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2004年12月18日  こんな医療を受けている人もいる [医学・科学関連]

かなり前から、外来で見ているうつ病のおばさんがいる。あちこちの病院を遍歴してさっぱりよくならず、今はそこそこの安定を得ているものだから、私に対して分不相応の帰依を示してくれているのが、かなりわずらわしい面もある人である。その親戚が某有名病院で難病治療を受けているのだが、どうにもつらいので一度見てくれといわれ、専門領域でもないのに見ることになってしまった。

患者さんは50台中ごろの女性で、2年前に自己検診で左側の乳がんを見つけ、その人が暮らしている街では一番の大病院に受診し、すぐに手術を受けたのだそうだ。医者の言うにはまだ初期だが、念のため根治的な手術をするべきだということで、最近ではむしろ珍しいハルステッド術式(乳房全切除にくわえ、同側大胸筋もとってしまう方法)を受けた。さらにその上、「念のため」抗がん剤の投与と放射線療法も加えて、数ヶ月の入院の末ヘロヘロになって退院したのはいいものの、退院後初めての経過観察で手術部位の再発を宣告されてしまったのだと言う。

医師はそれを見るなり、「あ、これは抗がん剤の追加です」といい、またも外来での抗がん剤投与が始まった。手術時にホルモン療法の効果やモノクローナル抗体抗がん剤の投与の是非を判定していなかったとのことで(これのすべてに関しては保険医療では再発時にしかやってはいけないことになっているそうで、遵法精神にあふれている医療機関はそれをやらないそうだ)、いまさら生検をやってまでそれを確認しても仕方がないといわれ、一般的抗がん剤の無差別順繰り投与をすることになった。

それをやるたびに全身の毛が抜け、体調は最悪になったが「癌をやっつけるため」といわれて我慢していた。しかし、それにもかかわらず、右頚部のリンパ節と左腋窩のリンパ節に転移が8ヶ月目に発見され、我慢できない痛みが出るようになった。そこでモルヒネ製剤が投与されるようになったが、「一日2回2錠ずつ飲め」という医師の指示では嘔気と嘔吐が激しくなるため、時間を置いて1錠ずつ飲んで痛みをしのいでいたら、医師は「言うとおり飲まないならモルヒネは出さない」と言い出す。「そのうちモルヒネには慣れるんだ」との御宣託である。

痛みは激しいわ、医者の言うとおり飲めば吐いてしまうわで、兎に角我慢するだけにしていたそうな。最近は左上肢のむくみとビリビリした痛みも加わり(多分、左腕神経叢あたりへの転移であろう)、とてもつらいのだがそれを訴えると「モルヒネを言ったとおりに飲め」だけ。「吐くのは慣れてないだけだ」で終わりにされてしまうそうだ。なんとか、主治医には内緒で今の苦しみを改善することは出来ないかというのが主訴である。

そんなもの、もっとまともな癌専門医を見つけろよで済ましたいのだが、田舎の大病院で実力もないのに傲慢さで無能をごまかすアホたれ医者はたくさんいるわけで、なかなか思うようにならんだろうと考え直し、自分で出来る範囲でこの人の苦痛を除去する手伝いをする決心をする。モルヒネの使用法を説明し、必要に応じてこちらでも副作用の少ない疼痛コントロールを提供することにする。

でも、念のためCTをとったら肺にたっぷり転移と胸水が見られた。主治医はかなりえらそうなことをいう割りに、あまり経過をちゃんと観察しようとせず、CTとったのも久しぶりなのだそうだ。主治医にしてみれば、「標準的治療はしてやったんだから、後は文句言わずにおとなしく早く死ねよ」というところなのだろう。もちろん、本人には言わなかったが。

こんな医療を文句もいわず受けている人もいるのだな、偶然の結果にこだわるバカなマスコミの論調には以前から頭に来ているのだが、こういう医者こそ訴えられるべきだと、自分には似合わず義憤にかられてしまった。一応、私の乏しい知識を総動員し、吐き気や疼痛管理を約束したのだが、60%はこれが最終受診になるのだろうなと思いながら、次回年明けの来院を予約したのであった。

