2005年5月31日  自殺者続出パズル?[都市伝説・デマ・トンデモ]

アメリカの某都市伝説掲示板にアップされていたパズル。40年ほど前のイギリスで、これがうまく解けないために自殺者が続出したパズルだ、という触れ込みである。

'Mary is 24. She is twice as old as Anne was when Mary was as old as Anne is now. How old is Anne?'

マリーは24歳です。マリーが今のアンと同じ歳だったとき、今のマリーの歳は、そのときのアンの、ちょうど倍です。アンは今何歳でしょうか?

日本語だと時制をはっきり明示できないので、えらく不細工に「その時の」とか「今の」をくっつけないとパズルの意図をうまく伝えられないのだが、向こうの連中だってその辺は必ずしもすっきり受け取れるものではない、というのがこれがパズルとして成り立つ理由なのだろうか。その掲示板では答えの書き込みはあるものの、えらく妙な連立不等式みたいなのが根拠にされていた。要は片っ端から数字を当てはめて検証しているわけ。

普通に考えるなら、アンがマリーより年下なのは明らかなので、今のアンの年齢をXとすると、マリーがアンと同じ年齢だったのは(24-X)年前、その時のアンの年齢はX-(24-X)、その倍が今のマリーの年齢と同じだというのだから、2{X-(24-X)}=24、これを展開して移項すればX=18が得られる。つまりアンは今18だから、ということ。

念のために上のパズルの英文をそのままGoogleしてみると、ニュージーランドのなぞなぞ掲示板が見つかり、しかもそこでは誰も答えを出せていないのである。残念なことにこのパズルが数十年前に自殺者を続出させたかどうかは検証できなかったが、かなり不得意らしいのはうかがえる。アメリカ人は仕方ないとして、英連邦もなんぞ恐るべき、貴様らにはもう七つの海は支配できないのだと、えらく高揚してしてしまった夕べなのであった。

もしかしたら、こちらの方が問題の意図あたりからして、完全に勘違いしているんかしら。

2005年5月30日  うつ状態の鞭打ち療法について[医学・科学関連]

whip_s.jpg今年の3月26日、「プラウダ」紙英語版にのった記事。
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鞭打ち療法はうつ状態と自殺の危機を癒す

驚くべき効果:患者は世界に明かりが灯るのを見る。

ノボリシビスク在住の科学者が、国際学会に画期的な気分障害治療とリハビリ手段を報告した。「嗜癖行動に対する疼痛の効果について」というのがその題名である。報告者たちによれば、アルコールや薬物嗜癖、抑うつ、自殺念慮そして心身疾患は患者が人生に対する興味を失ったときに起こる。生きる意志を失うことは、「幸福のホルモン」といわれるエンドルフィンの分泌不足を引き起こす。もし抑うつ患者が鞭打ちなどの手段で刺激を与えられると、それはエンドルフィン受容体に働き、幸福感が産生され、最終的には抑うつ感情はぬぐいさられるのだ、と。

この報告では次のような治療過程を推賞されている。治療ごとに、お尻に鞭打ち60回を30セッション。薬物嗜癖者からボランティアを募って行ったこの新しい治療の治験では、素晴らしい治療成績が報告されている。

生物学博士、セルゲイ・スペランスキィはノボシビルスクで有名な学者である。今回の画期的報告グループの中に彼は加わっているのだが、彼は自分自身のうつ病を克服するため、自己鞭打ち療法を使った経験がある。また、彼は二回の心臓発作をこの物理的苦痛投与法で乗り切っている。

「鞭打ち療法は異性から受けたときに一番効果があるようだ。その効果は驚くべきもので、患者は周囲の世界に明かりが灯るのを感じはじめ、心痛は消えていくんだ。お尻の痛みが治まるのには時間がかかるがね」、そうスペランスキィ博士はいう。

