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せっかくの休みなのに体調が悪く(といって、単なる二日酔いなんだけど)、スポーツクラブはお休みにして読書。そう考えもなく買った、恩田陸という人の短編集である。(祥伝社文庫)
知り合いに、*田睦という人がいて、あれ、あの人本書いていたのかと手に取ったのが購入理由である。睦でなくて陸なのだというのは、読み終わってから気がついた。
短編集なのだが、一連の話の主人公は退職判事ということになっていて、その人が経験する日常的な出来事や追憶の中で「事件」が起こるのである。都築道夫に「退職刑事」というシリーズがあるが、あれからパズル要素とか曲芸的なレトリックをさっぴき、ねちこい心理描写や根拠に乏しい決め付けを盛り込んだらこれになるかな、という感じ。正直いって、読み通すのはかなり辛かった。
解説を書いた西澤保彦という人が、別の人がこの短編集を評して、「謎の捏造」と「解明の恣意性」という言葉を使ったことを紹介しているが、不思議なことにそれを「ほめ言葉」のようにいうのである。この二つの言葉はこの小説群を実に的確に評していて、追憶から適当に材料を拾い出して謎を提示し、論理抜きにそれを解決するという、読者おいてけぼり系「ミステリ」であると指摘しているとしか思えないのだけれど。
不謹慎ながら、患者さんの中にはこれと似たような印象をもつ人がいるな、というのもある。過去の体験をかなり歪んだ形で追想し、そこに自己憐憫をこめた問題点を一人語りし続けるタイプの人である。基本疾患によって、その過去の歪み方はそれぞれであるのだが、その追憶が余人の視点など全く拒否する絶対性を持っているのは共通している。
その追憶に共感できたり、それなりの解釈を持ち込んで操作対象にしうると考えるような治療者なら、そういう人を歓迎するのだろうけれど、私みたいな俗物治療者は、まあすんだことはしょうがありませんなぁ、今困ってることからかたずけましょうや、と適当な薬物処方で御退散いただくだけ。本音をいうと、こちらの態度のほうが当の本人にたいしても利益がよっぽど大きいと信じてますがね。
そんな職業的感想が先に沸いてしまい、あまり素直には楽しめなかった一品。余計なことだが、30代の兄妹が二人で、しゃれたレストランで一時間半の間に3本ワインを開けるという描写があるのだけれど、おそらく作者自身の酒豪振りが反映されたとおもわれる、そのヨーロッパ人並みのアルコール処理能力にはただ感嘆。
投稿者 webmaster : 2003年09月23日 22:22