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2005年03月04日  「精神科医を訴える」 [医学・科学関連]

どういう経緯か忘れたが、たどり着いたのが表題のサイトである。もしかして、一般論として精神科医なんてものは、正常と異常という、ある体制にとっての価値を基準にして人を選別しようとする度し難い権力の手先だ、というような昔懐かしい「反精神医学」の主張をするようなところかと読んでみたが、そうではないのだった。

このサイトの開設者は、自分の娘さんが「精神療法による医療過誤」を受けて死に至ったと主張し、その相手方の医師を告発しようとしているのだ。「精神療法による医療過誤」とはまた、それ自体形容矛盾みたいなもんだがなぁと多少呆然としつつ、いったいどんなことがあったのかとそのサイトを読んでみたのだが、なんというか、家族を失った方にこういう言い方はしたくないものの、人に自分たちの主張をするという目的なら、もう少し分かりやすい作りにしてもいいのではないかなと思えるものであった。

なにしろ、事実経過を示すものが訴状と、えらく短い新聞記事のよせあつめだけなのである。家族の立場で事実経過を書いても客観的でないと思われたのかもしれないが、それなら訴状なんてもっと一方的なものなのだから、それをはじめに持ってこられてもな、と思ってしまう。

新聞記事がそこそこの客観性を持っているとするならば、事件はおよそこういうことであった。22歳の女子大生がうつ状態のために都内の大学病院に入院して治療を受けた。主治医はカウンセリングを中心にした治療を行い、女子大生は退院したものの、その後の通院治療中に3回の自殺未遂を起こし、治療開始後5年目についに既遂に至ったというものである。主治医は「自分が恋人役を演じるという精神療法を実施して、患者と医師関係を逸脱させて病気を悪化させた」と両親は主張している。

これだけではほとんど何のことかわからないので、仕方なく訴状も読んでみたのだが、これまた断片的な事実関係と妙につたない精神医学的術語が入り交じり、日常世間はもちろん、当然法廷で通用するとも思えない代物である。ゴルァ!弁護士、これでいくらかすめ取ったんだ、この法匪野郎が!といいたくなるほど。その辺は仕方なく行間を了解的に読み取ってみれば、主治医は要はこの患者さん相手に、恋愛ごっこのような、本気のような、わけのわからん言動を本人の前で繰り返し、ただでさえ不安定な相手を混乱させまくったようである。

簡単に言えば、単なるヘタレ不適格医師が、若くて魅力的だった女性患者を相手に、自分のささやかな特権を利用して劣情を満足させていい気分になるばかりで、まるで治療的力量がなかったということである。それに対して「転移・逆転移現象を適切にコントロールする注意をせず」なんてぇ、つまらん(失礼)言い方で指弾するものだから、家族の当然のいきどおりまで、この主治医のヘタレ具合と同レベルにまで引き下げられたように見えてしまうのだった。

家族はそれで飽きたらず、河合隼雄みたいな、臨床とはまるで無関係の人間の言うことなどを引き合いにして相手を貶めようとするものだから、ますます「と」レベルの主張になっているのである。そんなもの、「治療的能力もないのにズルズルと患者を抱え込み、明らかに悪化の原因にすらなっているのにそれを放置した」といえば済むのである。入院の段階でケッタイなことを言い出したとき、「常識」で判断すれば、こいつは馬鹿だということぐらいわかるのではないだろうか。

馬鹿を馬鹿と断ぜられず、医学の幻想にすがってしまった無念さが家族を訴訟にまで踏み切らせたのであろうが、そこまでのパワーをなんで治療時に出してあげなかったのかと、かなり複雑な思いになる。正直言って、転移の逆転移のといって裁判に勝てるとはとても思えず、もしこの家族が娘さんの無念さを晴らしたいと思っているのなら、ざっと考えただけなのだが、順序は以下のようなものであろう。

(1)まず診断の正否を問い、その診断に対する標準的治療を行ったのかどうかを問う。
(2)被告医師のとった治療方針の妥当性について、その趣旨一貫性や文献的な根拠を求める。
(3)経過をどう評価していたかについての弁明を求める。
(4)以上についての被告側の注意義務違反、不作為を明らかにし、それによる損害賠償を求める。

誤解を恐れずに言えば、うつ状態で素人が考えるような精神療法だのが出てくる幕などないのである。自らの状態に対する客観的な把握をもってもらい、それに対する適切な薬物療法を行いつつ、今後の生活行動パターンの幾分かの組み直しを促すことぐらいがほぼすべてであろう。もちろん、それらすべてを適切にやったとしても、時には不幸な結果に終わることはあるものだけれど。

それは、なかなか治らない疾患を抱えたことへの自己憐憫とか、見当外れであることのほうが多い養育環境への恨み辛みとかを、適切に受け止めてうまく治療への意欲に持ち込む努力は必要だ。でもそれはわけのわからん人格操作とは全く別のことで、大体、日常言語のチンタラしたやりとりで人格の深部になど至れるわけがない。そのあたり、ヘタレの被告医師がありもしない自分の「精神療法」的力量を押しつけたのは当然度し難いのだが、まったく相似形の幻想に被害者である家族側まで浸っているかにみえるのが、この業界人として、まことに情けない思いがするのだった。

投稿者 webmaster : 2005年03月04日 21:04

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コメント

hi、
MyBlogにて、貴殿blogの文章を一部引用をいたしました。
MyBlog//spaces.msn.com/members/kokeko81skywalker

投稿者 sTinger : 2005年03月08日 00:41

パレートの法則に当てはめれば,2割はヤブということになります.もちろん精神科医だけの話ではありません.
ヤブかどうか,最初の段階で見極める努力を怠った結果は,自分自身に降りかかるのです.
ヤブ発見法は,webmaster氏も言われるように,「きちんと説明できるかどうか」と言うことに尽きます.
これは,説明を受ける側の能力も関わってくるのです.専門知識がなくとも,「常識」を働かせて,医者を見極めてください.ヤブには,ただのヤブと,言葉が巧みな,より悪質なヤブがいるからです.

投稿者 同業者 : 2005年03月07日 03:26

昔から「精神科医にヤブなし」という格言がありまして、いい精神科医というのは、患者を決して治そうとせず、ひたすら精神病院に収容し続けてくれる人のことを言ったのです。

その辺の感覚を、いまでも引き継いでいるとしか思えない人は、けっこう目にします。もちろん、一生懸命やればすべて結果が出るという領域ではないわけですが、正直に現状を患者家族に説明しながら治療を進めることはしないとイカンと思いますね。

投稿者 webmaster : 2005年03月06日 17:34

合わないからなのか、病気がひどいからなのか、医者がアホなのかなんてド素人で、お医者様は偉いんだ。と思ってる人からしてみればわからないじゃない?
逆に治療効果が5年経っても出ない医者は自分でこりゃいかん。と思わないのでしょうかね。患者の身になって考えれば、他の病院なり他の治療方法を考えるだろうに。
精神科に関しては、あの先生はヤブだとかそういう話は滅多に聞かないし、他の人に相談するのも憚られる感じだし。
両親のやり方に問題はあったのかもしれないけど加害者じゃないでしょう。未必の故意になりますか?

投稿者 とも : 2005年03月06日 15:18

合わない医者に5年も通い続ける事自体が信じられません。
両親も加害者だと思います。

投稿者 にう : 2005年03月05日 18:41