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BMJの最新版を読んでいたら、"Minerva"という医学情報四方山話みたいなコーナーの一段落に、「しゃっくり」の治療で苦労する話が書かれていた。さまざまなやり方を試したが全く効果がなく、昔からの言い伝えにしたがって、「酢を飲ませる」という方法で改善したというものだ。
この「しゃっくり」というのは、診療科にかかわりなく対応を迫られることが結構多い割にはあまり関心をもたれない。一応スタンダードだとされているやり方も知らない医者が多く、何をやってもよくならないのに業を煮やして、「どうせ死にはしないから」などといって知らん振りする奴までいる。そりゃ、検査したって異常値は出ないしね。
ネットを調べるだけでも、あまりまとまらない医学的な対応から民間伝承までがほとんど同じ比重で見つかるので面白い。少なくとも私が標準的対応として教えられたのは以下のやり方で、ラッキーなことに今までのケースではすべてこれで何とかなった。普通は(1)プリンペラン(吐き気止め)の静注。それでダメなら(2)コントミン(抗精神病薬のクロールプロマジン)を少量の生理食塩水にといて点滴。最近、クロールプロマジンの注射薬は発売中止になったらしいけど。それでもダメなら(3)キシロカインを1mg/kgで点滴。というようなところが救急の初歩で教えられることである。私らは向精神薬なら平気で使う癖が出来ているから、まずこの(2)のところで大胆に薬を使うので何とかなるのであろう。
大概の当直医は、筋弛緩すればいいと言う発想から、まずはじめにセルシンを打つという安易なことをしてしまうが、これは呼吸が止まるぐらいの量を打たない限りまず効果はなく、普通の投与レベルでは抑制が取れるためか、余計に症状が激しくなるものだ。同じ系統の薬でてんかん治療に使われるクロナゼパムを使うという手もあるらしいが、そう画期的な効果があるとは思えない。それはもちろん、全身麻酔を使えば完全にしゃっくりなんか止まってしまうが、「牛刀をもって鷄を裂く」の感が強いのと、醒めるときに元の木阿弥になる事があるのが難点。ブスコパンみたいな腹痛に使う鎮痙剤は、教科書には有効と書いてあるが、実際にあれがしゃっくりに効いたのは見た事が無い。
BMJにも書かれていた、少量の酢を飲むというのはかなり効果があるように思う。救急車を呼ぶぐらい困り抜いたしゃっくりに襲われたら、ダマされたと思って試す価値がある。一般的な「息詰め」、およびそれを促す一連の動作、例えば頭を下にしてコップの向こう側のふちから冷水を飲む、なんてやり方は世界中の伝承になっているらしいが、パニックになりがちの状況で、冷静さと息詰めを同時に促すという先祖の知恵であろう。もちろん、ビックリさせるという手もある。でも一発勝負だから難しい。その目的で友人を銃で脅し、射殺してしまった人もいるらしい。多分しゃっくりはきれいに止まっただろうが。
「柿のへた」を煎じて飲むというのもよく効くらしく、昔同僚だった内科医が薬局に「柿のへた」を常備するように要求し、薬剤師からそんなものどこの製薬会社から買えばいいんだとこぼされて参った事がある。でも、しゃっくりが続いている人が受診してきたとき、悠長に柿のへた煎じている余裕はないような気もするが。
しゃっくりで注意すべきものは、まれに横隔膜直下の肝腫瘍とか膿瘍が横隔膜神経を刺激していることが原因のものが存在することだ。私でもその類のケースを2例ほど見た事があるのだから、これは結構多いのかもしれない。真摯に相手の苦痛を解決する姿勢ががないと、医者が好きな「早期発見」も出来ない訳である。たかがしゃっくり、されどしゃっくりというところであろうか。
投稿者 webmaster : 2005年01月18日 23:53
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柿のヘタは確かに効果ありますよ。
投稿者 nao : 2005年01月22日 13:20
もうちょっと過激な手段として、氷酢酸を嗅がすというのはどうでしょうか。びっくりしますよ。この前間違えて嗅いで、死ぬかと思いました。
柿のへたの話ですが、確か芍薬甘草湯で代用できると聴いた記憶があります。消化器領域では、病的なしゃっくり→横隔神経を刺激する肝細胞癌はよく言われるTipsですが、経験が浅いせいか、私は診たことがありません。
投稿者 hanjuku : 2005年01月20日 04:06