車で移動中、ナイフを振りかざして侵入してきた二人にカージャックされ、レイプされた直後から復讐のために行動に移った。「その夜、病院でデビーの顔をみたとき、私のやり方でならず者たちにカタを付けてやる、と決心したんです。私は警察のやわなやり方を信頼していませんでした。彼らが怖いとも思いませんでした。私はずっと銃を扱ってきていましたから」こう、この引退した図書館司書であるアバはいう。
警察の作った容疑者の似顔絵とデビーの話を元に、アバは7日間を費やして犯行現場付近を調べ、レイプ犯たちのいる安ホテルをつきとめた。「連中を見た瞬間、私は彼らに違いないと確信しましたが、念のため写真をとってデビーに確認しました。まさしくその通りでした。私はそのホテルに戻り、彼らの部屋をつきとめ、ドアをノックしました。大きい方のファースがドアを開けました。私は中に入り、彼らの股間をねらって撃ちました。この連中にはそこが一番のダメージだと思いましたのでね。そして警察署に向かったのです」
現在、司法当局はこの老女の扱いに困惑している。先ほどの捜査官は語る。「確かに彼女のやったことは犯罪ですが、81才の老婆を投獄するわけにもいきません。ましてや三百万人のメルボルン市民が、みな彼女を聖女に列しようと要求している現状ではね」
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snopes.comの元記事では、まずこの話がどのオーストラリアの新聞にも掲載されていないこと、いくらレイプ犯とはいえ、彼らに一方的に銃で重傷を負わせた人間を警察官が「誉め讃える」ことなどあり得ないと指摘されている。またオーストラリア英語とは思えない言い回しが多々見られる点などから、完全な作り話とされている。お話としての面白さだけを狙ったものと言うことなのだが、私にはそれ以外の政治的動機もかなり込められていると思われる。と言うのはこちらの方の掲示板に、こういうチェーンメールが紹介されていたからだ。
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オーストラリアの銃規制からの教訓
オーストラリアの銃所持者が64万丁以上の個人用銃器を破棄するようにせまられて約一年がすぎた。これに政府が支出した額は500万ドルをこえた。そして、その規制の結果が明らかになっている。
オーストラリア全域で殺人は3.2%増え、暴力事件は8.6%の増加、そして武装強盗は44%増えた。ビクトリア州では銃による殺人が300%も増加している。この25年間、銃を使った強盗は確実に減少していた。それがたった一年で増加に転じたのだ。特に高齢層を狙った押し込み強盗が増加している。オーストラリアの政治家たちは多額の税金をつかって実施された「社会から銃を取り除く」政策が何の効果をもたらさなかった事について沈黙を決め込んでいる。
ここで示したデータがニュースで報じられたり、政治家の口から出ることはないと保証する。今はただ、単純にこう主張すべきときだ。良き市民の持つ銃は命と財産を守る。銃規制はならず者を利するだけだ。カリフォルニア州民、アメリカ国民は取り返しが付かなくなる前に、心して主張してほしい。
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これはどうやら全米ライフル協会筋からでたものであることは間違いないようだ。シドニー在住の友人の話では、本日(3月22日)オーストラリア連邦政府がこのメールの内容を公式に否定した、という報道がなされたという。オーストラリアでは短銃の規制は結構厳しいが、ライフル系は比較的簡単にもてるため、これを使った大量殺人事件がよく起こるそうだ。一昨年、タスマニア島で銃乱射によって35人の犠牲が出るという事件があり、連邦政府は合法登録してある銃を希望者から買い取る、という政策を打ち出して実行していたのだと。この資金は政府ではなく、健康保険拠金から支出されたそうだ。それにもちろん、銃器規制の後、銃犯罪は統計的に明らかな減少を見せているという。
オーストラリアでも一時少しだけ話題になった極右政党「一国家党」が同じ様な主張、銃器規制の撤廃、をしているらしいが、その周辺の政治勢力が使う統計的レトリックのいい加減さには定評があるそうで、よっぽど直接的利害のあるような連中でないとまずまともには取り上げないらしい(と言って安心していると、この手の連中は調子に乗ってデタラメをやるので、銃を持ったレイプ犯並の監視が必要だが)。
そう言う連中の主張する「銃による正義」をつたなくも表現したのが先の「ランボーお婆ちゃん」の小話であり、スカッとした話にまとめられてはいるものの、そこには極めて政治的な意図(まあ、せいぜい銃器製造産業からの袖の下狙い程度なのだけれど)が込められていることを忘れてはならないだろう。
(2000/03/22)
2度ほど取り上げた「膣けいれん」もののスプラッタ版。少々刺激が強い所があるので、気の弱い人はご注意のほどを。引用はここ。
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アリゾナ大学のある医学生が金曜の夜のデートで、なんとかいい展開に持ち込めそうになった。相手の女性をその気にさせて、彼は人里離れた小山まで車を進めた。そこからはツーソンの街が望める。彼らは頂上近くまで歩いていき、夜景を楽しんだ。女性はロマンチックな夜景にすっかりその気になってしまう。二人は服を脱いで即席ベッドをこしらえ、愛を交わし始めた。丁度その頃、雷雲が小山の辺りにたちこめ始めた。周囲の木の枝が変に黒こげになっていることなど、夢中になった恋人たちには目に入らない。
彼らの即席ベッドの周辺は、特別に雷の活動が活発な所だったらしい。突然目がくらむような閃光をきらめかせて、稲妻が小山の頂上を襲った。そしてそこにはかの医学生のお尻があり、稲妻の電流はより電気抵抗の低いところへと流れていった。信じがたい事に、耐えがたい痛みを残しつつも、医学生は生き延びた。
稲妻の熱は彼らの皮膚と肉の一部を融合させてしまい、二人の恋人は一緒にくっつけられてしまった。女性の方は不運なことに稲妻の衝撃を生き延びられなかった。医学生は彼女のむなしく見開かれた目を見下ろし、その死を知った。反射的に彼は身を引き離そうとしたがそれは出来ず、激しい痛みが嘔吐を引き起こし、死んだ女性の顔面に吐物を浴びせてしまい、さらなる痛みで彼は気を失った。
その嘔吐物の匂いに誘われたのか、一匹の熊があらわれて、女性の顔面にかかっている吐物をなめ始めた。ちょうどその時医学生は意識を取り戻したが、熊を見るとただおとなしく横たわっているしかないと悟った。熊の方は恐ろしいことに、なめるだけでは満足できなくなり、女性の頭をかじり始めた。彼の耳元で女性の頭蓋骨がかじり取られる大きな音が聞こえた。熊は医学生の方も味見しようとのことか、歯で彼の後頭部をこすり始めた。
翌朝11時頃、ガールスカウトの一群がキャンプのために、恋人たちのデート場所に到着した。そこには医学生の車が止まっていた。やがて、スカウトたちは悲鳴を上げる。半分熊に食われた女性を身体にくっつけたまま、道の近くで倒れている医学生を見つけたからだ。夜間に何度か意識を回復してはそのたびに少しずつ這い出してきたらしい。
彼は病院に収容され、医師によって死体から引き離された。病院筋によると、彼のペニスは小さなカリフラワーみたいに縮み上がってしまっていたという。最初意識を取り戻したときの痛みの体験があまりに激烈だったため、彼の性的機能は著しく障害されており、回復するかどうかは疑わしいとのことだ。
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「膣けいれんで救急受診」や「くっついたカップル」で指摘したように、性行為の際にけいれんが原因になって二人が離れられなくなることは原理的に不可能なのだが、その不可能さを承知の上で、それでも二人がくっつくとしたらどういう状況がより説得力があるか、と理詰めに考えて作られたと思われる小話だ。