鞭打ち療法は医学史の中では決して新奇なものとは言えない。チベットの僧侶は同じような治療法を使っていたし、旧ソ連の精神病院でも、肉体的苦痛を与える方法が行われていた。それは硫黄とモモのオイルを混ぜた物質を注射する方法で、患者は耐えがたい痛みを体験するが、良好な予後が得られていたという。

「人は私をマゾヒストと言うかも知れないね。でも私は古典的なマゾヒストではないと言い切れるよ」、博士はそのように付け加えた。この革命的治療法は、ロシアの精神科治療に新しい地平を切り開くだろうと、報告者たちは保証する。例えば拷問にかけるというような、もっと効果的な方法も使われるかもしれないが。
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以上、多少の意訳をまじえた全訳。なかなかロシア的な雰囲気に満ちた「治療法」といえよう。気分障害の小娘患者がリストカットするときなど、ホントにこんなこといいますものなぁ。でも、効果が持続しないのもみなよく知ってますが。

この記事を紹介していたのはイグ・ノーベル賞サイトなんだけど、そこではここに名前の出ていたセルゲイ・スペランスキィ博士について書かれていたが、どうもこの人はもともと超心理学系の人らしい。93年に「モスクワとノボシビルスク間のネズミと人間のコミュニケーションについて」という論文があるとのこと。

2005年5月29日  謎のバックドロップ映像[ニュース]

backdrop_s.jpg二次情報で恐縮なんだけど、なかなかインパクトのある映像だったので思わず紹介。

ロシアのニュースサイトにアップされていた映像だが、どこかで見たような気はするものの、もひとつ素性がはっきりしない。エレベーターの防犯ビデオの体裁になっていて、ひったくりに見事に反撃した光景が録画されている。リンクはこちら。映像はflash。

解説がロシア語なのでさっぱりわからんのだけど、機械翻訳でいい加減に知る限りでは、「泥棒が状況をうまく選択したつもりでも、必ずしも期待通りにいくとは限らない。東京のあるオフィスのエレベータ監視カメラが捕らえたケースがこれ。犯罪への見事な反撃の一例である。首を砕かれた泥棒は病院送りになり、女性は警察で事情を聞かれた後、帰宅した」とある(多分)。

「講談社」とあるのが何なんでしょうかね。ちょっと前のCMだったような気もするなぁ。ひったくりに見事なバックドロップを決める女の子のガタイ、えらく男っぽいのが気にかかります。

元情報はこちらから。

あ、やっぱ講談社のCMでしたわ。だれかロシアに知らせてやった方がいいのでは。

2005年5月28日  Short Break[ネタ]

何、ちょっと動くだけで息切れするんですか?階段なんかとても登れないと。動悸が激しくなって、咳き込んでしまうんですか?

寝ようと思って横になるだけで苦しくなる?体を起こすと、すこしましだというんですね。うーん、利尿剤もジギタリスもすでに処方されていますからね。そうですね。新薬を処方してみましょう。今までとは違う心機能改善薬です。薬の名前はアカルディです。

心不全かよ!
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うーん、決まらんな。


ギャグに解説する間抜けさは自覚しつつ、問い合わせまでくると説明せざるを得ない。これは単に「アカルディ」という薬の名前と「バカルディ」というお笑いデュオのお決まりギャグを掛けたつまらん冗談。だいたい、バカルディ自体、「さまあ~ず」に名前を変えてるし。(6月5日追加)

2005年5月27日  ドメスティック電波テロの恐怖[ニュース]

カリフォルニア州サクラメントの地方TV局、KCRAの報道サイトより。ビデオファイルもあるので参考に。
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サウス・ナトマスの住宅、金属板で覆われる-住人は電波による攻撃を主張

サクラメント市サウスナトマスにすむ一家が、自宅を突然金属板で囲ったため、隣人たちの論議の的になっている。ここの住人、デ・ソーサ一家は、隣人の誰かが仕掛けてくる電波攻撃で病気にされると訴え、それを避けるためにアルミニュウムの遮蔽物が必要だという。

