« Trick and Treat! | メイン | 遺伝子操作低アレルギー猫 »
先の新潟中部地震は予想を超えた激甚災害になり、しかも収まりかけたかなと見えたところでまた激しい余震が来るという、手の込んだ芸風を見せるので、避難している人たちはいまだに家の後片付けも充分に出来ないという状態のようだ。
そんな中、心身の変調を示す人が後を立たないという報道で、その人たちが望んでいるのか、マスコミが必要性を主張しているのかはっきりしないのだけれど、「カウンセラーを派遣しろ」という声が大きいのだという。
私は精神医学業界で働きだしてすでに30年になるのだが、現実の臨床現場でこの「カウンセラー」という人に、リアルタイムで出会ったことがない。それは心理療法士とかが、世の人が「カウンセリング」と理解するような仕事をしている場合はあって、自分でも予診だの経過観察だのを、そちらに回したりすることはないではない。ほとんどその人たちの研修のつもりでやるのだけど。大概は二度手間になるだけで、よけい面倒なのである。
「カウンセリング」というのは一般言語化しているが、業界的にはやはりそれはカール・ロジャースが開発した「来談者中心療法」という「特殊療法」を指している。全くああしろこうしろという指示を行わず、クライアントが語る問題点を整理して受容し、共感的態度で接することでクライアント自身の問題解決能力を導くような態度というか、テクニックである。
先ほど「出会ったことがない」と書いたが、どこからか探し出してそういう人に相談した経験がある人を自分の患者としてみたことは何度かあるのだが、そのほとんどはロジャースも嘆くのではないかと思うような、「未熟精神分析もどき決め付け素人不安惹起無自覚治療妨害者」でしかなかった。
先日私のところに来たある「拒食症(実はこれ自体間違いだったのだが)」の女性は、その手の「カウンセラー」に、「あなたたちは母子分離が出来ていない」と決め付けられ、母親ともども説教され続けるという「治療」を5年以上も受けていた。なんだか怪しい通信教育や学校もどきで、そういうことを教えるらしく、この「母子分離が出来ていない」というあまり意味のない指摘は、あちこちでかなりの人に対して無差別になされているようだ。
そういうインチキでなければ、病院で精神科医のアシスタントとして集団療法とか、心理テストをやってる人しか知らないのだから、災害被災地にいって彼らが一体何をするのだろうというのはかなり疑問である。さしあたって現場情報の流れをよくすることとか、被災者どおしの交流を促進して軋轢を回避することなどは仕事になるだろうが、そんなこと、ちょっと気の利いた行政関係者がいれば、十分出来ることである。
ほかにも、PTSDという言葉の安易な使い方とか、気になることは山ほどある。もしかしたら自分が精神医学的知識の埒外にいるのではと不安になってしまうほど。例の救出された2才の子供に、PTSD予防のために精神科医が面接するというのだが、それで一体何をするのだろう。SSRIでものませるのかしら。今出来ることは栄養と休養、そして安全感の確保以外ないと思いますがなあ。仕事しているフリのためにそういう発表しているのなら、ちょっと空しい。
投稿者 webmaster : 2004年10月28日 22:20
このエントリーのトラックバックURL:
http://med-legend.com/mt/mt-tbcba.cgi/249
このリストは、次のエントリーを参照しています: 「カウンセラー」って何するの?:
» カウンセリング from ぴかの鬱に向き合ってみる日々
カウンセリングまだ受けたことが無い。
受けてみたい。受けようかどうか迷っている。
でも、外に出るのも億劫、そんな私がはたして、カウンセリングの予約をとって、予約... [続きを読む]
トラックバック時刻: 2005年02月24日 15:33
小狸工房様
ご返事どうもありがとうございます。
