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「愚か者死すべし」(原尞:早川書房)を読む。
日本を舞台にしたハードボイルドってのは、かなりのギミックを駆使しないと成立しにくいわけだが、この原尞の探偵沢崎を主人公にした連作は、そのあたりを直球剛速球の一本調子で攻めてくるという、ある種パラレルワールドSFの色合いすらある珍芸シリーズといっていい。
いままで3冊ほど出ているこの沢崎長編シリーズを私は全部読んでいるはずなのだが、なーんも覚えていないのは、それがまさしくこのリアル世界とは無関係な完全フィクション世界の出来事を描いたものであるからだろう。それもSFみたいに明らかな特徴がない擬似的同時代なものだから、ますます覚えて置きにくいのだと思える。なんてこと言いつつも、この手の本を読む誘惑には抗しきれないのが情けない。なんせ、ヒマだからねぇ。
さて、今回はこの国ではありえないハードボイルド倫理原則に凝り固まったタフな探偵が、頼まれもしない事件に首を突っ込み、警察以上の大活躍をする話で(もっとも、今回の事件ははじめから警察がらみなので、そこで彼ら以上の能力を見せないとストーリーにならんのだけど)、それも怪しい筋からいくらでも大金手にする機会があるのに、自分のルールをかたくなに守る原理主義をあくまで追求する話である。
今までの話を全然覚えていないので、前と同じかどうかは確証はないのだが、当然警察という大組織の鼻先をかすめて活躍するためには前もってのネタの仕込みというものが必要になるわけで、その辺はうまいことある種の「叙述トリック」を紛れ込まして処理しているのが見事というか、ルール違反というか。
でも、誰もが事件発端の記述で思いつく疑問を、無理やりミスディレクションするのがかなりミエミエで、あれ、なんでそっちのほうに話が進むのかいな、と思うのは避けられないのではないかな。あ、こりゃ一人称記述がトリックなんだと思うのも当然。ほとんどの人は結末もかなり見透かせるだろうし、事実そのとおりに収束してしまうのである。
そういうところや、いくらパラレルワールド系ハードボイルドであろうが、依頼に来た小娘が初対面の探偵に「あなたは……、十代のころの父に、暴力団に入れとすすめられるような年齢には見えないわ」なんて言葉を真っ先に言い出したりする、言語的不自然さはちょっとつらい。
でも、全体の筋立てには、昨年ちょっと話題を呼んだ警察プロジェクトX小説ともいえる、「半落ち」に対する嫌味が絶対契機になっているに違いないという、根拠もなければいささかネタバレ的な感想を覚えるのが、もひとつ不満ながらもあくまで好感の範囲内で読み終えられた最大の理由。
投稿者 webmaster : 2005年01月25日 22:43
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