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2004年11月28日  文学刑事サーズディ・ネクスト<1> [本とか映画とかTVとか舞台とか]

文学刑事サーズディ・ネクスト<1>ジェイン・エアを探せ!」(ジャスパー・フォード:ソニー・マガジンズ)という少々変わった小説を読み終える。強いてジャンルを当てはめるとSFと言うことになるが、そういう分類を超えたレベルの「娯楽小説」と言うのがふさわしい。物語は我々の住んでいる世界とは違う時間線上にある、20世紀終盤のイングランド。その世界では100年以上前からウェールズが社会主義国として分離独立しており、帝政ロシアとの間でクリミア戦争が130年間泥沼状態にある。

すでにその世界では時間旅行が可能になっていて、クローン技術などのバイオテクノロジーも進歩しているのに、なぜかマイクロチップは発明されておらず、ジェット飛行機もない。そしてその世界で、最大のエンターテインメントとなっているのは「文学」なのである。子供は文豪カードを交換し合い、街角には古典作品の一節を聞かせるコイン式マシンがあったりする。

初版本や肉筆原稿はとんでもない高値で売り買いされるので、犯罪組織は巨利を稼ごうとして贋作や違法出版に手を出してくるため、文学関連の犯罪行為を取り締まる特別機関が存在し、それが女性主人公サーズディ・ネクストが属するスペシャル・オプス27局、通称リラテックというわけだ。彼女はクリミア戦争に従軍歴があり、無謀な作戦でかろうじて生き延びるが、その時兄を失い、恋人が重傷をおったという心理的重荷をしょっている。

その世界にアシュロン・ヘイディーズという稀代の天才的犯罪者がおり、こいつがサーズディが大学時代の教官であったという経緯があるものだから、彼女はスペシャルオプスの別部局、どうも手に負えない犯罪者を追跡・密殺するのが任務らしい、に借り出され、そこで反撃にあって部局員は殺され、彼女も重傷を負い、リラテックに戻った彼女は官僚機構と戦いながら、ヘイディーズへの復讐をもくろむというのが大筋。

ヘイディーズは触っただけで分子構造を変えたり、自由に姿を変身させたり消したりというような超人的能力があり、それを利用して文豪の肉筆原稿を盗み出し、本の中に入りこむ発明品(それを作ったのがサーズディの叔父、マイクロフト(ママ)というのは、ちょっとご都合主義が過ぎるような)をつかって古典作品の根本的書き換えをはかる。超能力者の犯罪にしては、古典作品を人質(登場人物を殺してしまったりするのだから比喩ではない)にして、もくろむのが恐喝というのがちょっとナニ。

はじめはディケンズの作品が盗まれ、続いて狙われるのがシャーロット・ブロンテの「ジェイン・エア」である。ヘイディーズはジェインを物語から誘拐し、一人称小説を成立できなくするが、サーズディはジェインを助けて一緒に物語に入り込み、先に潜入しているヘイディーズとその中で対決する……、という話。

引用されるシェイクスピアやディケンズ、ブロンテの小説に通暁していないと面白くないようにも思われるかもしれないが、雑学的にうまく処理されているので、まるきり内容を知らなくても充分面白いし、なにより主人公自身をめぐる物語が適度に引用作品と重なり合う構造を持っているので、重層的な感覚を楽しめるのがミソ。

この小説でわかったこと:「ジェイン・エア」は「嵐が丘」とは違う話である。ふつう、ブロンテ姉妹というけれど、二人は別に共同執筆で小説書いたわけではないんですなぁ。

さて、この第二作目「文学刑事サーズディ・ネクスト<2>さらば、大鴉」も買ってあるので、早速それに取り掛かろう。ポーの詩なんて読んだこともないんだけど。

投稿者 webmaster : 2004年11月28日 23:12

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