「これは電波照射から身を守るためです。電波はアルミニウムで反射されるでしょ。防衛手段としてやっているんです」、この家の主婦、サラ・デ・ソーサさんはそう語る。一家によれば、電波攻撃は2001年の9月11日、ちょうどあの9・11テロ1周年記念日に始まった。この電波によって、一家は頭痛や狼瘡といった疾患に見舞われてきたという。

サクラメントの法執行当局は、一家に対して速やかに金属板を撤去しないと、軽犯罪法に問われると通告した。「南カリフォルニアで11年以上この仕事をしているけれど、こんなの初めて見たよ。家の中やベッドもきっちりアルミフォイルみたいなので覆われているんだ」、当局のスポークスマン、ジョシ・ピノは語る。

デ・ソーサ一家は市の通告に従って金属板はいったん撤去するものの、電波攻撃の証拠を集めて市当局に示すつもりだと主張している。
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典型的なフォリ・ア・ドゥ(パクリリンクでごめん)のケースだと思われる。こういう近隣からの攻撃を訴える場合、その手段の荒唐無稽さにもかかわらず、本人たちの基本的な対人接触能力はほとんど障害されていないことが多いが、この場合もそう。まあ、対処手段は変に疑似科学的だったりするものの。妄想に取り込まれているからと言って、判断力全般が犯されている訳ではないので、介入により困難さが加わることになる。

どの辺から攻めるようにするべきでしょうかなぁ。たぶん、妄想伝搬の中心になっているのは奥さんのサラだろうから、彼女の信頼をなんとか得ていくというような、はなはだ当たり前の接近になるんでしょうな。それにしても、私だってこういうケースの経験は数多く、遮蔽物で部屋を覆う工夫をしているようなのは結構見たことがあるんだが、カリフォルニアではそれは珍しいらしい。

そういう私も、典型例はここ15年ほどはみたことがない。たまに似たようなのがあっても、痴呆がかりの独居老人の例だったりで、少々典型例からは外れている。「イエ」システムの解体ということもあるんでしょうな。このサクラメントのケースも、ヒスパニック系住民が多い街らしいのが、一つの背景になっているような気もする。

それはそうと、スポークスマンのピノさん、法執行にかかわる立場にある人なのに、職業上知り得た秘密をTVの前でペラペラしゃべりすぎですぜ。よく問題にならんものだ。

2005年5月26日  夜間筋けいれんの予防法[都市伝説・デマ・トンデモ]

中高年には、特に女性に多いが、「夜寝ようとして横になると脚が攣ってしまう」という訴えがよく見られる。問題はそういうことを訴えても大概の医者は知らんふりを決め込むか、「ま、運動不足でしょうな。もうちょっと運動したら?」と冷ややかに言い放たれるのがせいぜいという現状がある。

ある程度まじめに受け取ってくれる場合でも、寝る前のストレッチとか、血流を維持するようにするため、ミネラルや水分をたくさん取れ、というようなありきたりのアドバイスをしてくれるのが関の山で、しかも、それがちょっと前までの血圧や頻尿への助言と矛盾していたりするモノだから、訴えた側は困るばかりというのもよく見られることである。

神経内科の専門家だと、この病態がいわゆるrestless legs syndrome(むずむず脚症候群)に至る広がりを持っているというような知識もあるので、それなりの薬物療法を提供してくれる場合もある。実際、リボトリールというてんかん治療に使われるベンゾジアゼピン系薬剤の少量使用が結構効き、他の種類のてんかん薬でも効く場合がある。立てば芍薬の、あの芍薬が入った芍薬甘草湯という漢方薬も役に立つことがある。血流改善剤やらビタミン剤も枯れ木も山のにぎわいとばかりに処方されるが、そんなモノで改善した人はまず見たことはない。

この状態に対して、欧米では今、ちょっとした民間療法が話題を呼んでいるという。それは、ベッドのシーツの下、なるべく脚に近いところにに石鹸を置いておく、というモノだそうだ。嘘だと思われるかも知れないが、"soap muscle spasm"で検索すれば実にたくさんの健康相談サイトでこの方法について解説されているのがわかる。そのほとんどが、専門家による「学問的にはまだ検討されていないが、これで効果があったという人の声は実際よく聞く」というものである。(例えばこことかこことかここ。後二者はrestless legsについても適応であるとしている)

