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まあ、何であれ久々の読書である。発熱が治まってからごろごろしているときに読んだので、ちょっと集中力が散漫だったが、それなりに楽しく読めた。ジョン・ダニングはアメリカの紀田順一郎とも呼ばれる(って、私がそういっているだけだけど)古本ミステリで知られる作家で、小説の筋立てとういうよりはむしろその古本蘊蓄とか、普通のコレクターとはまた違う狂気を秘めていることが多い古本収集家の生態を描いているところが実におもしろいのである。
主人公になる元殺人課刑事の古本屋、クリフには、今までの作品ではもう一つその性格付けがはっきりしないところがあったが、今回はその交友範囲に発端がある事件というのもあって、かなりその屈折もふくめた人格性が特徴づけられているようにも思う。そのぶん、蘊蓄の方はちょっと手薄というのが感想。
今回の物語は英国の探検家にして語学の天才、カーマスートラや千夜一夜物語の訳者として知られるリチャード・バートン(同名の俳優とは無関係)が、南北戦争直前にアメリカで謎の行動をしていたという、向こうではかなり有名であるらしい故事が事件とその謎の背景になっている。われわれだって、明治維新前夜のころ、志士たちがどこで何をしていたなんてことはけっこう興味があって、実際にそういうことを背景にした小説などは山ほど存在するのだが、その辺は向こうだって同じような事情なんでしょうな。
もちろん、米国人が坂本龍馬やアーネスト・サトーのことなんかまるで知らないように、われわれもR・バートンの細かな行動とか、南北戦争の直接の開戦契機なんてことは専門家でもないかぎりサッパリ知らんわけで、その辺に興味が持てるかどうかがこの小説への関心のすべてを決めるのは間違いないだろう。もっとも、もともとハードボイルド志向もそこそこちりばめてあったこのシリーズのこと、特に今回はロバート・B・パーカーのパロディかいなと思うような筋立ても見られたりして、合衆国の歴史講義につきあわされてはたまらんと言う部分ばかりではない。
580ページと、けっこう厚い文庫本だが、解熱鎮痛剤漬けのオカユ腹状態でも一日半で読み終えられたので、体調のいいときに巡り会えばもっと楽しめたのではなかったかなと、多少残念。
投稿者 webmaster : 2005年03月03日 17:11
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