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以前、咳による自己救命法のチェーンメールを紹介した事があったが、それについて専門家が国際学会で肯定的な意見を出したというので、ちょっと話題になっている。
この"Cough CPR"とは、心室細動や重症の房室ブロックという、心停止が突発的に起こる不整脈に対して、強い咳をしつづけることで一種の自己心マッサージをおこない、意識消失するのを防ぐというものだ。以下に99年ごろに循環したという、チェーンメールの内容を再録する。
これは真面目な話しだ…。今は午後4時17分、あなたは車で家に向かっている。今日の仕事はいつになくきつかった。ノルマは厳しく、上役はまったくこちらの事情など考えてくれない。不満をならべだすときりがなく、あなたはいらいらと車を進めている。突然、あなたは胸に強い痛みを感じる。それは腕からあごのあたりにまで広がる。一番近い病院まであと10キロ、そこまで持つだろうか?どうしたらいい?あなたはこの前心肺救命処置の講習を受けている。でも一人で、しかも自分自身に何が出来る?
心臓発作を独りで生き抜く方法
独りでいるときに心臓発作をおこしたら、この文章を思い出されたい。人間の心臓が突然鼓動を止めると、何の助けもない場合、意識消失までには10秒しか残されていない。そんなとき、激しくせきをし続けることでその人は自分の命を救うことが出来る。せきをする事で呼吸は維持されて酸素供給が行われ、せきで胸腔内圧が高まるために心臓の血液拍出も保たれる。誰かの助けを得るか、心臓がふたたび正常に動き始めるまで、せきは2秒に一度以上の割で続ける必要がある。
せきによる胸腔内圧上昇と、それによる心臓マッサージ効果は、心調律の再開を促す効果もある。こうして患者は電話をかけるなり、助けを呼ぶなり出来るようになる。
この方法を出来る限り多くの人に伝えてほしい。それが彼らの命を救うのだ。
これに対して,専門家の意見は冷ややかであった。たとえば米国赤十字は、わざわざこの方法についての否定的意見のページを用意している。米国心疾患協会でも同じような解説があるが、こちらはちょっと分かりにくい。よく読めば、この「咳による自己救命法」には効果がある可能性はあるが、一般的な救命テクニックをややこしくするので、救命法として教えるのは適当でないというような妙な書き方になっている。そして、心電図モニター下で、心血管造影をやっているような状況なら、これは効果のある方法だろうとされている。誰もいないところで心停止を起こしかけたときの対応法に、なんだか妙な方向からのケチつけのように私には思えるのですがね。
今月の2日、ウィーンで行われた欧州循環器学会の席で、ポーランドの循環器専門家、シュレジエン医科大学のタデシュ・ペテレンツ教授は、不整脈による突然死を防ぐのに、この"Cough CPR"がきわめて効果的であると述べた。彼は不整脈による意識消失歴のある、115例の自験例に対して、症状の前兆などを説明し、"Cough CPR"のやり方を覚えさせた。その結果、この患者たちは総数で365回の発作を起こしたが、、全ての発作はこの"Cough CPR"によって乗りきれ、医学的対応が必要だったのは73回の発作例だけだったという。
ペテレンツ教授はこう語る。「この咳自己救命法は一般大衆に教えられるべきです。多くの人々は自分の心疾患に気づいていないし、意識消失が最初の症状としてあらわれ、そして最後の症状になることが多いのです。悲しいことに、人生もそこで終わるのですが」
しかし、他の専門家たちはなおこの方法には懐疑的である。症状の予兆を一般患者が知るのは困難だろうし、効果も正しく判定されていないというのがその理由。好意的な意見も、「咳救命法」を行った患者たちが、本当に不整脈を起こしていたかという検証がないので、今後の研究が必要としている。
心電図モニター下ではそれなりに有用とまで認めつつ、この方法に専門家がいい顔をしないのがとても不思議だった。一人でいるときに発作がおこって、そのままアウトになってしまうより、やれることは何だってやればいいと思うんですが。不整脈ではないような心臓発作の場合に、意味なく胸腔内圧を高めてしまって害が出る可能性を恐れているのかと思ったが、反対する人でも「害はない」という点では一致しているらしい。純粋に、どこの誰とも分からん人間による、チェーンメールなんぞで提案されたのが不愉快ということのようだ。「専門家」というのは、何よりも「自分たちによる事態のコントロール」ということを優先するのです。当然、患者の命よりもね。
投稿者 webmaster : 2003年09月21日 22:53