コメントにありますように、中途半端な保証を与えることは却って良くない結果をもたらすと思います。わたくしがここで言う「こころのケア」というのは、特に災害などの場では一般人でもできる救急法心得のようなもので、例えば意識を失って倒れた人は無闇に動かさず、安静を保ち一刻も早く救急車を呼ぶ、出血したらガーゼなどで圧迫する、といった医療従事者でなくても講習などを受ければできる対応の心版、です。
・そばにいてあげる
・話を親身に聞く
・判断や指示をせず、被災者が自ら回復するサポートをする
・重篤なケースは専門家に相談、紹介する
・救援者へのケアもおこなう
現場で行われているのは、このようなことのようです。
以前は現場の様子を知らずに出かけるボランティアの弊害も
あったようですが、これらも改善されつつあると思います。
専門家の方のご意見を伺えれば幸いです。
投稿者 BB : 2004年11月07日 16:32
では具体的に何ができるかに関する考察。
「また揺れるかもと思うと安心して眠れない」
と訴える方に
「大丈夫、もう揺れません」
と断言できる人間もまたいません。
「その際には万全のサポート体制が取られていますのでご安心を…」
と言いたければ、回答者自身も被災地の全体像を把握していなければ迂闊な返事は憚られます。
ボランティアサークルで同期だった友人に阪神淡路島大震災の際には
「君も行くのか?」
と訊ねれば
「まずは自分の衣食住が確保されていない限り出動しても混乱が増すばかりだし、平素から統率の取れた行動ができるメンバーで無いと逆に現場の御荷物になるから、今回は後方支援に徹するよ」
と支援物資の仕分け作業に精を出しておりました。
実際、心のケアって現場では何をされているのでしょう。盛んに喧伝されてはおりますが。
投稿者 小狸工房 : 2004年11月07日 09:42
医療従事者ではありません。
今回の災害で「カウンセラー」が求められている、という
報道ってありましたか?「心のケア」が求められていて、
実際に行われているそうで、実施しているのはストレス度に
応じて臨床心理士だったり、各地から駆けつけたボランティア
だったりだそうですね。
これは、専門家から見ると問題があることなんでしょうか。
素人ながら、「現場情報の流れをよくすることとか、被災者どおしの交流を促進して軋轢を回避することなどの仕事」が
「そんなこと」というのは少々疑問に感じるところです。
ボランティアに関わっているので、ご教示いただければ
幸いです。よろしくお願いします。
投稿者 BB : 2004年11月07日 02:07
そういえば、自分はうつかもしれん、と思って近所の心療内科の門を叩いたら見事に先生に何も言うことがなかったことはありましたね。実際には人間関係とか自分についてかなり悩んでいたと思うんだけど、話を聞き出す技術がうまい人が先生なのかと思ったら、そんなことはぜんぜんなくて、うまく自分の状態を説明できずに「あなた、なにしにきたの」とか言われてたし(笑)。心療内科の先生をスーパーマンみたいに思ってたのかも。
実際に自分のことがわかっていないと、初対面の人に症状を話すのは難しいし、わかってたら、病院にいく必要もないですよね。「こころのケア」って言ったら世間に対して「ちゃんとケアしてますよ」っていうアピールになるからそういう話題性のある人を対象にしてそういうことをやってるんですよね~。
投稿者 akirin : 2004年11月04日 23:53
…というわけで、
気にかかるのではあるけれど、突端から精神科の門を潜るのにはちょっと抵抗がある、とかいった時にはお気軽に心療内科の扉を叩いて頂きましょうか。
そこへの通院治療で完治するならそれに越したことは無いし、より深刻な病状であれば改めて専門医の紹介を求めましょう。
とにもかくにも
「5セント頂きます」(笑)。
いえ彼女のアドバイスも大層実用的ですが。
投稿者 小狸工房 : 2004年10月30日 20:16
かなり利便性の高い街角の心療内科でパートをするようになって気付いたのは,
統合失調症の罹患率は,成書に書かれているより,かなり,多いかもしれない,ということだ.
また,抗うつ薬の効果が,数週後に発現するという事実から構成された神経薬理学的仮説も,いささか怪しいのではないか,と思うのだが.
