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2004年11月17日  インフルエンザワクチンをめぐる攻防 [医学・科学関連]

たまにはまじめな話を。

毎年この季節になると、各医療機関には「インフルエンザワクチンはじめました」というチラシみたいなのが張り出される。昔子供のころ、駄菓子屋に「カキ氷はじめました」とか、「関東炊きはじめました」(注:関東炊きとは「おでん」の関西呼名。いまは関西でもおでんと呼ぶようになった)というのが季節になると張ってあったものだが、それを思い出して感慨にふける。もしかしたら、新しい季語として歳時記にのっているかもしれないと思う。

インフルエンザワクチンというのは、ほんの10年ぐらいまで小学生全員に接種されていたが、副作用の問題などもあり次第に受ける人がいなくなり、いまは一律接種は中止されていて、希望者だけが受けるようになっている。おかげで保険適用もなく、言い値をつけることが出来るから、医療機関によってかなり値段が違う。一部では一回5千円ほど取るところもあるし、2千円程度の控えめな値段のところもある。

製品は同じところが作っているので、元値は同じである。たしか1バイアル1ccが2000円足らずであったと思う(1000円だったかなぁ?)。大人の接種量は0.5ccなので、希望者がうまく偶数で来てくれれば一回2000円でも十分元がとれる。レストランなどの原則、原価の3倍というのを取れば、多くの医師会が協定価格にしている3000円というのが妥当な値段かもしれない。

小さな子供なら0.2ccか0.3ccなので、1バイアルで3人から5人打てることになり、患者がどんどん来るところならかなりボロイのだが、一部の医療機関は「子供だから高度の技術と観察が必要」といって、大人より高い値段を設定していたりするから、この業界は口先商売の世界だといえる。某知り合いなど、「おかげでこの冬もBMWが買い換えられる」とホクホクである。

それは兎も角、一番重要な点ははたしてこのワクチンという奴は有用なのか、少なくとも害はないのか、という問題であろう。しかも、それにそう決着がついているわけではないというのが困ったところなのである。この点に関しては、前橋市医師会が1987年に発表した「前橋レポート」というのが、以前から一部でくすぶっていた「無効」論の先陣を切ったことで知られる。ただ、これは学術雑誌に出版されなかったこともあり、その調査方法、分析手法についてはかなりの批判があるのは事実である。(こちらに転載あり。PDFでのダウンロードも可能)

ところがここ何年か、インフルエンザ脳症や老人施設での集団感染などについて、意図的なまでの報道があいついだこともあり、任意接種の数はどんどん増え、かって学童に強制接種していたころよりも使用量は増える傾向にある。厚労省の研究班は幼児への接種についても有用という研究結果をだし、小児科学会もそれを受けて推奨するという意見を表明している。厚労省の研究結果を示せればいいのだが、以前見た覚えがあるのにどうにも見つからないので、前橋レポート批判の急先鋒論文(PDF)を紹介しておく。

お前の意見はどうなんだといわれたら、希望する人にやめるようにと説得こそしないが、自分からは勧めないし、もちろん自分でも受けないし家族にも受けさせない、というところだろうか。高年齢者のハイリスク群で、そうはっきりした効果があるわけではないことを理解してくれたら受けてもらうという程度。悠々自適の老後をすごし、はやりのインフルエンザでころりと逝く、なんて素敵な死に方だと思いますがなぁ。まして病気でもない人に、針さして通過儀礼みたいなこと強いる趣味はおまへん。まあ、BMWが手に入る立場ならやらんでもないが。

投稿者 webmaster : 2004年11月17日 21:42

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コメント

小狸工房さん

むしろ逆で、日本ではあまりにワクチン副作用が騒がれすぎている印象ですね。私が言いたいのは副作用ではなく、「本当に効果があるのか」という話です。webmasterさんとは異なり、私はインフルエンザワクチンの副作用は無視できるほど少ないと思います。かゆいとか痛いとか、アレルギーとかは別です。これはあらゆる薬でおきますから頻度によりますが、そう多くはありません。むしろ痛み止めの注射を打ってくれよう、と言ってくるおじいさんがいますが、その注射はかなりの頻度でアレルギーおこします。場合によっては死にます。ほんとに。