説得力は多少あるかもしれないが、実際に性行為中に落雷にあったからといって、二人の肉体が融合するようなことが起こり得るかどうかはきわめて疑わしい。というか現実には起こらないのはまず間違いない。ハンダかなんかで人体が出来ているなら別だが。リアリティはともかく、稲妻によって恋人の死体と離れられなくなって身動きできない男、そこに熊が出てきてさらに大騒ぎ、というくどさをあくまで積み重ねていくアメリカン・スラプスティックの王道をいく話をでっち上げた無名の作者には、ひとまず讃辞を送っておくべきだろう。最後は力つきたのか、オチが今ひとつ決まっていないのが残念だ。(2000/03/24)
男性版の「オナニー伝説」とその関連をまとめて取り上げてみる。。「愚行」の側面だけが前面に出ていて、あまり性幻想に関わるようなものではない。性的色彩の殆ど欠けているバージョンもある。引用するのも例のdrawinawards.comが中心になるのはしょうがないところ。まずはこれから。
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(2000年3月、オーストラリア発)
30台初めの男性が、ダウンタウンの骨董品修復工房で重症の鼠径部外傷を負っているのを発見され、病院に収容されたが死亡した。救急隊によってフリーマントル王立救急病院に収容されたとき、彼はまだ意識があったが、結局そこで死亡した。この男性、ブルース・コルトレーンは工房で苦痛の叫び声をあげているところを妻に発見されたものだ。
その日はとても暑い日で、殆ど40度に達しようとしていた。コルトレーンは冷えたコーラを飲んでいたが、暑さと退屈のために自慰を思いついたらしい。彼はこの時、作業用のクギ打ち機を使って包皮にピアスをしてみようと考えた。しかし彼は手を滑らせ、クギを亀頭に打ち込んでしまった。亀頭は真っ二つになってしまい、痛みと傷に我を失ったコルトレーンは手元のコーラを傷に注ぎ、よろけながら電話に向かっていった。しかしその痛みはすさまじく、彼は気を失って倒れ込んでしまった。彼は数時間後に意識を取り戻すが、ペニスと陰嚢がすべて失われているのに気づく。
警察の捜査で、血液とコーラの糖分に誘われたネズミが、気を失っている男の性器と付属物を食べてしまった事が判明した。意識を取り戻したコルトレーンは助けを求めて叫んだが、時は遅かった。
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ブルース・コルトレーンと言う名前からして嘘臭い。これで「至上の愛」とかの題が付いていたら大笑いなのだが。初めの一撃で気を失って、ネズミにかじられている間覚醒しなかったというのも無理がある。次の二つは自作オナニーマシンによる愚行。
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(1998年3月、テネシー発)
ノックスビルの10代の少年が、成人向け雑誌で「牛の心臓をバッテリーにつないで、有機的オナニーマシンを作る」という記事を読んだ。オリジナルを進化させたつもりだったのか、少年は家庭用100Vに牛の心臓をつないで事に及んだ。彼は感電死し、家も火事になった。
(1997年、イタリア発)
股間に何かの固まりを付着させた裸の男が死亡しているのが発見された。検死官はそれが家庭用電源につながれた牛の心臓であることをつきとめた。彼は電気で収縮するオナニーマシンを作って、それで感電死したらしい。
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次は医師による報告と言う形を取っているもの。これはこちらから。
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陰嚢損傷に自己修復を試みた一例
ある朝、私はERの看護婦から呼び出しを受けた。受診した患者が「男性の問題をみてくれる医師を呼んでほしい」と言うだけで、ほかに何も言ってくれないという。患者は40才ぐらいで、顔色は不良、熱があり状態は悪そうだ。彼は用心深くズボンを開き、青黒く腫れ上がった陰嚢の一部を見せた。私は看護婦についていなくていいと言い、患者にすべて見せてくれるように頼んだ。彼はズボンと下着を脱ぎ、血と膿で汚れたガーゼを取り除いて、グレープフルーツ大に腫れ上がった陰嚢を見せた。陰嚢の左側にはジグザグの裂傷があり、膿と血がにじみ出ていた。もつれた陰毛の間に、半分皮下に埋もれた針のようなものがいくつか見えたので、これは何かと尋ねた。患者によれば、数日前、勤めている工場で怪我をしたので、自分で壁板打ち付け用の工業用ホッチキスを使って傷を縫合したのだという。
彼を入院させ、破傷風抗毒素や抗生剤を投与し、陰嚢の消毒浴を行って翌朝手術となった。左陰嚢の汚染部切除と異物の検索と除去が行われ、8個のホッチキス針が回収された。左の睾丸は失われていた。精索と血管を結紮し、排膿ドレーンを留置して皮膚縫合を行い手術は終了した。回復は早く、一週間後に彼は退院した。その際彼が語ってくれたことによると、彼は独身で、昼休みにはいつも一人で工場に残り、誰もいないのを確かめては機械に向かってマスターベーションをする風習があったのだという。ある日、彼は絶頂に達したときについ集中を欠いて、機械を動かすベルトに陰嚢を巻き込まれてしまった。彼は陰嚢からベルトに引き込まれて投げ出されてしまい、気を失った。意識を取り戻した彼は、片方の睾丸が失われたのにも気づかぬまま、痛みに我を忘れていたのもあるのだろうが、ホッチキスで傷を縫合して仕事を続けたという。私としては、彼が悪習をその後やめたものと思いたい。
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これも殆ど同じ様な趣向。
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私はアイダホ病院の守衛として働いている。任務の一つに救急部スタッフをやっかいな患者から保護するというのがあるのだが、ある土曜日の夜のこと、私は救急部に呼び出された。階段を急いで駆け下る私の耳に、激しい叫び声が聞こえた。奇妙なことに、それには笑っているようでもあるのだ。角をまわって見たものは、壁に寄りかかって苦しげに泣き笑いをしている主任看護婦の姿だった。
そこには救急車が今しがた運び込んだ酔っぱらいがいて、彼は素っ裸で腰に血塗れのタオルを巻いていた。酔っぱらっていたのと、痛みとの両方で彼は何をしていたのか説明は出来なかった。彼の股間にはヤマアラシのトゲがびっしりと刺さっており、医師はそれを取り除くのに3時間かかったという。
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つぎのには全く性的な意味合いはない、多分。
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(2000年3月)この話を我が友、ジョンの睾丸の想い出に捧げる。それはちょっとした手違いだったのだ。2年前のことだが、当時私が働いていた職場のボスはとてもいやな野郎だった。しかしその日は違った。私は別の会社から勧誘され、そこを辞めることにしたのだ。今度はこちらがいやな野郎になってやるのだ。
私はボスがトイレに立つのを見計らって、強力接着剤をもってボスの部屋に侵入し、彼のコーヒーカップの縁にたっぷり接着剤をつけてやった。ボスが帰ってきて、すぐにコーヒーカップを使えばくっついてしまうだろう。なればなったでよし、ダメでもともとという気分だった。部屋を出ようとしたとき、ジョンが入ってきた。彼もボスを憎む気持ちにかけては私同様だ。隠れて見ていると、恐ろしいことに、ジョンはボスのコーヒーカップに小便をし始めた。これはジョンにとってきわめて不幸なことだった。帰ってきたボスがそれを目撃したばかりか、彼の睾丸がカップにくっついてしまったからだ。
