« ローマ法王と運転手 | メイン | バナナ・ガード »
最近、もしかしたら医学上のパラダイムシフトにつながる大発見の糸口をつかんだのではないか、という気になりかけている。というのは、私の職場には老人痴呆病棟があるのだが、そこでちょっと前から、「動物療法」の名目で猫を飼うようにしているのである。もっとも「動物療法」というのはほとんど理由付けで、病院にやたらに捨てられる猫のうち、多少愛想がいいのだけでも養ってやろうという目論見である。
愛想がいいように見えても、野良猫暮らしが身に付いた猫はなかなか病棟に居つこうとせず、一代目、二代目の猫は無断離院を繰り返した挙句、適当な相方を見つけて逐電してしまった。不妊手術やら予防注射やらに結構物入りだったが、そういう理屈は通じないのが猫の猫たるところである。
三代目はほんの仔猫のときに捨てられていたので、病棟の中だけを生活圏にするのが刷り込まれたらしく、ちゃんと職員の休息所の片隅に定めたトイレの場所も守り、看護詰め所のカウンターで看板猫の機能を立派に果たすようになった。職員にも可愛がられ、福利厚生にはまことに役立っているようである。回診のときなど、さっそうと先頭を歩いていくので、「財前教授」と呼ぼうと提案したが、すでに「タマ」というベタな名前がついていたので却下されてしまった。
ところがである。患者さんたちはほとんどこの猫に興味をはらわないし、露骨に嫌う人が多いのである。痴呆にもその病像に色々あるが、多幸性が目立つような人から、攻撃性が前面に出ている人まで、猫が近づくと嫌がる人がほとんどなのである。もちろん中には可愛がってくれる人もいるが、かなり例外的で、その比率は1:9というところである。
残念ながら猫好きの人の統計的比率はしらないが(ネットで調べたがわからなかった。犬好きよりは少数派らしいが)、10人に1人しか猫好きがいないということはないだろう。現に、面会に来た家族たちは、カウンターで寝そべっている猫をみても嫌悪感を示すようなことはなく、「ペットまでいるんですね」と喜んでくれるのである。
これは面白いと思って、外来で経過を見ている痴呆疾患の人たちにもこの点を確かめるようにしているのだが、やはりほとんど猫好きはいないのである。ある老婦人の場合など、旦那が猫好きで家をほとんど猫屋敷にしているが、自分は猫が近づいてくるだけで身震いするほどで、離れに避難して家庭内別居を何年にもわたってやっていたという例もあった。
犬の場合はどうなのだというのも気になるが、こちらはあまりハッキリしない。家では飼っているという場合は結構あるが、それでもあまり中心になって世話をしていたという場合は少ないような印象はある。
もっと多数の例を取り出し、無作為抽出したコントロールと比較しないと確かなことはいえないが、少なくとも検証すべき、「痴呆性疾患の人には猫嫌いが多い」という仮説をたてるには充分な印象は得られるようにおもう。もちろんこれは仮説であって、それが統計的に成り立つかどうかは別の話。ましてやその仮説を裏返して、「猫が好きな人はボケない」とまで主張しているのではないので御注意を。
投稿者 webmaster : 2004年04月21日 22:17
このエントリーのトラックバックURL:
http://med-legend.com/mt/mt-tbcba.cgi/81
このリストは、次のエントリーを参照しています: 大発見……?:
» 世紀の大発見! from Letter from Yochomachi
引用させていただきました。 [続きを読む]
トラックバック時刻: 2004年04月22日 15:39
» 痴呆性疾患の人には猫嫌いが多い from archiplumNews
いつも楽しませてもらってる医学都市伝説で、興味深い記事が。。! 痴呆性疾患の人には猫嫌いが多いという感触をもっているそうな。 ワタクシメはネコ好きなので、老後はネコ御殿にすむ予定ダワン☆... [続きを読む]
トラックバック時刻: 2004年04月22日 16:37
» 痴呆性疾患の人には猫嫌いが多い from archiplumNews
いつも楽しませてもらってる医学都市伝説で、興味深い記事が。。! 痴呆性疾患の人には猫嫌いが多いカモ?と精神科医であるwebmaster氏が感じる場面が多々あるそうな。 ワタクシメはネコ好きなので、老後はネコ御殿にすむ予定ダワン☆... [続きを読む]
トラックバック時刻: 2004年04月22日 16:45
» ・翫y%・・vゥ from SUS・・|D荐|・ATE: 04/21/2004 11:20:56 PM
篁u蛉]・・z昶 w・俄 cqE・r痃E筝z痃C膓}㈲倅9r痃J纖贋{ョ・{ヒ岩 ・q#・v・イ・wヒI鐚t痃!・若p纎p謳0・・r\絽q竡帑ィ・qウ・ゃr'・v轗・ ・拷縺sヒN・xヒ+・zヒL [続きを読む]
トラックバック時刻: 2004年09月05日 13:10
はじめまして。
トラックバック、すんごい勢いで化け化けになってますね(汗)
すみません。
投稿者 SUS : 2004年04月22日 22:36
痴呆症の方には「猫」(というより、むしろ愛玩動物全般かもしれませんが)を好きでない人が多い、ということは、ひょっとすると、何か意味があることなのかもしれません。
いわゆる、子供好き、動物好き、というのはおそらくその人個人の外界との関わり方によってくると思われるので、そういう趣向の違いが痴呆症発症のリスクに関係があるのかもしれません。
ま、構造的要因(なんでもすぐに分子や神経活動に結びつけたがる人が多いですよね)か環境的要因(これは例の「裏を返すと・・・」に繋がる危険な香りがします)かは分かりませんが。
アメリカなんかではまじめに研究してそうですが、どうなんでしょう?
投稿者 たれ☆ぱん太 : 2004年04月22日 08:23