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2004年12月11日  足のほてり [医学・科学関連]

精神科の臨床だけをやっているとまず気づかないが、私みたいに多少はプライマリィケアに関与していると気になるひとつの訴えがある。それは高齢者にしばしば見られる(若い人にもたまにあるが)「手足のほてり」という症状である。例えば今日来た患者さんの訴えを再録すれば、その人は5年来このほてり感に悩まされていて、夜寝るときなどはフトンから足を出して温まらないようにしているのに、夜半にほてりで目覚めるのであまりに気持ちが悪く、台所の板の間にいって裸足で立ち、足を冷やすのが毎夜なのだという。

これを今までかかった医療機関に訴えてきたのだが、医師たちは誰一人それに関心を寄せてくれなかったのだそうだ。「足が冷えて困る人からすれば余っ程まし」といわれるのが精一杯、大概「は?」で終わってしまうそうな。「こんなにつらいのに、『冷えないよりましですよ』といわれるんです。何とかなりませんか」といわれるのだが、確かにこれは難問なのだ。実際こういう訴えを持っている人がいれば、まず医療機関で相手にされなかった経験があるはずだ。

漢方の概念ではこれは血行不良症状の表れとされる。手足の熱を体の中に運ぶ血流が不足している、という理屈である(手足の熱ってなんだよ。大体、運んでいった熱はどうなるんだ?なんて疑問はなし)。冷えのほうは、血流が悪いので手足に熱を運べないのだという言い方になる。どう見ても、ああいえばこういうという屁理屈なのだが、西洋医学がある程度この症状を受け入れてくれる場合も、、これを援用する場合が多いようだ。漢方医学は言うならば根拠なしの実体的屁理屈体系なので、この手の説明論理を見つけてくるのは易しいのである。

カモシカはなぜ早く走れるのだ?→それはひづめが割れているからだよ。→牛ははひづめが割れているのに遅いではないか。→割れていなければもっと遅い。大体、これと同じような「論理」が使われている場合がほとんどだと思っていただいて、まず間違いない。いくら理屈でごまかそうと、そこにある種のパターン化された訴えがあるのは事実なのだが、正直言ってこの訴えで日本のどこの病院にいっても、まず相手にされないし、当然改善も望めない。週刊誌を読んでベスト病院なんか見つけても、少なくとも「足のほてり」を相手にしてくれて、それを治療してくれる医療機関は絶対無いことを保障してもいい。

現にそれがある人はどうすりゃいいんだよ、といわれるかもしれないが、なんせ専門医ではない立場、偉そうなことはいえないのである。普通こういう訴えで受診すると血液検査とかABI検査をされて、コレステロールが高いの血管が硬いのといわれるが、その薬を飲んでもまず絶対に症状が改善しないのが面白い。お前はどうしているんだといわれると、これはやはり同じようなことをしているわけだが(無駄とは知りつつ、多少の検査でもやらないと商売にならんので)、抗不安剤やある種の抗うつ効果のある薬が効果があることがまれにあるのが不思議なところ。

漢方みたいな屁理屈を考えると、血流低下で末梢神経の機能が過敏になるのだろうという推測になり、あくまで推測であることをことわりつつもそういう説明しているが、結構受け入れてもらえるようだ。もちろん推測なんですけど。一般的な医療の場合、血管拡張剤とかビタミン剤を処方されるのがほとんどで、しかもまず効くことはないのが普通。ところが、なぜか先ほどの抗不安剤+抗うつ効果のある薬(私の場合これはドグマチール®ということなんだけど)がそこそこ効くので、かなりの割合でこの「足のほてり」患者を診ているわけですわ。

正直いって、こういう学術的根拠なしに患者側の評価だけでたくさんの症例を見ているのも多少不安なので、どちらさんか、まじめな基礎研究込みでこれを検討していただける人が出てきてくれればホントにありがたい。もちろん、自分でやってることをインチキだと思ってるわけではない、つもり。

投稿者 webmaster : 2004年12月11日 22:10

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コメント

精神科医が身体科医にくらべて唯一もっているアドバンテージというのは、症候を現象学的にとらえる能力ということだと思ってます。

それなのに、DSMみたいなものが横行して、せっかくのアドバンテージを捨てているのはいかんなぁというのが私の意見。DSM分類で診断して、EBMで投薬してりゃいいんだったら、精神科領域なんて内科医の片手間仕事で充分ではないかしら。

投稿者 Webmaster : 2004年12月13日 09:09

手足がしびれる,なんていうのも,ドグマチール+マイナーで有効性が高いようですね.喉頭異常感もそう.その他,自律神経症状+心気傾向の人は,あまねく,有効な組み合わせですね.統合失調症の人の執拗な心気症状には,セロクエルがかなり著効.抗うつ薬の疼痛緩和効果も,最近は周知の事実になりつつある.耐えられない下肢の冷えに,ルジオミールが著効した経験があります.

以前,心療内科という標榜科の欺瞞性について書きましたが,経験のある精神科医が,プライマリーの意味で,心療内科を掲げる場合は,大賛成.

投稿者 同業者 : 2004年12月13日 01:13