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2005年02月28日  中津川無理心中(?)事件の怪 [ニュース]

昨日、岐阜県でおこった一家5人殺人+実行容疑者自殺未遂事件なんだけれど、こういうホットなことに触れるのは柄にはあわないと思うものの、何となくこういうことなのではなかったかと、考えることがないでもないので、ネタ切れ対策もあって書いてみる。勝手で無礼な当て推量になるのは避けがたいが、個別事情とは関係ないところでの一般的考察と言うことでお見逃しいただきたい。

私が注目するのは、妻が旅行にでる日を選んで準備していたと報道されていることと、飼っていた犬も殺しているという2点である。医療関連施設の事務長と言えば、反射的に「使い込み」と出てくるほど、業界的ストーリーで考えてしまいがちなのだが、今のところそういう話ではないようだし、犬を殺したという点で、不始末露見の恥を回避したという方向はないと思うのだ。

もし容疑者がそういう不始末をしでかしていて、年度末の監査かなんかでそいつがバレるという不安に怯えていたとして、犬を道連れにすることはないだろう。愛する家族を恥から守りたいという、えらく自閉的な論理があったとして、犬は関係なかろう。まして、妻がいなくなる日をわざわざ選んでいるのである。妻は守る対象でなかったってわけ?

私は最近、夫がもうじき定年を迎えようとしているという世代の主婦患者(もちろん、彼女たちが抱えている疾患はかなりのバリエーションがある)たちから、「夫が家にいるようになったら離婚する」という決意をよく聞かされる。マスコミでもよく取り上げられる熟年離婚というのは、ごく普通の家庭にかなり普遍的に存在する危機のようである。夫の価値観に縛られるのでなく、それなりに自分の生活を取り戻そうという、かなり切ない決意を持つ妻たちは数多い。

対する旦那連中というのは、こういう危機には全く無頓着で、家で濡れ落ち葉となっても、食事賄いと日常の世話は、今まで通りそのまま提供してもらえると思っているようである。妻たちは正しくも、自分たちの家内労働が夫の社会的成果の半分を支えてきたことを見抜いていて、社会価値をなくした相手に、いまさら忍従する意味を見つけられないのである。

夫たちには今の家族制度の常識の中で、逸脱をうまく合理化する道がたくさんあるので、と言ってせいぜい仕事への耽溺とか奇矯な趣味とか酒とか浮気程度ですけど、配偶者との価値観のずれを根本的に解決する手段を、そう真剣に考える必要はない。配偶者は自分の一部分なのであって、それ以上のものではないのだ。

それでも中には、自分の価値観を配偶者に強いて相手を服従させるほどの傲慢さには乏しい、細やかで優しい人もいるかもしれない。そんな人が自分の閉じた価値世界を独占しようとしたら、とる行動はそれらを破壊し尽くして、他者に触れさせないようにするということではないかなぁ、なんて考えてしまうのだ。

言うならば、配偶者との価値観のずれを自覚しつつ、相手にそれを強いることはできないので、お気に入りの相手なら殺してもいいと思ったという、いささか穴がありまくりの考察なので、まるきり固執はしない。でも、この「事件」を自分なりに了解しようとするなら、その辺をまず糸口にするだろうなと思うのだ。

ほかには、閉塞的な地域社会と、平均以上に有能な人の軋轢という視点で考えることもあるのだが、それはもう少し情報を得てからということで。

投稿者 webmaster : 2005年02月28日 23:57

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コメント

犬と妻…,そこが気になってしかたがなかったたんですが,“それらを破壊し尽くして、他者に触れさせないようにする” ってのですっかり納得してしまいました.ありがとう.

投稿者 三百代言士 : 2005年03月01日 15:42

 不思議な話ですね。
 家父長意識なら嫁に行った娘と孫は普通関係なさそうなものですけど。
 崩れかけた家父長意識と新しい価値観(家族とお気に入り者が入れ替わりかけている)の転換期、とか勝手に憶測してみました。

投稿者 ねこめし : 2005年03月01日 03:26

シャワーを浴びながら,この事件のことが頭から離れなかったのですが,だんだん背筋が寒くなりました.

愛娘が産んだ2人の小さな可愛い孫が居て,2頭の愛犬も警察犬に委嘱されるまでに育て上げ,はた目には理想の一家の家父長としての私.
しかし,放射線技師として,そして老健施設の事務長として幾多の生死を見てきたのち,これから老境に向かう私.既に老いて痴呆を現し始めた母.
しのびよる老い,そして死の影.丹念に作り上げてきて,そして完成してしまったものが,自分の手からこぼれていく感覚.
あらがいようのない時の流れ.それに身を任せることのできない自分.
恐怖で発狂する前に,自分自身の手で,今,永遠を手に入れるのだ… それしかない……

バブルの頃に,ゴッホのひまわりを一緒に棺桶に入れて焼いてくれと言った社長が居ましたね.

投稿者 同業者 : 2005年03月01日 02:44

家父長による家族の永遠の支配という超非現実的願望を実現させようと思ってしまったということでしょうか.
このかたの妄執的な強迫観念は,妻を排除しなければ,完全なるものにならなかったのでしょうか.
古今東西の犯罪史に同様のテーマが見出せるものはあるのかな… 
アングロサクソンの異常殺人事件は性的倒錯に基づくものがほとんどのようですが,この事件はとても日本的なものに思えてきました. 

投稿者 同業者 : 2005年03月01日 01:24