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前回、アトキンスダイエットというのは、いわば糖尿病のときのエネルギー代謝と同じような状態を作り出すものだと述べた。もちろん糖尿病では血中にブドウ糖がみちあふれている状態なのに、インシュリンが働かないために組織が糖を利用できない状態であり、アトキンスダイエットでは糖に分解される炭水化物の摂取量をへらして、低血糖状態を作り出している点が違う。
しかし、身体の側はエネルギーを確保しないといけないので、両者とも、脂肪やたんぱく質を分解してエネルギーに変えているという状態は同じだ。いわゆる絶食や超低カロリー食では、たんぱく質分解も結構進むので、筋肉組織などもやせ細り、結果として代謝量の減少をまねき、リバウンドの原因になる。アトキンス系では蛋白と脂肪はたっぷり取るため、この点は回避される(らしい)。
高校の生物で習うので覚えておられる方もおられるだろうが、炭水化物とたんぱく質のエネルギーは1gあたり4Kcalで、脂肪のそれはほぼ10Kcalである。脂肪はエネルギーに富む物質で、飢えに苦しむ危険を幾多となく迎えた動物種は、大多数がこの脂肪をいざという時のために蓄えるように設計されていて、人間は特にその点が念入りなのである。
糖の利用ができないとき、主要なエネルギー元は脂肪に切り替わる。そのメカニズムはいろいろあるらしい。関与する局所ホルモンがいっぱいあって、中には抗肥満薬として使われる可能性がある物質もあるようだ。アミノ酸も1部は糖に変換されてエネルギーに動員されるが、そう効率がいいものではない。脂肪は糖に変換される部分と、遊離脂肪酸として直接TCAサイクルに入ってエネルギーになる部分があり、後者のほうが割合は大きい。
ただ、そのためには糖由来のオキザロ酢酸という物質が必要で、この量には限界があって、余った遊離脂肪酸経由の物質(アセチルCoAという名前、どこかで聞かれた事があるだろう)は縮合してケトン体になる。このケトン体はそれ自身エネルギー源になり、とりわけ脂肪酸が超えられない脳血流関門も越えて、脳細胞のエネルギー源にもなる。また、ケトン体は満腹中枢を刺激して、空腹感を抑制する作用もある。
ただ、これらは酸性物質なので、体の酸塩基平衡をみだす事がある。腎機能低下があるような場合、ケトアシドーシスという命にかかわる病的状態を呈する可能性もないではない。このダイエットの注意として、水分摂取を増やして酸塩基平衡を正常に保つようなどといわれるが、このへんはちょっと注意が必要なところであろう。
いくら炭水化物を取らないからといって、脂肪とタンパクとり放題というのでは、あまった部分はまた脂肪として溜め込まれるのではないか、と思ってしまうのだが、脂肪細胞への脂肪酸取り込みはインシュリンが関与しており、炭水化物を抑えるこのダイエットでは、インシュリン分泌量が少ないため、取り込みも少なくなる。また、脂肪酸から脂肪を合成するときには、糖由来の物質が必要で、やはり脂肪合成は抑制される方向に向かう。
てなわけで、このダイエット法はこと減量ということに関して、表面的な合理性を貫壁に保っているのである。自分で納得するためにいろいろ資料を集めてみたが、普通の臨床レベルの生化学常識からは、ツッコミするのは難しい。気になるのは、使われなかった脂肪酸はどこに行くのだろうと調べても、はっきりしたことがわからなかった点。腸から排泄されるなんて、怪しいダイエットサイトには書いてあるのだが、そんなことあるかねぇ。どんな形であれ、食ったものはエネルギーとして使い残せば身体にたまるはずなので、その辺が今ひとつ説得力不足である。
このダイエット法に対する正統的な栄養学や医学の批判というのも、結局はそこに集中している。レビューもいくつかあるが、短期的には成功するが、長い時間をとればあまり成功していないという言うものが多い。まあ、たしかに私なんか毎日フライドチキンとベーコンエッグばっかり食ってるので、鮭茶漬けとタラコおにぎりの夢見るようになってますものなぁ。たいがい、こっそり炭水化物食うようになりますぜ。
でも、たった10日ほど過ぎただけなのに、なんとなく減量できてきたような気もしないではないので、せめて1月ぐらいは真面目にがんばってみますか。結果は追って報告ということで。
投稿者 webmaster : 2004年03月30日 23:33
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