私は傍観者のような顔をして救急車で運ばれるジョンを眺め、すぐに病院へと続いた。2時間ほど待たされて彼に面会できたとき、私は自分の行為を告白するつもり、少なくとも自分の意図だけは説明するつもりでいた。ジョンに具合はどうか、どんな治療を受けたのかと尋ねた。ジョンによれば、ボスが帰ってきたとき、彼は慌ててカップを手放そうとしたが、陰嚢がそれにくっついて引っぱり出されてしまった。恐怖のために彼は気を失った。気が付くと医師が、片方の睾丸と陰嚢の一部が失われたと説明してくれた。そして、ボスから送られて来た解雇を告げるファックスを見せられたとも。私はこう言うとき男性なら誰でも言いたくなることを言った。「大変だったね」そして病室を出ていった。
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前に「くっついたカップル」でも触れたように、強力接着剤で皮膚と何かがくっついても、慌てずにいればすぐに取れる。どんなときにも冷静さを欠いてはいけない。ましてやこうした策略をもくろむときなどは。(それ以前に、カップに小便をしていて何故陰嚢がくっつくのか、という疑問があるが)
最後は実話らしい。あまりの情けなさに涙が出そう。
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(1999,7月7日、ニュージーランド発)
見習いコンピュ−タ−技師が自分のペニスを火あぶりにして、500NZドルの賞金と同額のバー利用権を獲得した。
トーマスというこの技師は、自分のペニスを白い十字架にホッチキス止めにし、ライターオイルをかけて火をつけた。これはクライストチャーチの「マッケンジー・タバーン」で開催された「どこまでやるの?コンテスト」で披露されたものである。この何かと論議のある催しはニュージーランドビールがスポンサーになって行われ、最もいかれた行為に賞を与えるという趣向だった。
トーマスは特賞を受賞し、賞金で車の登録料、フィットネスクラブの会費、血統書付きのネコの登録料を払った。彼は傷と火傷を負ったペニスの治療のために無料診療の権利も獲得している。彼は「次の日ちょっと痛かった」と語っているが、2週目には完全に回復し、取り立てて後悔などしていない。彼は自分ではマゾではないと言っている。「オレみたいに自分で働きながら勉強している人間にゃ、金は大事だからね。とやかく言われる筋合いはないさ」彼はバーの利用権の方は昼食用に使うつもりだという。
トーマスの母親、バーバラはその催し物を見物していたのだが、息子の受賞に喜びを隠せない。「彼はいい大人なんだし、その勝利を祝福したいと思います。何であれ、何かを成し遂げられないような人間はロクなものじゃないわ」
これはなんぼ何でも作り話だと思う方、証拠写真をごらんあれ。もう少し露骨なのもあるが自主規制した。
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さて、自分で書いていても脱力するような話ばかりだが、それなりに皆「実話」という体裁を取っているのがおもしろい。とても本当とは思えぬ話ばかりなのだが。女性版の話がどことなく隠微なニュアンスを帯びている(そう思うのは自分が男性だからだろうが)のに、これらはあくまで空けぴろっげた馬鹿話の範疇だ。そこでは性と言うものを過剰なものとして捉える基本姿勢があり、それをもっとも象徴するものとして「愚かな自慰行為<性器を危機にさらす行為>」が取り上げられていると言えよう。それは崖っぷちで踊り続けるわれわれ人間文明そのもののアレゴリーなのだ。(2000/03/31)
子供のころ米国の家庭もの喜劇を見ていて、理解できなかった話の一つに、「歯医者さんで虫歯に詰め物をしてもらったら、そこからラジオ放送が聞こえ始めて大騒ぎ」というのがあった。私が覚えているだけでも3種類ぐらいのドラマでこのパターンがあったように思う。なんだか良く判らなかったが、全体として面白いのでまあいいか、というように受けとめ、そのうち忘れてしまっていた。
最近snopes.comにこんな記事があるのに気づいた。日本でTV放送がまだ黎明期のころ、大人気をはくしていた「アイ・ラブ・ルーシー」(これは様々に名前を変えて再放送されていったので、別の名前で覚えておられる方もいるだろう)の主人公、ルシール・ボールにおこった不思議な出来事である。事件の内容だけを要約する。
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この出来事は1942年におこった。当時彼女はレッド・スケルトンとの競演映画「デュバリエは貴婦人」をMGMで収録していたが、そのころは米国が第二次大戦に参戦間もないころで、カリフォルニアの西海岸住民は日本軍の襲来を現実のものとして恐れていた。ルーシーはこの頃、虫歯の治療を受けたばかりだった。ある日、撮影所から自宅へ帰ろうと車を運転しているとき、ルーシーはこういう体験をした。
ある夜、コールド・ウォーター渓谷に入ったとき、音楽が聞こえてきたの。ラジオのスイッチを切ってもそれは聞こえてきて、だんだん大きくなってくるじゃない。しかもそれは口の中から聞こえてくるの。メロディははっきりしているし、ドラムに合わせてズンタカいうの。わたし、おかしくなるかと思ったわ。なによこれ、と思ってるうちにおさまったの。家に帰ったけど、誰かに言っても頭がおかしいとしか思われないに決まってるんですぐ寝たわ。
翌日彼女はこの出来事をバスター・キートンに言ったところ、彼は笑いながら、「それは歯の詰め物からラジオの放送が入ってきたんだ。僕の友達もそういうことがあったと言ってたよ」と教えてくれた。その週はもう同じことはなかったが、次の週、別の道をとおって帰宅していた時、それは又はじまった。
突然、私の歯が飛び跳ね始めたの。今度は音楽じゃなかったの。それはモールス信号だったの。はじめはかすかにツートトツートト、そのうち消えちゃった。私、車をバックさせて一番大きく聞こえるところを確かめて、後は飛んで帰ったわ。次の日、MGMの警備主任にこれを伝えたの。そこからFBIに連絡して捜査した結果、日本軍スパイの無線局が見つかったってわけ。誰かの家に庭師として入りこんでたのね。
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snopes.comの編者はルーシーが実際に日本軍スパイ摘発と関わったかどうかは疑問としつつも、彼女が「歯の詰め物でラジオを聞いた」という体験をしたことは事実だろうとしている。「あれほど正直で、面白い小話を次から次にする人が、わざわざこんな作り話するはずもない」と言うのだが、それはどんなものか。ルーシーが体験したかどうかは別として、とにかく向こうでは、「歯の詰め物からラジオ放送が聞こえてくる」というのはかなり珍しいことながら、一部では体験されたことではあるようだ。
そしてこの「出来事」はむこうでsitcom(どうもSituation comedyの略らしい。妙な商売サイトかと思った)とよばれる家庭向け喜劇でよく使われたネタであると明記されていたので、私の記憶は正しかったようだ。
昔、子供のころ、マルコーニがはじめて無線実験につかった「コヒーラー」というものを自作したことがある。金属の粉を緩やかに詰めたものは、電磁波を受けると電気抵抗が変わるという性質を持っていて、それを使うとはなはだ簡単な装置で電波受信ができるのだ。昭和30年代に無線操縦式のバスの玩具が売り出され、私らの世代は大いにあこがれたものだった。近所に住んでいた金持ちの子供がこれをもっていて、しかもそいつがスネオの家に生まれたジャイアンみたいないやな野郎で、触らせてもくれなかった。泣き付くドラえもんがいるでなし、当時の「子供の科学」の記事を参考にそのメカの一部を自力で再現したというわけ。その自作コヒーラーは、ブザーの火花からでる電磁波を数十センチほど離れた所で確かに捉えてくれた。
