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2004年03月01日  書類仕事 [日常]

この業界では、月初めはやたらに書類書きが多い。保険組合に医療費を請求する「レセプト」提出というものがあるからだ。もちろん、最近は医事コンピュータに記憶されている医療行為が自動的に打ち出され、単純集計とミスチェックは終わっているので、作業は格段に楽になった。

我々がやる仕事はまず、病名の追加と削除という作業である。病気というのは一つの状態がベタでずっと続くものではなく、様々に変化するわけで、時には完全に矛盾するような病状を呈することもある。当然、対応も逆のことをすることだってある。そのままだと、例えば下痢と便秘が同時にきて、下痢止めと下剤を一度に飲ませていたとする奇妙な請求書になったりする。量しか書かないので、時間的な経過までわからないのだ。

ちょっと前なら105円ルールというのがあって、タダ同然の薬の投与については病名を書く必要がなかったが、投与した薬に関しては、すべてを書くことになったため、適応疾患のつじつま合わせに苦労することが多くなった。重箱の隅つつきすると公正になると思ったバカがどこかにいるわけ。

そのあと、高額医療費の場合に(額については県により差がある。月100万を基準にするところもあれば、70万超ぐらいのところもある)、「病状詳記」という釈明文書を書くという作業がある。なんで高額の治療を行わないといけなかったかを、お役人に納得させる文書を書くわけだ。単なるお品書きだけだといちゃもんを付けられやすいので、ナラティブなストーリーを付加するわけである。長期入院の精神疾患ばっかり見ているとまず書くことはないが、合併症を見る機会の多い私は結構書かされる。

これはなるべく畳み掛けるような調子で、とにかくこれらをやらねばたちどころにして取り返しのつかぬ事態になったのだと書き連ねるのがコツである。もっとも私の場合はテンプレート文書を何種類か用意してあって、しかも前月の文書に書き足す形でやるので、あまり時間はかからない。しかし、言ってみれば相手をどう誤魔化すかという無内容な文書を書きつづけるのはそう楽しいことではなく、文体も必然的に役所式になってくるので、虚しくなるばかりである。

というわけで、少し前からあえて文体をパロディにして楽しもうと、裁判官の判決文のように書くことにした。判決文というのは基本的に述語がダラダラと読点で継がれていく、独自の文体であるのはご存知だろう。

「本患者はかねて慢性精神分裂病にて長期入院していたものであるが、○月○日午後3時ごろ、入院中の自室において突然の意識消失発作を来たし、応急処置にて経過観察していたところ、なお意識改善が得られぬため、頭部CTを施行してみたところ、右中大脳動脈領域に広範な脳梗塞発作の所見が得られ、即座に輸液、脳圧降下剤の投与をはじめたものであるが、高度の意識障害のため吐瀉物誤嚥を併発し、重篤な誤嚥性肺炎となっていたため、酸素吸入と抗生物質の併用をおこない経過を観察していたところ、(どっと中略)、よってリハビリ過程に至り、○月末日段階にて、左半身不全麻痺および構音障害をを残しつつも小康が得られたものである」

無内容なことを息をつかさせずに読ませるという目的にはかなり役立つし、言葉の繰り返しが多くなるので簡単に文章を膨らませる。この文体(と言えるほどのものではないが)を使い出してから一度も返戻がないので、結構効果はあるように思う。同業者のかたは使って見られてはいかがだろう。多少遊びはこめられるとはいえ、やはりバカバカしいのは同じことではあるものの。

投稿者 webmaster : 2004年03月01日 16:58

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コメント

ですので行政のスタイルに否応無くつき合わされると、現場の方はこういう反応をされるのだなと思うと、ちょっと寂しい気持ちなのです。
まあ彼らの仕事の第一は書類上の辻褄を合わせることではありますが。

投稿者 小狸工房 : 2004年03月05日 20:14

>小狸工房さんへ

どこか身も蓋もないところがありますか?指摘されても判らない。

私は患者との接点に自分の仕事の本質があるので、役人の要求する「行政的慣習」なんぞに付き合うのはゴメンなんだ、というだけのことなんですが。

投稿者 Webmaster : 2004年03月03日 00:26

>「、」は読点ですね。(「。」が句点)

あれま、寝ぼけてた。書き直しておきます。

投稿者 Webmaster : 2004年03月03日 00:22

「、」は読点ですね。(「。」が句点)

投稿者 passerby : 2004年03月02日 00:53

時々身も蓋もないことお書きになりますね(苦笑)。
時折患者となる側からすれば(いつも健康体というわけにも行かないので)、お医者様は聖職者であるとゆー幻想は欲しいところなのですが。

投稿者 小狸工房 : 2004年03月01日 22:39