これを最初に世に広めたのはAnn Landersという有名コラムニストらしいのだが、残念なことにその元記事を発見することが出来ず、どこからそういう予防法が発想されたのかということは今のところ不明である。とにかく、包装を解いた石鹸を脚の近くに置いておくだけでいいのだそうで、これに悩まされている人がいたら、ダメモトでやってみてもそう害はないのではと思える。

PubMedやGoogle Scholarで調べる限り、今のところ学術的にこれについて言及しているものはない。はてさて、単なる都市伝説の思いこみ効果によるものか、意外な根拠があるものなのか、ぜひプロたちの参戦を期待したいものである、って自分も一応プロの端くれだったな。早速明日にも、こんなのが効くという話もありますよ、と雑談めかしていってみようかな。蒸散した界面活性剤が神経筋接合部に作用して、その興奮性を減弱させるのだ、なんてもっともらしく説明してみようかしら。

2005年5月25日  黒死病とは何であったか?[医学・科学関連]

すでに昨年、単行本として出版されていた「黒死病≠ペスト」説を唱える著者たちの雑誌論文が公開されていたので簡単に紹介。数理的な説明まであって、とても逐語的に説明するのは手に余るので、ごく簡単な紹介だけだけれど。
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14世紀中頃から17世紀にかけて、ヨーロッパを脅かし続けた黒死病と呼ばれる伝染病の本体はペストであるというのは、20世紀を通じて常識となっていた。それは間違いであって、黒死病とは32日間という特別に長い潜伏期間をもつウイルス性出血熱であったことを実証するのが本論文の目的である。

その潜伏期の長さが、限られた移動手段しかなかった中世において、広範囲な伝染の広がりを引き起こしたのである。このウイルスはエチオピアに起源があると考えられ、動物を宿主として、黒死病がヨーロッパに現れるまでにも、何度かアフリカやアジア、ヨーロッパ周辺部に小規模な流行をもたらしていたと考えられる。

ペストは19世紀に病原体が発見されたが、中世の黒死病の病状記述の一部(壊死を伴うリンパ節腫脹)から、誰も詳しく検討したわけではないのに黒死病と同一視されたという経緯がある。実際、流行当時ペストを媒介するネズミの種はヨーロッパにはいなかったことや、さらに人間にペストを運ぶ蚤の成育環境ではないアイスランドで流行が起こっているなどの矛盾点を指摘することが出来る。また、ペストは抗生物質がない時代にあっても、適切に治療されればそれほど致命率は高い疾患ではなく、中世のほとんど100%に近い致死率を説明することが出来ない。

また歴史的に黒死病の流行地区とされるところでは、サイトカイン受容体のCCR5に変異体を有する人の率が優位に高く、CCR5がHIVー1のレセプターとして作用することから、黒死病のウイルスも同じルートで細胞内に入り込んでいたと考えられる。CCR5に変異を持っていた人々は重症化を逃れ、高い致命率の中でも生き延びることが出来たため、3世紀にわたる流行がこの変異を持つ人の率を押し上げたと推定される。
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以上抜粋部分に適当に補足したものを示した。簡単に言えば、アフリカの風土病でたまに小規模な流行を起こしていた疾患が、多分突然変異も加わって致死性を増し、ヨーロッパに大流行を起こしたというもの。現代のHIVとほとんど同じことが、700年前に起こっていたと言うわけですな。おかげで、今にいたってアフリカ人に対するヨーロッパ人のエイズに対する比較的優位な抵抗性が獲得されたというのだから、塞翁が馬というか。単にこの論文が「と」である可能性もあるのだけど。

C.J.Duncan & S.Scott. "What caused the Black Death?";Postgraduate Medical Journal 2005;81:315-320
著者たちの単行本についての解説はこちらで参照可能。

2005年5月24日  忘れなパンティ[アートとかグッズなど]

奥さんがあなたを裏切っているのではと、不安になったことはありませんか?娘さんが夜遅くどこにいるのか知りたくはありませんか?ガールフレンドの体温がどんなとき上がるのか、知る必要はありませんか?

