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CATVの日本映画専門チャンネルで視聴。1982年に作られた、「幻の超大作」である。監督は黒澤明と「七人の侍」の脚本を共同でかいたことで知られる橋本忍で、これが初監督作品なのだそうだ。
冒頭、女性が白い犬とジョギングをするシーンが延々と続く。幻の湖とは琵琶湖のことで、この女性は春夏秋冬の琵琶湖のほとりを、ただただ走るのである。何しろ北琵琶湖の方まで走っていくので、市民ランナーとしてはかなりの実力を持っている人であろう。片道50kmはあるぞ。少なくとも犬はばてるだろう。
やがて、この女性は雄琴温泉で働くトルコ嬢(現在はソープ嬢と呼ばれるが、映画作成当時はそう呼ばれていたのでそのままに)であることが明らかになる。そこはお城仕立てで、働く女性たちはみなお姫様コスプレで現れるのだ。彼女はそこで、源氏名「お市の方」と呼ばれている。この職場がやたらに業務研究に熱心で、サービス業の鑑みたいなところだ。録画して病院に持っていき、職員に見せるべきだった。
そのあたりで阪神ヤクルト戦を見てしまったので、話はよくわからなくなるのだが、多分続けてみていてもわからないのは同じであったと思われる。彼女の飼っているジョギング犬シロがなぜか出刃包丁で滅多刺しにされて殺され、お市の方は復讐を誓い、独自捜査で相手を特定する。
なんでも相手は有名作曲家であるらしく、東京まで出かけた甲斐もなく、そこの事務所のブロックにあって接触は出来ないが、以前トルコの同僚であったアメリカ人女性とばったり遭遇、彼女は実はCIAのエージェントであった(なんでやねん)。彼女の協力で相手の身元はすべてわかってしまう。
その後、主人公は地元の信用金庫の行員と恋に落ちて婚約したり、戦国時代に悲恋の末に殺された女性の生まれ変わりであることがわかってみたり、その悲恋の相手の笛の名手というのと北琵琶湖パークウェイのあたりで再会してみたり、阪神が大逆転されている間に実にいろいろのことが起こっていて、なんだかさっぱりわからぬまま、例の作曲家が、お市の方の前に客として現れるのである。
そこからが本編といってもいい。襦袢みたいな着物に足袋というスタイルで、出刃包丁を帯に差し、逃げる作曲家を追うお市の方。作曲家もジョギング愛好家という設定なので、延々と琵琶湖岸の追跡シーンが始まる。
前半、スローペースの探りあいではじまる展開だが、湖岸から国道161号線に戻るあたりでペースはあがり、堅田の街中に差し掛かると、ほとんど中距離レース並のペースになってしまい、北琵琶湖まで往復できるウルトラマラソン系のお市の方は、オーバーペースでバテバテ。
しかしそれは作曲家の方も同じ。琵琶湖大橋の登りでペースダウンしたところを一気にお市の方に抜かれ、あえなく立ち止まってしまう。勝利に万歳して喜ぶお市の方。振り返りざま、出刃包丁抱えて丁寧に二度刺しで作曲家の息の根を止める。二人のトレーニング量からすれば、途中でオーバーペースはあったとはいえ、たかが数キロ走っただけであのへろへろはちょっと情けない。
最後はなぜか宇宙空間になり、「地球防衛軍」レベルの特撮で、スペースシャトルから出て宇宙遊泳する先ほどの「笛の名手」。琵琶湖の真上の静止軌道(赤道上でないとそれは無理だと思うが…)に笛を置き、なんやらわからん情緒的なことをつぶやいて映画は終わる。
この映画が作られていたころ、まさしくこのあたりに住んでいたので(撮影現場に通りかかったこともあったぐらいで)、まことに懐かしい風景がいっぱい出てきて感無量でありました。公開当時、一週間で上映が打ち切られ、ビデオ化もされなかったといういわくつきの「幻の怪作」とされ、好き者たちのB級映画祭なんかで寂しく上映されていただけだと聞くが、ちょっともったいないような気がする。
これは単純に、日本人の好きな女子マラソンと時代劇を、そこそこのソフトポルノ兼ミステリィ風の話と掛け合わせたら受けるだろうという、かなり素朴な狙いのもとに作られた映画だと思うのですがね。その意味では、もう少し本格的にランニングシーンを撮るべきであった。主人公を和服みたいな格好で走らせるなら、やはり「なんば走り」させるべきでしたね。あのランニングフォームでは、すぐに帯がほどけてしまうぞ。
投稿者 webmaster : 2003年09月09日 22:07