今まで,研究者が見てきたものは,偏った母集団に基づくものかもしれない.昨今の精神医療の変化,大衆化に,研究者はついていけていない.
投稿者 同業者 : 2004年10月30日 20:11
自分で「心療内科」を掲げている診療もやっている身としては、ちょっと肩身が狭い思い。要は、内科疾患にともなうちょっとした不眠とか、抑うつを拾い出して「通院精神療法」で不労所得を得るという戦略ですな。
某Q大の池○サン派のように、内科疾患に無理やり向精神薬を併用するだけの限りなく「と」に近いところもあるようですが。
でも、現状で総合病院や街角のクリニックで精神疾患を見るためには結構有効な方便ではあるわけで…。もちろん、そう自覚していればのこと。精神科を標榜すると、テナント貸してくれないということもあるので。
投稿者 webmaster : 2004年10月30日 18:12
このテーマ,しつこく投稿.
「心療内科」って何するの?
と,ときどき聞かれるが,一体何しているのだろう.
カウンセラーよりも,さらに分かりません.
「心療内科,精神科,神経科」のそれと,
「産婦人科,内科,皮膚科,心療内科」のそれは,
その欺瞞度において,違うと思うのは,
私が精神科医だからだろうが,
「心療内科」一本だけ掲げている診療所は,
却って,気骨を感じる.
投稿者 同業者 : 2004年10月30日 02:27
同業者です。全く同感です。
ただ、極々少数ですが、PTSDやASDの治療という、医療保険上、あまり点数にならない(つまり病院経営上採算に合わない)分野の患者ばかりを、精神科医の指導のもと、診る(?)ことを専門にしている臨床心理士はいて、そういった仕事はさぞたいへんだろうなぁという感慨を持ったことがあります。もちろん精神科医でもそういう人はいますが。
2歳の子についても全く同感で、昨日ニュースを聞いたとき、「えっ?精神科医がなにすんの?」と思いました。知らないおじさんやおばさんが白衣着て語りかけたらその子にとってきっと怖いだけですし(苦笑)。普段行っていた保育所があるとしたら、そこの保母さんに来てもらうほうが全然生産的だろうと思いました。
投稿者 werewolf : 2004年10月29日 12:57
「5セント頂きます」(笑)。
まんま新聞の「身の上相談」ですね。
Y新聞では相談内容に応じて、作家、大学教授、弁護士、精神科医などの人材が比較的実用的な解答を下さいますが、実際は相談者の問題意識を整理統合して現実的な行動を促す場合がほとんどです。
多いのは「あなたが何にお困りなのは良くわかりましたから、まずは最寄の心療内科に」ですが、現にどうしていいのか分からず途方にくれている人が多いのも事実ですから。
日常のレベルではちょっと気がつかない危機ですね。その結果悪化させていることもありますから、こうして背中を押されるのも良かろうかと思います。
具体的には生活環境の激変が原因であろう感覚障害などですが。
そもそもその肝心な「ちょっと気の効いた行政関係者」が皆無なのでは?と突っ込みたくなります。
こうした局面だと行政方面の知識が要求される場合も多そうですが。
投稿者 小狸工房 : 2004年10月29日 03:40
三方一両得
①医者の丸投げ
②高時給アルバイト
③ハイソな感じ
共同幻想ですか
一度体験すると幻想はガタガタと…
投稿者 同業者 : 2004年10月29日 01:48
>「カウンセリング」というのは一般言語化しているが、
以下の行は、刮目の思い。
やっぱりそーですよね。
どうもカウンセラーって人たちが良く判らなかったけれど、判らないわけだ。彼らはカウンセラーじゃなくて、その手の「カウンセラー」だったんだ。
PTSDについても同感。
何か、全くトラウマの無い、コンプレックスの無い人格が求められているような気がするけれど、そんな人格の方が異常な気がする。
投稿者 ぼうふう : 2004年10月29日 01:42