投稿者 webmaster : 2004年12月18日 22:51

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コメント

 12月22日付 読売新聞 医療ルネサンスの記事の中で 先生が書かれたこの記事と同じ 内容の記事がのせられていました。題は 《病院の実力》http://www.yomiuri.co.jp/iryou/renai/20041222sr11.htm
 この記事の反響は 大きく 再度 今日とりあげられることになったそうです。
 抗がん剤の副作用等で悩まれている方は 多いようですね。
 

投稿者 藍i : 2004年12月22日 11:45

 12月17日 末期の肝臓癌の患者さんが 病室内で 2人の同室の患者さんを殺し、看護助手を刺して重傷を負わせる事件が発生しましたね。
 この 入院中の末期がんの人には 精神的な何らかのケアーが必要だったのですね。 ゆっくりと話を聞いてくださる先生のような人が。

投稿者 藍i : 2004年12月21日 15:11

始末に悪いのは「中途半端にエリートの自負のある」層でしょうか。
独善的診断に基づく医療ミスをこれまた独善的に断罪する医師の図もありましたし。このケースでは一方的に相手のミスをあげつらうのではなく、やんわりと受け止めつつ患者への負担を減らし相手医師の技量向上を図る方向で展開して欲しかったです。

と言いつつ何のジャンルの何の仕事でもこうした光景は見られるものですが、とりわけ医療の世界では人命にも関わる作業でもあり社会的にもクローズアップされることが多いですね。
真剣に「できる」実力のある人種でしたら、指導する側もされる側もより真摯に振舞うものではありますが。

なんて悠長なことも言ってられないかな。

投稿者 小狸工房 : 2004年12月20日 01:15

↓ 控えめに同意します。

投稿者 Aspirin : 2004年12月20日 01:14

こんなこと言うと物議をかもすかもしれませんが、「出身大学の偏差値と、医療に対する真摯な態度はほぼ比例する」というのが私の経験です。もっともどこの医学部でも、トップ10人ぐらいの能力は東大であれUCLAであれ、ほぼ同じようなものですけど。

努力してエリートコースを歩んできた人は、やはりそれだけ洞察能力が高いし、なにより自分の足らないところを自省するゆとりがあります。

正直いって、マニュアルを丸覚えするのが精一杯というようなトロめの医者に、適切でかつ人間味のある医療なんか絶対出来ません。「患者とともに歩む」とはいうけれど、例えば山登りのガイドが、素人の客と同じレベルで息切らしながらよたよた一緒に歩くような人だったら、その人に命を預けられますかね?

マスコミの妙なエリート像は困ったもので、あんたらが医療を受けるときは、カンニングや裏金で誤魔化してきた落第生の医者だけに見てもらいなさいね、といいたいほど。

投稿者 Webmaster : 2004年12月20日 00:23

藍iさん

それは、そのマスコミが好きそうな典型的エリート像を体現したかのような研修医(そんなやつは見たことがありませんが・・・)が悪いのではなく、そんなことが相次いでいるのに研修医に対する上級医の介入をしない病院の方が悪いんじゃないですか。研修医と言うのは大学を出たての新入社員です。エリートもへったくれもありません。ミスなくこなせると考えるほうが頭がどうかしています。

投稿者 Aspirin : 2004年12月19日 23:45

五十台半ばの女性ということ、まだ お若いのにね~。癌ってこわいですね。
 さて、私の聞いた話ですが ある大都市の大病院で医療ミスをおかすのはいつも 某超有名国立大学の医学部を卒業したての研修医で、そのため その大病院の院長はいつも マスコミにおわびの出演をしなくてはならないそうです。 
 中学高校もエリートで過ごし、医学部在学中も問題なく過した青年達が 先輩の先生方や 看護婦さんたちに細かいことを聞くことなく 独断で さっ―とやってしまったことが 後で問題になっていくそうです。  
 某有名大学医学部を卒業された人達は どうも ベテランの看護婦さんよりも 偉いと思い込んでしまうのが 例年の事らしいですよ。  

投稿者 藍i : 2004年12月19日 21:02

まったく同意します。マスコミは攻撃する対象を間違えてますよね。

投稿者 Aspirin : 2004年12月19日 12:42