歯に詰める金属というのは、あのコヒーラーのような構造をもっているのではないだろうか。なにか金属をモロモロにしたようなものを詰め込んであり、伝導体としては構造が不安定だろうから、電磁波を感知してもよいかもしれない。ましてや中波ラジオ全盛時代のアメリカでは、信じられないような大出力の放送局が普通だったはずで、「歯の詰め物でラジオ受信」が起こりえる可能性はあると思う。
ある種の妄想疾患の患者さんが、幻聴やテレパシー体験(自分の考えが抜き取られる、人に知られる)を説明するのに、耳の周辺や口の中に機械が埋め込まれたと訴えるのはよくみられる。私は「歯医者に治療に行ったら、歯の中に無線機を埋め込まれた」とそのものずばりの訴えをしていた患者さんを受け持ったこともある。妄想というのは別のところでも書いたように、オリジナリティが乏しく、結構流行やパクリがみられる。今の世の中で「俺は天皇だ」などという天真爛漫な妄想患者がいたら学会報告ものだが、皇太子が結婚したころに「本当は私が皇太子妃だ」と言い出す女性患者は結構いた。戦後、それまで「自分は天皇だ」と言っていた患者が「俺はマッカーサーだ」と「転向」してしまった話は大先輩たちからよく聞かされた。プロトタイプがないと、なかなか妄想的訴えは言語表現に結実しにくい面があるのだ。こういう妄想の大筋ではなく、その道具立てとなる部分はとりわけ時代の影響に敏感だ。いまではちょっと大時代になってしまっている「歯から電波」の訴えも、外国TVドラマにその発想の根っこを持っているのかもしれない。(2000/04/08)
先に現実に「歯から電波」体験がありえるようなことを言って、それは妄想によくあるなどというと、おまえは本当のことを言っただけの人を病気だと決め付けてきたのではないか、と言われるかもしれない。実際に「奇妙な体験」即妄想というような診断をする医者がいたら、それは無能以前の問題だ。その人の訴えと、その表現の仕方など総体が診断材料になるので、そこで間違うことはない(とおもう)。
今売られているルーシー・ショウのビデオの題名だけをみるかぎりでは、こういうエピソードはないようだ(下で紹介したサイトの主宰者によれば、ルシール・ボールの自伝にもこのエピソードは書かれていないとのことだ)。なにで見たのか忘れたが、向こうの喜劇特有の笑い声がかぶせられる中、口を押さえたおっさんが慌てふためいて転げまわるさまは、かなりハッキリ覚えてはいる。(ルシール・ボールについてはこのサイトが参考になった)
4月15日付けの"Darwin Award Newsletter"に次のような話が載っていた。これは70年代にインドネシアに伝道師としておもむいた人間の経験談と言うことになっている。
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米国の施設を接収して現地資本経営となった精油所に、英語教師としてその伝道師はまねかれた。設備の操作説明書きが全部英語なので、英語教育が必要となったからだ。ある日、伝道師が精油所に行くと、人々が皆うろたえて右往左往しており、彼のクラスにも生徒が誰も現れない。一人をつかまえて事情を聞くと、「安全管理主任がとってもビッグな見世物をした」という。
詳しく聞くと、その主任は20人ほどの労働者を前に、反応タンクの上にたち、危険物のまわりでしてはいけないことの講義をした。「目に見えず、臭いもしない物質があることをみせよう」と主任はいい、タンクの蓋をはずすと、ポケットから「ビック」のライターを取り出し、火をつけた。
それはきわめて効果的な講義だった。回収された安全管理主任の身体の破片は、最大でも切手大だった。教会に帰る道すがら、伝道師はこの不幸な事件を説明する彼の生徒の言葉を思い出していた。「タンクがドカン、そのあとシュニンのぐあいチョット悪かった」
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アジアへの蔑視がたっぷりこめられた話ではあるのだが、たぶんこの作者は意識的にはそんな気持ちは毛頭なく、「無知な連中に偉そうに教えながら、実はそいつが一番無知」という話の面白さだけを追求しているつもりなのだろう。"big"と"BIC"のしゃれなど結構考えたんだろうなと思う。あまり決まっているとはいえないが。差別意識がないつもりでも、差別観を前提にした思考枠組みしかない、というのが一番始末が悪いのは、某都知事の例をみるまでもないが、ここではそれは主題でない。
この「マヌケな安全講習」というのは結構パターンが多い。フォークリフト操作の安全講習で、拳銃の試射場での講習で、やってはいけない見本をみせるインストラクターというやつだ。このパターンなのか、実話なのか判然としないが、私は大学でこういう話を聞いたことがある。これとほとんど同じような話を、あるアングラ掲示板で見かけたことがあるので、全国の医学部に流通している可能性がある。
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30台男性の脳動脈瘤のクリッピング手術にのぞんだ脳外科医、意気揚揚と開頭にかかる。開頭して術野におよび、そこには丸々とふくらみ、いまにもはちきれそうな脳動脈瘤が露出している。「ここまでくればもうおわったも同然だね。ほれ見なさい、この動脈瘤を。こいつがはじければ一巻の終わり、というわけだね」彼は実習学生を前に、マスク越しにもわかる笑顔をみせた。
術中で高揚していたのか、その脳外科医はやる必要もないことをそこでしてしまった。「動脈瘤はとっても弱いんだ。たとえばこの程度の刺激で…」そう言いながら、その動脈瘤をとんとん、と指先でつついたのだ。するとたちまち鮮血がほとばしり、その脳外科医は顔面が血まみれとなった。弾け飛んだ動脈瘤にはいまさらどんな処置もできず、手術室はうろたえた術者の悲鳴にも似た叫びで満たされた。「ブルートだ!ブルートを持ってきてくれ!頼む、今すぐありったけ持ってきてくれ!」
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結局患者は術中死となり、それが働き盛りの人で、しかもたまたま無症候で見つかった動脈瘤のオペ、と言うことでこれは訴訟に持ち込まれ、大変な騒ぎになったという内容で伝承されていた。自分が実習のとき見たとか、先輩の話だとか細部では異なっており、大騒ぎだったと言う割には、具体的にその軽はずみな事をしたのは誰なのか、ということがあいまいだった。狭い社会なんだから、特定できないはずもないのに。
先に書いた掲示板の話の内容は、脳手術ではなく、新生児の心臓手術の話になっていた。動脈管開存の閉鎖術の際、膨らんだ動脈管をとんとんとつついて破裂させてしまうというものだ(そこまで圧が高いと手術適応がないような気がするが…)。うろたえた外科医が半泣きで輸血を請うところまで中身は同じだった。(こっちならまだリカバリの可能性があると思うけど)
人間というものはおかしなもので、破滅の具体的な表現を前にすると、ついそれに手を触れたくなってしまうようだ。 長期的経過を持つものとしては、例えばつまらん女に入れ揚げるオッサンとか、勝ち目がないのがわかりきったギャンブルにそまる人とか、命を賭して酒に浸る人とか、この類型は枚挙にいとまがない。
人間にとって日常生活にふと露出してくる破滅への誘惑は、抗すべくもない魅力を持っているのかもしれない。事実かどうかに関わらず、このパターンの話を常に身の回りにおいて自省するきっかけを作っておかないと、この不確かな日常はたちまちにしてその秩序を失うに違いない。(2000/04/17)
またDarwinAwardsからの引き写しになって申し訳ない。とてもひとごととは思えない内容だったので思わず引用してしまった。
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この話は米国南部のある発電所での安全講習セミナーで披露されたものだという。
