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二日ほど前のABCニュースに、かなり気になる記事が載っていてた。旧ソ連、東欧地区からスウェーデンに難民認定を求めてやってきた人々の子供たちの間で、奇妙な疾患が多発しているのだという。これにかかった子供たちは、生きる意欲を失い、一切の自発的行動をしなくなり、適切な治療をおこなわないと死に至るのだそうだ。
同国ではすでに400人に及ぶ症例が知られており、その数は増すばかりだという。不思議なのは、この状態が多発しているのは同国だけで、数年前まではほとんど知られていなかった。発症者も難民として移民を希望する人々の子供に限られるという。同国のカール・グスタフ国王は、入国管理担当者に、この疾患にかかった子供たちへの寛大な対応を要請したという。
その報道記事には、「この状態は"Pervasive Refusal Syndrome"として知られている」という一節があったのだが、不勉強な私はその病名を聞いたことがなかった。Pervasiveってのは広汎性発達障害というときの「広汎性」と同じなので、「広汎性拒否症候群」というところが適切な日本語病名になるだろうが、原語で引こうがこの訳にしようが、日本でこの状態に触れるものは少なくともGoogleでは引っかかってこない(広汎性拒絶症候群でも調べたがおなじ)。
というわけで、仕方なく英語文献の検索。そうしたら、全文が無料で読める論文は一つだけ見つかった。それによると、この状態がはじめて注目されたのは1991年、英国でのことである。ロンドンのセント・ジョージ病院思春期精神医学担当のブライアン・ラスク教授たちのグループが、9歳から15歳の間の4症例について記載したのが最初である。この子供たちは一切の栄養摂取、排泄、体動、言語活動を含むコミュニケーションを拒否する状態が数ヶ月続き、小児科病棟では対応できず、小児精神科病棟に移送されて長期にわたる治療を必要とした。
彼らの報告の後、同様の状態は次々に世界各地で報告されるようになり、初報告者のラスク教授は50症例におよぶコンサルテーションを求められたという。この疾患は、全く器質的な異常が認められないのに、急激な社会的な引きこもりをしめすようになり、無言無動となって栄養摂取しなくなり、低栄養で死に至る状態に陥りつつ、それに対する治療的な関わりへは断固たる拒否を示すという特徴を持つ。
我々からすれば、それって単なる若年発症の緊張病じゃないのかといいたくなるが、やはりこの業界の人がそういうのを見逃すわけもなく、なんとか適切な身体管理でこの状態を乗り切ったあとの予後は非常によく、後遺障害も全くないという特徴があるのだそうだ。分裂病を経過した人に対する精神科医の嗅覚というのは、そりゃかなりのものでして、ここで「ありゃ、この人何ともなくなっているじゃないの」という素朴な驚きというものが、この状態を新疾患単位として考えざるをえなくさせているんでしょうな。でも、まだ10数年以上経過観察された例はないのだけれどね。
スウェーデンの難民たちの子供に、この状態が多発している理由というのが解明されれば、案外すんなり治療や予防の方策も定まるかもしれない。でも、Google検索レベルだけでどうこう言うのも何だが、まだまだ情報は行き渡っていないようだ。日本ではほとんど注目もされていないのがその証拠。
そういえば年齢は多少ずれるが、最近頑強な昏迷状態を呈する人をよく見るような気もする。しかもそれらの人には、今までの標準的治療があまり効かないのである。向精神病薬がトラブル起こすばっかりで、全然事態を打開しない。一時的な興奮を抑える役には立っても、昏迷をほどく助けにならないし、悪性症候群みたいな状態をすぐに起こしてしまう。
結局、栄養の管理と褥瘡予防、拘縮予防といった、下支えの対応を地道にやって、昏迷がほどけてくるのを待つしかない。一例、それこそEPAの大量投与をやったら、翌日からコミュニケーションが可能になったというのがあるんだけど、あの薬、注射はないし、鼻腔カテから入れるにしても、カプセルをいちいち破らないといけないので面倒なんですよね。某社が出している経管栄養用の栄養剤がα-リノレン酸の配合量がおおく、EPA投与の代わりになるかと一生懸命使っているんだけど、やっぱEPAの直接投与の方が効果ははっきりしているように思う。
ヨーロッパで多発するようになった奇妙な小児精神疾患と、私が経験しているような非定型な昏迷状態の増加ということが関係しているのかどうかわからないし、ましてやある種の必須脂肪酸不足の問題だなんて言ってるわけではないのだけど、なんとなくその辺に答えがありそうな予感がしているのであります。
B. Lask:"Pervasive refusal syndrome";:Advan. Psychiatr. Treat., March 1, 2004; 10(2): 153 - 159.
投稿者 webmaster : 2005年04月28日 23:59
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んで、臨床医家のご意見を待っていた所なんですが・・・
このまま落ちちゃいそう・・・。
投稿者 二人目 : 2005年05月10日 00:51