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殊能将之の新作、「キマイラの新しい城」(講談社ノベルス)がアマゾンから届く。かなり複雑な構成なのに、ビールかっくらいながら、オリンピックをちらちら見つつ、というまことに不真面目な態度でも、登場人物の配置とか、物語の構造を見失わないでもすむのがありがたい。作者の巧みな具体的イメージ喚起力のおかげだろう。
千葉の山中に、フランス中世の破壊された古城を移築し、テーマパークをつくった企業の社長が、かっての城主の幽霊に憑依されてしまい、幽霊が要求する謎の死の解明のため、名探偵石動戯作が登場するという話である。
ほとんどの叙述は、社長に憑依した幽霊の視点で、それはまったくの中世フランス人が驚きをもって現代日本を見るという内容なのである。固有名詞以外の日本語はちゃんとわかる、ということにはなっているけど。この人は密室である塔の中で背中から剣で刺し貫かれて死に、魂は浮かばれることなく城とともに彷徨っていたのである。
ミステリィなのだから、当然こういうのも全て叙述トリックなのだろうという先入観で読んでいったのだが、ある意味そうであったともいえない事もなく、実際の「解決」は次元が違うところにおさまるというのが、いかにも殊能将之らしい。おいおい、こりゃ詐欺だぜ、ともいえるが。
何であれ、石動戯作が示す密室トリック破りの推理は、それ自体が密室ミステリィ総体の批判になっていると思える。全然なんにも解決されていないのに、感動的な脱力感を味わえるという点で、稀有とはいえないまでも、そう滅多にお目にかかれない怪作だろう。
投稿者 webmaster : 2004年08月21日 23:13
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» 「キマイラの新しい城」 from 月灯りの舞
「キマイラの新しい城」
殊能 将之:著
講談社ノベルス/2004.8.5/840円
「私を殺した犯人は誰なんだ?」欧州の古城を移築して
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