そんなあなたの要求に応えるのがこの新製品、forget-me-not panties™(忘れなパンティ)です。このパンティは、装着者に快適なフィット感を提供しつつ、その位置情報と、体温、心拍を本人に知られぬうちに記録します。

そんな風に、GPSとバイオセンサーが組み込まれたIT版貞操帯を宣伝するのがこちら。データはLANを通じてオンラインでモニタ、と言うわけにはいかないらしく、後からPCやPDAにダウンロードして解析するという説明である。と言うことは洗濯物カゴから嫁さんやら自分の娘が脱いだ下着をこっそり持ち出す必要があるわけだが、そんなところを見つけられたら、なんぼ家族とはいえ変態扱いされた上に放逐されても文句は言えません。

注文ページでオーダーボタンを押しても何も起こらず、ソースをみてもCGIがセットされていないので、これは完全な冗談ページのよう。どうも一種のアートとして、この手のサイトをいっぱいでっち上げている、こちらのプロジェクトの一環らしい。アートだけに、まったくその意図は理解しがたいものの。

一番謎なのは、忘れなパンティの連絡先が、「東京都千代田区有楽町2丁目24番5、東京交通会館ビル、27F、パンチラコープ」とされていること。交通会館って、あの山手線からみえる、最上階が回転レストランになってるところでしょ?27階なんてないだろうに。番地から下は変えられてはいるものの、ほとんどそのまんまで使うかね。

2005年5月23日  ダイアナ妃の腎臓[ニュース]

イギリスのタブロイド紙、デイリーミラーが報じた記事。かなり端折っている。
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スペインとの国境に接する人口2500人ほどのフレンチ・カタロニアの小さな町、エスピラに住む地元小学校の事務員、フランソワーズ・ゲラー(38)さんが、自分は「ダイアナ妃の腎臓を移植されて命を救われた」と主張して話題を呼んでいる。彼女には重症の慢性腎疾患があり、1997年の9月2日、腎移植をうけているのだが、その提供者は手術2日前にパリで事故死した、故ダイアナ妃であったと信じているのだという。

彼女が移植を受けた日時は間違いないものの、当局者は彼女の主張を否定している。ダイアナ妃の臓器が移植のために摘出された記録はなく、仮にそうされたとしても、フランソワーズさんがその提供を受けた可能性はまずなく、しかもフランスの法律では、臓器提供者の名前は明らかにされないことになっているとのこと。

フランソワーズさんがそのような確信に至った理由は、腎提供者が現れたと連絡を受け、手術のために病院に向かう救急車の中で、救急隊員から冗談めかして「ダイアナ妃の腎臓が移植されるんだよ」と言われたのがきっかけだという。しかも彼女は手術後、無意識のうちに英語をしゃべっているのに気付くことがあるという。「どうしてそんなことをするのか、自分でも説明がつかないんです」。

ダイアナ妃とその婚約者がパリで死亡した事故については、イギリス情報部による暗殺という噂が根強いこともあり、フランソワーズさんの主張は思わぬかたちで陰謀論に勢いをつけている。死因を曖昧にするため、剖検前に臓器を摘出する理由に使われたのではないかと言うのである。当局は、ダイアナ妃とその婚約者の臓器が摘出されたという公式記録はないとそれに答えている。
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こんなにユルイ根拠でも記事にしてしまうのが、タブロイド紙のタブロイド紙たる所以なんだけど、陰謀論的側面はともかく、レシピエントの女性がちょっとした冗談を根拠に、神秘的確信を形成していくところが面白い。臓器移植という技術が持つ非理性的側面を処理するためには、こんな風な神話形成も必要だ、と言うことなんでしょうかね。