そこは石炭火力発電所で、ジャックと言う石炭運搬ベルトコンベアの管理主任が主人公である。そのベルトコンベアは石炭貯蔵ホッパーから燃焼炉に石炭を運ぶもので、トレッドミルに似ていないこともない。ジャックの仕事はホッパーからコンベアに石炭が順調に流れていくように管理して、燃焼炉に異物が入り込むのを防ぐことだった。
ある日、ジャックの同僚が休息から帰ってみると、ジャックがいなくなっているのに気づいた。残っていたのは弁当箱と、奇妙なことに作業靴だけだった。誰も彼の失踪の理由がわからなかった。数日後、会社は原因究明を開始した。真実は明らかになったが、そのためには気の進まない同僚からかなり無理やりに話を聞き出す必要があった。
ジャックは医師から、コレステロール値と血圧がかなり危険なレベルまで上がっていることを指摘されていた。そして医師はジャックに「適度な運動」をする事を勧めていた。ジャックはひまな時間がとれないため、昼食の休み時間を運動に当てようと考えたらしい。彼は弁当を食べた後、運動靴にはきかえてベルトコンベアに飛び乗り、休み時間が終わるまで、そこでジョギングをしていたらしい。彼は体重オーバーをかなり気にしていて、その運動をするときには必ず人がみていないことを確認していたようだ。
ジャックの遺体は見つからなかった。彼が少数の同僚にこの新式運動法をもらしていなかったら、その悲劇的な死は誰にも知られることはなかったろう。彼は死んだが、その存在は無駄になることなく電気エネルギーに転換され、何軒かの家庭で有効利用された。そればかりではなく、化石燃料からより生態学的に有効な代替物へと転換する道への新たな展望を開いたともいえる。
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空のコンベアならごく普通のトレッドミルと同じようなものだが、石炭が運ばれているわけだから、一種のクロスカントリー走シミュレータになり、運動効率はきわめて良いものだったと思われる。もしかしたら製品化されるかもしれない。もちろん燃焼炉はつかないだろうが。
ずいぶん昔だが、かのタモリがTVで、ジョギングする人々に「おまえらそこまでして健康がほしいのか」とやたらに揶揄していた。「健康のためなら死んでもいい」とおもっている連中なのだと。この小話も、同じようなからかい、健康のために死を招いてしまう人の皮肉を強調する、と言う共通するものが感じられる。
私は一時、いわゆるフィットネス中毒に陥っていた事があるので、あのタモリの言い方にはなんら面白味すら感じられなかった。ゼンゼン違うんだよ、あなた。愛好家レベルにひとたび達した、ジョガーやフィットネス熱中者には、健康なんてものはまるきり眼中にないですなこれが。痩せるためとか血圧を下げるため、なんて理由をつけないと走れない人がジョギングを続けることなんかできないのだ。ただ走ること、ウエイトを持ち上げること、パフォーマンスが向上していくことだけが目的となって、それが快楽にならないと持続なんかできない。それを続けていき、更なる境地に達することが出来るなら、健康なんて破壊されたっていいと思ってるのが普通だ。
現に私の場合、10年以上続いたフイットネス三昧の結果、ひどい洞性徐脈(安静時脈拍が40台)と代償性の期外収縮という結構不愉快な不整脈が残ってしまった。それでも全然後悔していないし、凝りまくっていた当時の独得な「ハイ」な気分(それは不細工な体型も気にせずそこらを走り回り、ビリになろうがかまわずレースに出まくるような一種社会的人格の崩壊すら伴うのだが)は出来ればまた体験してみたいと今でも思っており、完全にトレーニングをしない日が何日も続くと、一種の禁断症状が出てくることもある。まあ軽く30分ほど有酸素運動をして、ちょっと筋トレでもすればいいのだが。
上の小話の主人公であるジャック氏は、運動しているところを人に見られたくないというレベルだったようだから、まだ依存症にまでは達していなかったのだろうが、それでも背後に迫る燃焼炉の火口にも気づかずジョグに熱中していた、と言う設定からすれば充分な境地に迫っていたとはいえるだろう。志半ばで不運な事故を招いてしまったとはいえ、世のフィットネス愛好家が理想とする死に方であるのは間違いない。
(2000/04/22)
今回は少々毛色の違う話(要はネタ切れ)を紹介。原典はここ。
タレントを売り出すとき、その才能なり属性をかなり無理に誇張して紹介する、というのは洋の東西を問わぬ手法であるようだ。マライヤ・キャリーは、その魅惑的にして幅広い音域で有名らしいが(私はさんまとの合成CMぐらいでしか彼女を知らないので、いまひとつ実感が無いのが残念)、その売り出しの際には「7オクターブの音域を持つ歌姫」というキャッチフレーズがつけられたらしい。そしてこの「事実」は常に彼女を紹介するメディアによって、おかしいとも思われずに引き継がれたということだ。
ふつう4オクターブの音程を持つ人はすばらしい歌い手で、5オクターブになれば神の領域らしい。ホイットニー・ヒューストンはこの能力を持っているとされる。7オクターブとなればピアノと同じ音域になる。マライヤはすばらしい歌い手だ(そうだ)が、もし彼女がバス歌手の最低音を出せるとしても、最高音は「犬にしか聞けない」超音波になってしまうそうな。実際は4から5オクターブと言うところだという。
ここで彼女の歌を.wavファイルにでも変換し、スペクトルアナライザーかなんかでその音域を実測したり、最低音をバス音域に設定した場合、最高音がホントに犬にしか聞けないような超音波領域になることを示したりしたら、私がかねて畏怖するところのwww.tomoya.comと同じ路線を歩むことになって、実に好ましいのだが、当然そんなややこしくめんどくさいことをする能力や忍耐力が私にあるはずも無く、パクリ伝聞のみで我慢していただく。多少のウンチクをひけらかすと、弦の場合、音の高さは長さが一定なら、その張力の平方根に比例して高くなるので、7倍の音の高さを得るためには49倍の張力を加えないといけない。声帯の場合も事情は同じはずだから、これは生物学的には不可能であると思える。ハーモニクスをうまく使えば出来るのかもしれないが。
これだけではもう一つなので、マライヤ・キャリーの「失言伝説」もついでに。96年のTVインタビューで彼女が言ったとされる発言。
「TVで飢えた気の毒な子供たちをみると、涙が止まらないわ。実際、あんなふうに痩せられたら素敵だとは思うわ、ハエだとか死体だとかはいやだけど」
これは某冗談ウエブサイトでパロディとして書かれたものが、雑誌に引用されたものだと言うことだ。結構まともなメディアもそのまま取りあげたらしいので、そのうち日本にも現れるかもしれない。やはりああいう風に彗星のごとくあらわれ、押しも押されもせぬ立場へとのし上がった人間には、色んなかたちで貶めようと言う思惑が働くのはいたし方がないのかも知れない。
ついでにもう一つ。
99年、ヨルダン国王薨去のさいにCNNからコメントを求められたマライヤいわく、「私は悲しみに沈んでいます。ジョーダンはすばらしい友人でした。彼ほど素晴らしいバスケットボール選手はもうあらわれないでしょう」。
ヨルダン国王"The King of Jordan"をマイケル・ジョーダン(Jordanだわな、たしかに)と勘違いしたと言う話。
さらについでに別の有名人で二つほど。
ブッシュ大統領時代に副大統領だったダン・クェール氏は、それまで地元以外ではまったく無名の上院議員だった。彼は結構論客だったのだが、あがり性だったためか、かなりのお間抜け失言を連発し、彼のマヌケぶりをからかうジョークがたくさん作られた。そのうちの一つがこれ。
「私はこのたびラテン・アメリカを外遊する機会を得ました。その際一つ残念だったのは、学校時代にラテン語をあまりちゃんと勉強していなかったため、人々と直接話しあう機会がもてなかったことです。」
えーっと、まさか解説の必要はないですよね?
