« 知事選挙 | メイン | Live Strong, but Do not Resuscitate »
ロシアの研究者が40年以上にわたって野生の銀ギツネを交配して、人間に慣れるように改良した。交配によって人間に馴化するようになったキツネは、若干の形質変化と、犬以上の能力を示しているのだという。(写真クリックで拡大)
この研究が始められたのは1959年、ソ連時代にさかのぼる。ノボシビルスクの細胞遺伝学研究所を創設したドミトリィ・ベリヤーエフは、犬が示す能力は遺伝的に定められたものなのか、訓練によって行動学的に獲得したものなのかを確かめるため、近縁種である野生の銀ギツネを捕獲し、人間に慣れやすい個体に次世代を残させるという方法でその変化を追った。外面的な行動パターンだけを選択の基準にしたわけである。
ベリヤーエフはその死までの26年間、この研究をつづけ、その後も研究は引き継がれた。現在、それを主宰しているのはリュドミラ・トルットという女性研究者である。彼らは「人間に慣れやすい」という一点に絞って次世代を残させるという遺伝子選択だけを行い、一切の訓練をキツネに対して行わず、接触も行動検査の時だけに限定してきた。
そうした40年の日々、四万五千匹のキツネたちを選択していった結果、トルット女史は従順で甘えん坊な100匹のキツネたちを得た。彼らは人間の表情を的確に読み取り、犬以上の賢さを示すという。「選択繁殖実験の結果、自然の中なら何千年もかかった過程が圧縮されたのです。私たちの目には、『野獣』が『美女』になったように見えます。祖先の荒々しい行動は消えてしまったのです」、こう彼女は記している。
行動上の変化だけでなく、馴化したキツネはその見かけにも変化が現れた。毛皮には白黒まだらが出るようになり、鋭く直立していた耳は柔らかくなった。しっぽも犬のように丸く巻き込まれるようになった。また、足が幾分短くなったかわり、体長は長めになってもいる。雌雄差がすくなくなったのも特徴である。性行動も早く出現するようになっている。また、脳組織には野生種と比べ、攻撃的行動を抑制するといわれるセロトニンが有意に多いことも観察されている。
トルット女史は、研究費不足を解消するため、これらの馴化された銀ギツネをペットとして市販することも検討中であるという。
--------------
以上、数年前のこちらの新聞記事と、今日のこちらの記事を適当に参考にさせてもらった。研究者の目論見にもかかわらず、キツネが一般的ペットとして普及していないのは、彼らが独特の臭いを分泌するのと、深い穴を掘って食べ物を隠す習性までは改良されていないからだとのこと。
一見、ほのぼのネタのように思えるのだが、よく考えるとこの研究はかなり危ない部分を秘めているのである。つまり、表面的な行動特徴だけを指標にして分離交配するだけで、種としてかなりの変化を導くことができるということである。同じような実験を、人間相手にやってみようと思う連中が現れないことを期待したいものだ。考えてみれば、ある種の「階級」ってのは、これと同じ理屈でできているのかもしれませんがね。ま、私は野生の銀ギツネで十分満足。
[reference]
"Social cognitive evolution in captive foxes is a correlated by-product of experimental domestication.";Hare B, Plyusnina I, Ignacio N, Schepina O, Stepika A, Wrangham R, Trut L.:: Curr Biol. 2005 Feb 8;15(3):226-30.
「40年の研究からペットギツネが誕生」「ユーラシア・ビュー」2004年6月22日号
投稿者 webmaster : 2005年03月13日 21:36
このエントリーのトラックバックURL:
http://med-legend.com/mt/mt-tbcba.cgi/376
とりあえず写真がすっごく可愛いです♪
今まで隠していましたが、ワンコやニャンコの話は大好きなのです。
投稿者 小狸工房 : 2005年03月14日 05:47
この研究自体はルイセンコが追放されて以降のもので、むしろ遅れてしまった遺伝研究をやろうという意気込みだったのだとおもいますが、なんせロシアのこと、息のながさというか、大地の重みに依拠したというか、独特のものを感じますな。
投稿者 webmaster : 2005年03月14日 01:07
旧ソ連では、犬と狼とを交配させた狼犬の研究も随分行われていましたな~。
犬の従順さと狼の勇猛さを兼ね備えた良いとこ取りの動物を作ろうと意気込んだ訳です。
しかし、実際に生まれる狼犬は、犬の臆病さと、人に慣れず獰猛な狼の性質とを兼ね備えた悪いとこ取りにしかならなかったとかw
しかも、世代を重ねる毎に犬に近づいてゆき、十数代も経ると犬と区別がつかなくなるらしい。
狼犬にせよ、狐の家畜化にせよ、こういう研究の背景には、ルイセンコ学説と同様にマルクス主義があるのかな~と感じたりして……
投稿者 ウルフガイ : 2005年03月14日 00:58
>足が幾分短くなったかわり、体長は長めになってもいる。
新種のウェルシュコーギーの子犬やったりして。
ttp://www.dogfan.jp/zukan/herding/corgi/
投稿者 温泉カワセミ : 2005年03月13日 22:58
正直犬に見える…
投稿者 rna : 2005年03月13日 22:42