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2005年04月05日  靴の使用と分裂病発症の関連について [医学・科学関連]

昨年7月に発表された北欧研究者の論文。全文は長いため、抜粋をつながりのわるい部分を補って訳してある。
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現在唱えられている精神分裂病の病因論および病原論的理論は、いくつかの疫学的、臨床的、および病態論的な事実によって支えられているにすぎない。様々な事実を説明しつくす研究はごく一部である。

この点、我々の研究結果は靴の使用と分裂病発症の関連について十分な関係性を示している。カカトのついた履き物が用いられるようになって千年以上になるが、これは分裂病の出現とほぼ一致している。そして、近代になって製靴作業が機械産業化されたことで、分裂病の有病率はさらに増大するのである。

靴製作の機械化はマサチューセッツに始まり、そこから英国、ドイツに伝わり、そしてヨーロッパ全域に波及していった。分裂病有病率の著明な増加は、これと全く時間的地理的にも一致したパターンを示すのである。

ドイツのバーデンでは、こうした背景で若い世代の患者が次々に発症し、重篤な認知障害を残す例が頻発したため、クレペリンは「早発性痴呆」という分類学的疾患単位を確立するにいたる。患者たちは入院後もカカトのついた靴を履き続け、病状は進行し続けたのである。

分裂病発症率は、温かい地方から寒い地方(そこでは靴使用がより一般的である)への移民第1世代において高いことが示されている。第二世代の発症率の高さも、歩き始めの時期から靴を履くことが原因である。他の知見もこの事実をより明確に指摘する。一月から三月に生まれた子供たちは、歩き始めが十二月から三月になるため、外気温の寒さから裸足で歩く機会はより少なくなり、より分裂病発症率は高くなるのである。都市環境ではこれはより明確な傾向をしめす。

歩行の際、下肢の機械的レセプターから発せられる同期的神経刺激は、小脳-視床-皮質-小脳ループのNMDAレセプターの活動を増加させる。靴を履くことによって引き起こされる皮質活動の低下は、基底核-視床-皮質-黒質-基底核ループのドーパミン活動を変化させる。自転車に乗ることは分裂病者の抑うつを改善することが知られているが(*)、これは下腿三頭筋の収縮によって強化された刺激によるものである。下肢の機械的レセプターから発せられる刺激の代わりに、電気的刺激を人工的に送ることでも分裂病者の機能を改善できる。

カカト付きの靴を履くことと、分裂病有病率との関係を移民研究から検討した。
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北欧では昔から、「精神疾患と生まれ月」とか「精神疾患伝染病説」などという、ちょっと変わった精神医学研究が行われていて、この論文にはそれらの成果が思わぬ形で利用されているように思う。30年ほど前には、伝統文化の解体と西欧化というのが精神疾患の背景として語られたものだが、それを「製靴産業の機械化」という側面から再構築し、はやりの脳科学風の論理まで組み込んだこの理論には、「自転車で使うのは大腿四頭筋だけど?」というような細かなツッコミが可能とはいえ、いささか意表をつかれる思いである。

確かに、文化の西欧化-産業化の過程で急性劇症症例が一過性に増えることは、フランツ・ファノンのような第三世界精神科医によって報告されている。しかも、現在の日本で著明なように、分裂病の軽症化(治りやすくなったという意味ではない)もまた進行していて、それは脱産業化ということと平行しているともいえるのである。

それをすべて説明する理論はまさしく、この「カカト付き靴が分裂病をつくる」学説といえよう。なに?なんで脱産業化したら軽症化することと靴が関係するんだって?そりゃ、堅苦しい革靴なんかはかなくなって、スニーカーですますようになったからですわね。明日からカカトがしっかりついた靴を履いている患者さんがいたら、ゴムゾーリに履き替えるように勧めようかな。

"Is there an association between the use of heeled footwear and schizophrenia?":Flensmark J.;Med Hypotheses. 2004;63(4):740-7.

こんなに香しい論文は絶対全文を読む必要があると思って探した結果、こちらの下半分に掲載されているのを発見した。同業者は是非保存して熟読して頂きたい。それにしても、このフレンスマルクという研究者はタダモノではあるまいと思うのだが、全く履歴がわからないのが謎。

(*)こんなの聞いたことないよ。少なくとも私は。

投稿者 webmaster : 2005年04月05日 23:20

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