今度はかのモニカ・ルインスキー嬢。
彼女はTVでみるかぎりかなりの肥満傾向にある人であるのは間違いない。そこに目をつけられたのか、ある痩身法プログラム販売会社の看板娘にスカウトされた。TVインタビューでその宣伝として言ったとされる言葉。
「私がこの間の出来事で学んだことは、身体に悪いものを口に入れたらダメだ、ってことね」
結局エロネタに落ち着いたところで今回は打ち止め。念のため繰り返すが、以上の有名人発言はすべてでっち上げなので、注意のほどを。(2000/04/27)
(戻る)
母の日も近いので、こういうのはいかがだろうか。ヴルンヴァンの著書にも紹介されているし、ネット上でもさまざまなヴァリエーションが読める。
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ある若者がスーパーマーケットで買い物中、年配の女性が彼をじっと見つめているのに気づく。彼は気味悪いので別の場所に移動するのだが、その女性は彼についてきて、意を決した様子で話しかけてくる。
「じっと見つめていたりしてすいません。あなたがあんまり私の息子にそっくりだったもので…」と彼女は言う。「息子は2週間前に事故で死んだんです…」涙ぐみながら彼女は続ける。「あの子が帰ってきてくれたのかと思ってしまったんです…」
気の毒に思った若者は、話し相手になりながらレジのところまで同行する。女性は列に並びながら若者にいう。「私が帰るとき、『じゃ、お母さん、後でね』と言ってもらえませんか。あの子が言ってくれていたみたいに…」若者はことわる口実も思いつかず、依頼を受け入れる。
レジで大きな包みを受け取って、出口へ向かおうとする老女に「じゃ、お母さん、後でね」と若者は手を振って呼びかける。
さて、続いてレジで少量の日用品を清算した若者、「合計で110ドルです」と言われてびっくり。「間違いでしょう、歯磨き粉と歯ブラシだけですよ」と抗議する。
レジ係いわく、「あなたのお母さんが、息子がまとめて清算するっておっしゃってましたよ」
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なかなか気のきいた小話だ。息子は戦死していたり、交通事故で死んでいたりする。娘である場合もある。まだ死なずに、余命幾ばくもない死の床にいることもある。場所もスーパーであったり、高級レストランであったりさまざまだが、老女がカモとなる人間に「お母さん」と呼ばせ、勘定を巧みに押し付けるのは共通している。同情に基づく何がしかの善行(のつもり)が、うまく裏をかかれるオチがきまっている。しかし話の上のオチはついても、現実的にはこの先、老女側には不利な展開しか待っておらず(若者が表に飛び出して取り押さえればおしまいのはず)、こういう詐欺が実際に成功する可能性はきわめてうすい。
それでもこれがさまざまな変異を見せつつ広がっているということは、人はお話としてのまとまりだけで「現実」のすべてを捉えた気分になってしまうということの証左かもしれない。ハッピーエンドに終わる物語の後日談などに、誰も興味をもたないのと同じなのだろう。
これの兵隊ヴァージョンもあるようだ。レストランで食事している上級将校のところに兵隊がうやうやしく現れる。「大佐殿、自分は女友達とここで食事をしていたのでありますが、彼女にちょっといいところを見せたいのです。申し訳ありませんが、大佐殿と知り合いみたいによそおいたいので、我々が出て行くとき、手を振っていただけませんか」。気のいい将校はこの無邪気な申し出を快諾する。彼らがレジのところで手を振り、将校が振りかえす。実は兵隊と女性、二人の勘定は将校に付けられている、というお話。
さてこれの病院ヴァージョンは、と調べたが残念なことに見つからなかった。少々内容がずれるが、「母と呼んで」という所では共通している話はこういうところ。
ある高齢婦人担当の研修医、病室に回診におとずれる。「おばあちゃん、具合はいかがですか?」かなり痴呆が進んでいるそのご婦人、返事もない。一通りの診察を済ませて他の病室に移ろうとしたとき、先ほど傍らにいた、家族とおぼしき初老婦人が声をかけてきた。
「先生、申し訳ありませんがお願いがあります。母はあんなふうに殆どボケてしまってますが、それでもいつ見舞いにきても『息子に会いたい』と繰り返しているんです。私の兄は義雄といいますが、若いころ家出していて、もう40年以上も行方不明でして…。おそらく生きてはいないと思うのですが…。」
それでお願いとは何なのかと研修医が問うと、「母はもう永くないのは承知しておりますし、一度でいいから息子に再会できたと思わせてあげたいのです。実は先生は若いころの兄にそっくりなんです。母はあんなにボケておりますし、先生が『お母さん』と呼びかければ、きっと昔のままの息子が帰ってきたと思うに違いありません。大変ぶしつけなお願いで申し訳ありません。」
多少の心づけをポケットにねじ込まれた手前もあり、気乗りせぬまま研修医は白衣を脱いでもう一度病室にもどり、思い切って呼びかけた。
「お母さん、ボクですよ。ヨシオです。具合はいかがですか?」すると老婆は目を見開き、研修医の顔を一瞥すると、はき捨てるように言った。
「あんた、さっきは私をおばあちゃんなんて呼んで、孫のふりしてたじゃないか。今度は息子だっていうのかい。一体どんな魂胆があるんだい?」
老齢患者を安易に「おばあちゃん、おじいちゃん」呼ばわりするのは考え物、というまじめな医療従事者教訓話となったところで今回は幕。(2000/05/10)
まず初めに2枚の写真を見ていただきたい。最初の写真はライフ誌で99年度のピクチュアー・オブ・イヤーに選ばれたとされるものだ。何だかよく判らないと思われるので解説すると、まん中が子宮で、そこに開けられた切開から胎児が腕を伸ばして外科医の手を握ろうとしているかに見えるというものだ。そして二枚目の写真は保育器の中にいる二人の未熟児で、片方が腕を伸ばしてもう一方の未熟児の肩を抱き、元気付けているかにみえる。
最初の写真は明らかに演出されたもので、外科医が切開口から胎児の腕を出してポーズをとらせたものであるのは間違いない。サイトの解説を読めば、医師が「子宮内手術」をアピールする目的でこの構図をカメラマンに取らせたこともはっきりしている。なにせその一部始終はTVで放映されていたらしく、論議の余地は無いのだが、これに特別の意味を付けたがる人というのが存在し、伝説に仕立てようとしているらしい。
この写真は二分脊椎といわれる脊椎の先天異常をもつ24週の胎児に対して、子宮内手術を行なおうとしている際の記録である。二分脊椎は脊椎管を構成するべき脊椎骨の後半部がうまく形成されず、そこから脊髄の一部が飛び出してしまって、程度によってはかなり重度の神経障害をきたす可能性がある先天異常だ。ただし、なぜわざわざ胎児期に手術しなければならないのかはまったく不明だ。出産時に飛び出した脊髄が損傷されることでも危惧しているのだろうか。そこまで異常が激しければ別の障害もある可能性が高いし、こうしたリスクの高い方法を取る理由は判らない。門外漢には計り知れぬ理由があるのだろうか。私には医者のスタンドプレーだとしか思えない。