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2005年5月22日  抑うつ遷延状態への一考察[医学・科学関連]

かなり昔のことである。ある日、外来に30代後半の男性が初診してきた。めまい感と易疲労感が3ヶ月前ぐらいから続くようになり、ときおり理由なく胸部の圧迫感や動悸が起こるという。内科にいって調べたが何ともないといわれる。念のため、隣の県にある有名大学病院にもいってみたが、やはり異常はないといわれる。昔からの伝統産業の工場を親から継いでいて、仕事は一応安定しているものの、社長なのに朝から寝込んでいるような有様では社員たちに示しがつかない、何とかならんものだろうか。

よくあるパニック症状が合併した軽うつ状態で、少量の抗うつ剤と抗不安剤を服用すれば改善するだろうと告げ、現に一週間後に本人が再来したときには、症状はほとんど消えていた。「薬はどのぐらい飲む必要があるのか」という質問に、人によっては年単位になる場合もあるというと、いささか不満げな様子であった。一時的な不調で終わる人もいるから、様子を見ていきましょうとその場は納得してもらったつもりでいたのだが、この人はそれからぷっつりと受診しなくなった。

この人がまた私の外来を訪れたのは、それから2年以上たった頃であった。彼はおぼつかない足取りで診察室に倒れ込んできて、「横にならせてください」と、診察台の上に腹這いになってしまった。髪の毛は真っ白になり、顔面はやせこけ、まるで能面の瘠男である。後から入ってきた家族が説明するには、2年前に一度よくなったが薬を飲みたくないというのでそのままにしていたら、またすぐに逆もどりして仕事が出来なくなってしまった。知人の知人がそれを聞きつけて、「いい病院」を紹介してくれたのだという。

その病院に通い始めると多少よくなったが、それでも万全ではない。そのうちだんだん不眠が激しくなってきて、大量の睡眠剤を飲まないと眠れなくなった。日中は足下がふらつき、とても仕事どころではないが、夜になると眠れないのでまた大量に薬を飲むことの繰り返しで、食事もほとんどとれず、ここ一年はその病院に短期入院しては点滴を受ける生活だったとのこと。仕事もうまく行かなくなり、このままでは三代続いた工場を手放さないといけない。

通っていた病院の投薬内容は各種のビタミン剤と血管拡張剤、それと大量の抗不安剤であった。睡眠導入剤は5種類ほど併用されている。脳みそと末梢神経、筋肉系ことごとく、ベンゾジアゼピンでマリネ状態というところだ。仕方がないので、内科の病棟を借りて入院とし、抗不安剤を減量しながら抗うつ剤を点滴していくことにした。多少の退薬症状はあったものの、そう苦労することもなく、10日目には退院にこぎ着けることが出来た。

彼はその後通院を続けながら、傾きかけた工場を建て直すのに奔走しはじめた。先祖伝来の土地をいくらか処分しないといけなかったらしいが、何とか倒産だけは免れた。「いやー、ひどい目に遭いましたわ。特別のイオン水みたいなので体を浄化してくれるというので、例の病院に行ったんです。保険はきかないので、数百万以上とられるし、商売は傾くし、間違うと一家心中でしたわ」と、改善した後も真っ白けのままの頭をかきながら照れ笑いする。

「先生んとこで、ずっと薬が必要だといわれたのが引っかかってねぇ。あんなに簡単によくなるなら、ちょっと苦労すれば完全に直せるはずだと思って、浄化療法に走ったわけですわ。どんどん悪くなるのに、『これは体の毒が外に出てきた証拠だ』なんて言われると、ここを我慢すれば何とかなると思いたくなるもんで。いやはや、馬鹿をしましたわ」。

私はそれを聞きながら、これは無知に乗じられてインチキ医療にひっかかった被害者だと理解していてはいけないと考えていた。この人には、一度破滅の深淵をのぞき込む体験が必要であって、中途半端な薬物療法による安易な改善というものは受け入れられなかったに違いない。明らかに悪くなる一方なのに、2年もおとなしく我慢するというのは、本人が積極的にそれを望んでいたからに他ならないと思うのだ。

