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夕方、紫野のあたりに用事が出来たので、バスで出かけることにした。
近所のバス発着所は小高い丘にあり、木造の事務所とその前にある砂利引きの広場だけの、こじんまりしたもの。
ホコリだらけのボンネットバスが二台、発着所に止まっているが、人の姿はみえない。「紫野行き」のほうに乗り込もうとすると、事務所から出てきた女車掌が、「運転手がこないのでちょっと待っていてくれ」という。
車掌はそのまま広場の隅まで歩いていき、「おーい、ノモリさーん」と、彼方にいるらしい運転手に手を振っている。彼女には襟ボクロがあって、夕日にそまるその後ろ姿は結構絵になっているのだった。
半分目覚めながら、これは石原裕次郎の「夕日の丘」の情景を夢に見ているのだな、と気がつく。それにしても何で「紫野」なんだろうと思い、もう一台のバスに目を向けると、それは「標野行き」になっているのだった。
あかねさす 紫野行き 標野行き 野守は見ずや 君が袖振る
額田王って、バスの車掌だったのか。それにしても、「標野」ってどこだよ。
投稿者 webmaster : 2004年01月14日 18:28