それは別として、この写真はいわゆる「反堕胎」勢力によって一種のキャンペーンに利用され、いまもされつつある。「24週の胎児といえども、生きる意思をもっている。この写真が示すように、その命を救おうとする人に握手を求めているのだ」というものだ。彼らのパンフレットにこの写真が飾られ、デモのプラカードにつかわれ、チェーンメールとしてメッセージをくっつけられ今も循環している。先に書いたようにこれは医師が胎児の手を取り出してポーズを取らせたもので、胎児が自ら手を伸ばして握手を求めたものではないのだ。大体24週というともう中絶の時期ではない。早産とされる時期なので、「胎児にも人権云々」の主張に使われるのもおかしい。
しかし、新聞記事を読まなかった人や、このシーンのTV中継を見ていなかった人で、ある種の思考バイアスが成立している人には、この演出された写真が語る「物語」は反堕胎グループの主張どおりに受け取られるらしい。そして「胎児が握手を求めた」伝説は一人歩きしていく。
2枚目の写真はマサチューセッツ記念病院の新生児救急センターのサイトに掲げられている。二人の未熟児は双生児で、キリエとベリエルという名だそうだ。二人は生まれたとき900gほどしか体重が無かった。特にベリエルのほうは状態が悪く、呼吸困難が続いていた。状態を改善させるためにさまざまな努力がなされたが奏効しなかった。主任看護婦は、二人の未熟児を同じ保育器に移してみた。二人はすぐに寄り添い、ベリエルの呼吸困難は目に見えて改善した。皮膚に赤味が戻り、順調な生育を示し始めた。やがて二人は両親のもとに戻ることが出来て、その後の経過も良好だという。今はそろって学校に行く準備をしているとのことだ。写真は同じ保育器に入った直後、キリエがベリエルを庇護するかのように抱きかかえた所を撮ったものだという。
この病院のサイトでは、そこの治療方針、患児を切り離して見るのではなく、家族全体で疾患とたたかうことを援助する、というような方針の象徴的な表現としてこの写真を使っている。未熟双生児を同じ保育器で治療するというのも、家族的なふれあいを重視するということの一つの方策として試みられたことだ。保育器が有効利用できる利点も大きいだろうが。
ところが、先の写真と同じく、これも反堕胎派が自分らの主張を正当化する「物語」に利用するのですね。「奇跡の抱擁」などと題うって、同朋を思いやり癒そうとする意志は未熟児にもあるとかいうようなピンボケ主張がされる。そして、そのピンボケが伝説として一人歩きすることになるのも先と同様だ。
本能レベルで同朋が互いに助け合うようなプログラムがあるのはたぶん事実だろうが、それをもってえらく非寛容に堕胎を絶対悪とする政治的主張に強引に結びつけるような態度は、自由な人間理性への冒涜であると私は思う。どのような生命にもそれを全うする権利があると思うが、殆どの生命的存在は他種の生命を直接奪ったり、生存競争で勝ち残ることによって生き延びているのもまた事実なのだ。人間においては言うまでも無い。今現に生きている人々の生存と権利を守るためには、まだ世に出ぬ生命の萌芽を葬らなければならないことだって、やむを得ぬ場合もあると思う。その決断の主体は当事者であるべきで、道徳めかした押し付けや、もっともらしくも粗雑な論理で示唆されるべきものではないだろう。
そうしたことへの個別的な意見は色々あっていいと思うが、今回示した2枚の写真から判ることは、人は「物語」というものにいかに簡単にからめとられてしまうか、ということだと思う。写真で示されるような「絶対的事実」と見られるようなことでも、そこにはさまざまな事実の層が重なり合っているのだが(例えば私にはあれが『ユーモア写真』の範疇であるとみえる)、我々の限りある観察力や理解力は、やもすれば常に安易なストーリーを選ぼうとしてしまう。それが人に非寛容を強いる意図的なストーリーである、と言うのは気づかれない場合が多いのだ。
(2000/05/15)
このネタはいつものパクリ元の掲示板での話題とsnopes.comに最近追加された記事を元にしたもので、初めからライフ誌と上記病院のサイトであの写真を見つけたわけではない。掲示板の議論を追っていると、反堕胎派の押しつけがましく画一的な生命賛歌に殆どの人は辟易している様子なのだが、日本での報道のされかたは少し違うのはどういうわけだろうか。シニカル・リベラリストとでも言うべき都市伝説愛好者の側のバイアスが示されているだけか。
J.H.ブルンヴァン5部作のひとつ「くそっ!なんてこった」に紹介されている話で「アイスクリーム・コーン騒ぎ」と言うのがある。そこで紹介されているヴァリエーションはいくつかあるが、おおむねこういう話だ。
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アイスクリームパーラーに入った主婦、映画スターが店にいるのを発見する。ミーハーと思われないように出来る限り冷静にその芸能人を無視した態度でアイスクリーム・コーンを買い、店を出る。店の外で、アイスクリームを持っていないことに気づき、あわてて戻って店員にたずねるが「先ほどお買い上げになられましたが?」といわれるばかり。そこへかのスターが「奥さん、さっきお釣りと一緒にハンドバックに入れたでしょ」と。あせって開いたハンドバックのなかではアイスクリームが溶けてグチャグチャ、店は哄笑につつまれる。
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映画スターはロバート・レッドフォードであったり、ポール・ニューマンであったり、ジャック・ニコルソンであったりする。場所もあちこちの話として流布している。この噂話があちこちで立つたびにマスコミが当の芸能人たちに取材するのだが、当然確認されたことはない。この話は「アイスクリーム・コーン」と「ハンドバッグ」を象徴ととらえ、フロイト的に解釈する向きもあるようだが、そこまでうがってみる必要も無いと思われる。主人公が男性の場合もあり、わざわざそう考える理由もない。
芸能人相手に抑制された態度を無理に保とうとする人が、微笑ましい失敗をして内心の動揺が露呈されることの面白さ、というのは芸能人プライバシー暴きにマスコミ民間一体となる日本では成立しにくいユーモア譚であろう。大衆社会というのは西欧起源と言えようが、ミーハー大衆社会というのはこの国において完全に花開いた、ということかもしれない。
しかし、職業上一応抑制された態度を保つことが建前になっている医療業界では、これに類した話は時折きくことがある。いまいちひねりは無いのだが。
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某古都の撮影所近くにある病院でバイトしていた医師の経験談。
撮影中の俳優がセットから転落して外傷を負ったと受診してきた。見れば、「遠山の金さん」の衣装をつけたままの某俳優。屋根の上での立まわり中に足を滑らせたのだという。背部に縫合が必要な外傷はあるが、骨折などは無いようだ。その医師は出来る限り冷静に処置をすませ、化膿止めの処方もして診察を終えた。しかし俳優は何か言いたそうな様子だ。「お礼にサインでも、と言いたいのかな。ちょっとクールに対応しすぎたかな」と考えていると向こうが口を開く。
「先生、入れ墨のメイクの上から縫って包帯してるあるみたいですけど、これでいいんですか?」
これにはもう一つオチがある。何とかごまかして俳優をかえした後、薬局から電話がかかってくる。