ギャンブルに溺れたり、たちの悪い女にひっかかって身代をつぶしかける三代目と同じことを、この人は医療という場で経験したのだろう。地域社会で代々の家業をそつなくこなすという、自分のよって立つシステム自体を再構築する衝動を、うまくコントロール出来なかったに違いない。精神分析のような、欲動エネルギーの配分というあまり役に立たない古典的考え方に対抗して、むしろ欲動エントロピーの処理という視点を持つべきではないかという発想のきっかけとなった症例であった。

この人の場合、差し迫った経済的破綻という危機が逆に回復へのきっかけとなった訳だが、多くの慢性遷延状態にある人をそこに止まらせている最大の原因は、「うつ病は励ましてはいけない」という部分的真理の教条化にあると私は思っている。患者側が具体的な目標を設定し、一つ一つ課題を積み重ねていくようなことは、まず「根をつめてはダメ」という治療者の一言で、ちょっとした揺れを理由にして放棄されてしまう。

もちろんうつ病者には、無茶な目標設定というか、少々うわずった理想に執着する傾向があるのは事実であるのだが、そのあたりの現実吟味こそ、プロが親身になってともに検討する課題であろう。精神療法というのはそういうものであるべきで、今更どうにもならない過去の軋轢なんぞに拘泥してみたって、何の役にも立ちはしないのである。

なんでガラにもなく、真面目なことを書き連ねているかというと、たまたまこんなブログを読んだことによる。ここの管理人さんは、うつ病で長らく通院していて、精神科医の対応に腹ふくるること多く、そのやりとりを記録していたのをこの度出版されたということだ(下のリンク参照)。ああでもなし、こうでもなしとグダラグダラとその場限りのことを言って、患者の方は具合が悪いと言っているのに「同じ薬だしときましょ」という対応するのはよく見られるので、ここの管理人さんが頭にくるのもよくわかるのだが、だからといってこの人が望むような長時間の「カウンセリング」を受けていても、まず改善は望めなかったであろう。

もっとも、体内で代謝されたら同じものになるような睡眠導入剤を何種類も処方するような医者では、はじめからまともな治療を求めるのが無理なようにも思う。なにより、この人がルジオミールが150mgも必要なうつ病という診断自体が間違っていると思いますけどね。

この人が医療で一番傷つけられた体験をしたのは、4年かよっていた主治医が、全く自分の名前を覚えていなかったことらしい。実は私も、患者さんの名前は全く覚えられない。顔とその人の生活史と症状のあらまし、生計手段とか家族関係パターンなどについてはかなり克明に覚えるのだが、名前まで覚えようとは思わない。そんなことで人を傷つけることもあるのだな、といささか反省。でも、覚えないな、まず。

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2005年5月21日  iPod shuffle到着[日常]

10日ほど前に、iPod shuffleが当たったのそうでないのと書き込んでいたのだが、本日、なんと本物のiPod shuffleが到着した。お前にiPod shuffleが当選したから住所氏名を知らせろ、というメールは本物だった訳である。

えらく時間がかかった理由は、本国の販促キャンペーンをそのまま日本に適応したことにあるらしく、到着したiPod shuffleは米国仕様そのままであった。何であれ、タダでもらったものに文句があるはずがなく、早速使うことにしたのだが、普通のiPodにしても車の中でiTrip経由で使っている現状であるわけで、結局しゃれた作りのUSBメモリとして使うしかないことに気づいたのであった。

悔しまぎれに適当なことを書いていると思われても何なので、証拠写真を掲げておく。よきかな、人を信ずること、というべきであろうか。

本当のことを言うと、私らぐらいの歳になると、こういうラッキーはむしろ「幸運の浪費」だと思ってしまうのですな。このささやかな僥倖のおかげで、いったいどんな不運を覚悟しないといけないのか、と考えると夜も眠れそうにありません。