MMRワクチン(はしか、おたふく、三日ばしかの混合ワクチン)なんかは効果は立証されていますが、副作用に関するヒステリックな反応が起きたため、日本では摂取が義務づけられていません。日本の厚生省は、科学的効果より主婦の感情を優先しました。まあ日本人という人種を考えると妥当な判断かもしれませんが、先進国でMMRワクチンを強制的に接種しないのは日本だけですね。

麻疹なんかかかっても死なないし、おたふくなんて一回はやんなきゃね・・・なんていう話もありますが、麻疹は数年後にSSPEという不可逆な脳疾患を引き起こす可能性がありますし、おたふくは男性の性機能を廃絶してしまうことがあります。ワクチンを打たなかった人々で野放し状態になるのみならず、ワクチンを打った人の抗体価が落ちてきた頃、流行するウイルスがその成人に感染します。最近の成人の麻疹の流行はしばらく続いています。これも日本だけの現象です。

ひとつひとつ、確実な議論をすべきと考えます。

投稿者 Aspirin : 2004年11月22日 02:47

いつもたのしく拝見させていただいております。
ちょっと気になった点がありましたので、コメントさせていただきます。
現在インフルエンザワクチンは、国内では4社がそれぞれ製造しており、インフルエンザの株の種類や抗原量は、各メーカー同じですが、保存剤などの添加物については、各社差があります。

投稿者 nao : 2004年11月21日 01:13

いわゆる「スペイン風邪」以来の過敏反応でしょうか。
インフルエンザの流行によってもたらされる経済的損失とを比較すればワクチン摂取の弊害のほうが軽く見られる時代も過ぎましたか。

私が中学生の頃、理科の担任教諭がふと遠い目をして
「いずれ予想された型とは違うウィルスが流行すれば意味は無いのだけどね」
と漏らしていました。

投稿者 小狸工房 : 2004年11月19日 22:29

 接点はマラソン?
 めったに会われることのない 小児科のK先生と最近会われた場所は『横浜』でしょうか?
 ということは 先生は最低10キロ 多くてハーフのランをされたことに なりますね。
 

投稿者 藍 : 2004年11月19日 20:52

どうでもいいっちゃいいんですが、バッハの作品番号は、

BWV
(Bach-Werke-Verzeichnis)

です。

投稿者 風鈴’ : 2004年11月19日 08:58

たしかに、子供はどうなんでしょうか。わたしは内科なのでよくわかりませんというのが本当のところでございます。今年の1-3月は、子供のお母さんに「今回のワクチンは外しているかもしれませんねえ」と連発してたら小児科の先生にキレられました(実際外れたという評価のようですが)。いやもうちょっと頭使っていきましょうよみなさんてとこです。外れることもあることを正直に伝えないと、絶対効くかのようなワクチン商法は、僕も好きません。

投稿者 Aspirin : 2004年11月19日 03:34

あ、間違えてる。あまり縁がないもので。

高齢者へのFLUワクチン接種に効果があるというのは確かにそのとおりなんでしょうが、いわゆる臨床的実感とはかなり乖離していると感じます。エビデンスなんかないけど。

一番の問題は、そういう明白な効果が出ているなら接種対象に高齢者を優先するべきであろうと思われるのに、実際はそうではないことですね。本音と建前がズレすぎているように感じます。

投稿者 webmaster : 2004年11月18日 22:37

重箱ですけど、BMVってバッハの作品目録だったような気が。

投稿者 たぬ : 2004年11月18日 11:33

インフルエンザワクチンと新しい肺炎球菌ワクチンについては決着がついているものだとばかり思っておりました。老人と医療従事者限定ですが。

Vu T et al. A meta-analysis of influenza vaccine in persons aged 65years and over living in the community. Vaccine 2002; 20: 1831-6.
Govaert TM et al. The efficacy of influenza vaccination in elderly individuals: a randomized double-blind placebo-controlled trial. JAMA 1994; 272: 1661-5.
Treanor JJ et al. Protective efficacy on combined live intranasal and inactivated influenza A virus vaccines in the elderly. Ann Intern Med 1992; 117: 625-33.

投稿者 Aspirin : 2004年11月18日 01:13