「あの、処方箋の患者名『遠山金四郎』って書いてあるんですけど…」
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しかしこの業界人と言えどもミーハーがいないわけはなく、と言うか私の周辺には私を含めてミーハーしかいないが、こういう奥ゆかしい態度を取る人はいまや少ないかもしれない。有名人がらみの話ではこんな例もある。抑制なしのセコさ丸出しだ。
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某大女優Oがまだ若かりしころ、全身がしびれて麻痺する奇病にかかった。いわゆるギランバレー症候群というやつである。殆ど一過性で終わるのだが、麻痺がある間の呼吸管理や合併症予防はなかなか手がかかる。Oは某超有名大学病院に入院し、気管切開され人工呼吸器管理をうけていた。人気が絶大だった彼女の病状を知ろうと、マスコミは大学構内に入り込み、情報を取ろうと虎視眈々。大学病院と彼女の事務所は、ガードマンを幾重にもおいて彼女のいる病棟を厳戒態勢に置いていた。
彼女の熱烈なファンだったその大学病院の某研修医、人工呼吸を受けている彼女のもとに近づいて、せめて励ましの言葉をかけようとその病棟におもむいた。
ガードマンが彼を一瞥、「関係者以外は立ち入りをご遠慮願います」と立ち入りを拒否する。
「ボ、ボクはここの医者だよ。診察のために呼ばれたんだ」
ガードマン、少しもたじろがず、「ここは神経内科の特別病棟で、患者はみな成人ばかりです。そこになぜ『小児科医』が呼ばれたのですか?」
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白衣着て身分証明書代わりの名札つけていればいいだろうと思っていたが、そこに「小児科医師」と書いてあることはすっかり忘れていた、という小児科研修医のお粗末。(2000/05/20)
実際はどうもあらゆる科から不埒な医者どもが集まってきたらしく、主治医と教授周辺、特別看護グループ以外は入れないようになっていたそうな。国立大学でそんな特別扱いしたのでちょっと批判があり、そこに芸能人が入院することはその後無くなったとか。
以前から英語圏で以下のようなチェーンメールが循環しているそうだ。
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注意!香水強盗に気をつけて!
最近ショッピングセンターの駐車場などで、「香水を特別安くお譲りします」といって近づいてきて、試供品をかがせる手口の強盗が出没しています。それは香水ではなくエーテルやクロロフォルムで、かがされた被害者はすぐに意識を失ってしまい、気がついたときには身ぐるみ剥がされているというものです。
私の場合はスーパーの駐車場通路を歩いていると、男女二人組みが乗った車が近づいてきて、窓越しに声をかけてきました。「今、有名メーカーの香水を特別価格でご奉仕しております。ぜひお試しください」
私はすでにメールでこの手口を知っていたので、ことわりました。連中はなおもしつこく声をかけてきましたが無視しつづけました。もしメールが来ていなかったらどんな目にあっていたか判りません。これを受け取られた方はすぐに知り合いの方々に転送して、強盗グループの被害を未然に防ぐ手助けをお願いします。
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99年の11月まではこれはありきたりのデマメールとして知られていた。こんな手口で昏倒して有り金を奪われた被害者などどこにも存在しなかった。大体、香水瓶に入っていようがバケツ一杯であろうが、エーテルやクロロフォルムをちょっと嗅いだぐらいで意識を失うはずがない。
揮発性麻酔剤がどのように作用するのかというのは、実はまだよく判っていないところがあるのだが、普通は神経細胞膜の活動性を一時的に減弱させるためだと考えられており、当然そのためには充分な量が中枢神経系に吸着する必要がある。TVドラマなどでは麻酔剤を染み込ませたハンカチを顔に押し付けると、被害者は実に簡単に意識を失ってくれるが、あんなこともありえない。手術時、ガス麻酔だけで行う麻酔導入の場合、ハンカチなどでは得られにくい結構な高濃度で数分はかかる。それも手術時には別の安定剤などを前投薬して導入しやすくしているのだ。瞬間に意識を失わせる目的なら、静脈麻酔剤を一気に静注するしかない。
ハイジャック事件などではよく捜査当局に、「ガス麻酔剤を機内に入れて解決すればいい」という親切なアドバイスがくるそうだ。これも犯人人質全員が深麻酔にいたる量は並ではなく、長時間かけてシューシューと注入していればなんぼ鈍い人間にも臭いでわかるし、麻酔にいたるまでには逆に脱抑制期が来るから犯人はますます興奮、人質はおびえまくってパニックになり、どんな事態になるか空恐ろしい。麻酔と言うものを理解していない妄論でしかない。
そもそも麻酔でなくても、ドラマや小説では人は実に簡単に意識を失う。拳銃の台尻で後頭部を殴られて倒れこみ、敵に捕らえられる探偵は過去に何万人といただろうが、実際に頭を殴りつけて意識を失わせるにはほとんど頭蓋骨を粉砕する強度でないと不可能なはずだ。ひ弱な人が自律神経反射で一過性の低血圧起こすようなことはあっても、普通に頭をポカリ、コテっと昏倒という事態は考えにくい。打撃によって一挙に意識消失というのもかなり伝説に近いのだ。
さて上の香水強盗だが、いつものパクリ元のこことここでほぼ同時にこれの特集をやっている。なんでも99年11月初め、アラバマ州モービルと言う街でこれとまったく同じ手口で襲われ、金品を奪われたという「事件」が起こったというのだ。54歳のB夫人が銀行の駐車場で、女性に声をかけられた。45ドルの香水を8ドルで特別にお譲りする、と試供品をかがされた。B夫人はそのまま意識を失い、30分後に気がついたときには800ドルの現金がなくなっていた、というのだ。これは地元新聞でも報道され、地元警察のwebに事件の概要が掲載されている。
被害者の訴えに基づき、使用された薬剤を突き止めるために血液検査が行われたが、30分の意識消失をもたらしたなら当然何らかの代謝物が残っているはずなのに、何も見つからなかった。なくなったという現金のうち300ドルは雇い主の口座から彼女が引き落としてきたもので、残りは彼女自身のものだったというが、その出所がはっきりしない。大体彼女が金を持っていることをどうやって犯人は知りえたのかわからない。他にも矛盾点はいくつかあり、この事件は未解決ということになっているのだが、どうやら「狂言」ということでほぼ片付けられそうだ。
確定したとはいえないが、B夫人はどうやら「都市伝説」のストーリーを自らの「狂言強盗事件」に採用してしまうという致命的ミスを犯したようだ。しかし誰も彼女を笑うことは出来ないだろう。不埒な使用目的を示唆して、麻酔剤をネットで売るような輩がいたのはつい最近だ。あの時は危険な薬が簡単に買える、とネット自体の危険性をあおるような奇妙な論調が目立ったが、「クロロフォルムなんぞレイプ目的に使えるはずもない」という正しい指摘は誰もしなかった。ひと嗅ぎで意識がなくなる怪しい香りの伝説は、売り買いした連中ばかりでなく、皆が共有していたのだ。(2000/05/27)