2005年5月20日  人肉味豆腐発売される?[ネタ]

hufu_s.jpg他のサイトでも紹介されていたが、人肉味の豆腐食品を販売すると自称するサイト、eathufu.comが正式オープンしていたので後追い報告。

"EAT HUFU"、「フーフを食べよう」と名付けられたこのサイトは、人類の美しい歴史的伝統である人肉食の代替となるものを、合法的に提供しようという使命感から作られたんだそうである。はじめはHOFUという名前で市場に出す予定だったが、創業者がマーケット調査のためにヨーロッパを旅しているとき、偶然女優のミラ・ジョボヴィッチと知り合い、彼女からそれが男性器官の名前に聞こえるという助言を受け、HUFUにしたという。

まあ、サイトを見てみれば妙にしつこい人肉食の歴史講義が並んでいて、一方で豆腐ベースだというこの食品自体にはほとんど何も説明されていなかったりするので、ジョークサイトであるのは丸わかり。「アステカ風人肉シチュー」の作り方というのは、ちょっと別のものに応用できそうだったけど。「肝臓の空豆添え、レクター博士風」ってのはイマイチ。

そういえば以前、もう少し直接的な"manbeef.com"という自称人肉販売サイトがあった。一度記事にしたと思っていたが、今調べてみてもどこにもない。ちょっと悪趣味なので、自粛したような記憶があるような、ないような。なお、このmanbeef.comはだいぶ前にサイト閉鎖していて、最近復活したと思ったが、全く別のアダルトポータルなので誤解なきよう。かっての有名URLも、こんな風に栄枯盛衰するんですなぁ。

なおeathufu.comだが、肝心のHUFUを売るショッピングカートシステムがまだ完成していないそうだ。興味ある方はウォッチを続けて、ぜひ彼らの商品を購入されてはいかがだろう。しかし、味の方は何とかなるにしても、歯触りを肉に似せるにはどうするのかねぇ。沖縄島豆腐みたいなのをベースにするんかしら。高野豆腐ならなんとかなるか。

2005年5月19日  ミレニアム・ファルコンinウェールズ[ニュース]

それほど昔でもないころ、そう遠くもない西ウェールズの町で、世界で一番有名な宇宙船が作られていたのだった……。(音楽:スターウォーズのテーマ)

1979年の冬、ウェールズの波止場町の古い格納庫の中で、空飛ぶ円盤が作られているという噂話が広がった。関係者たちは沈黙を守った。彼らは3ヶ月を費やして、オリジナルの「スターウォーズ」に使う、ミレニアム・ファルコンのモックアップ模型を作っていたのである。それはシリーズ第二作、「帝国の逆襲」のために準備されていたのだった。

作ったのはマルコン製作所という、石油化学工業のための機械を製作する会社であった。製作場所は第二次大戦中、軍事作戦用の高速ボートを作っていたドックである。ドックの持ち主であるゴバン・ディビスは当時の秘密製作過程を回顧してこう語る。「関係者以外は誰も入れなかったし、いつも鍵がかけられていたんだ。モノは丸太の骨組みに鉄製の外皮で作られていた。いつも30人から40人が働いていたな。ホントにでかかったよ」。

このプロジェクトは関係者の間では「魔法の回転木馬」というコードネームで呼ばれていたが、ディビス氏によれば、噂はすぐに広まってしまったという。「初めのうちは友達どおしで話すぐらいで、誰にでも話すようなことはなかったよ。ドックの持ち主のオレがモノを見たあとでも、教えてもらえなかったね」。

秘密は1979年3月、地元の新聞が「空飛ぶ円盤の謎、明らかに」という記事にしたことで露見する。その記事は冗談めかして、そのころその地方でよく目撃されていた空飛ぶ円盤との関係づけるものだった。「スターウォーズ」の特殊撮影効果担当者であるブライアン・ジョンソンによれば、この宇宙船は飛ぶこともできたのだという。ただし、1~2ミリ程度。

「そいつは重さが23トンあって、直径は21メートルあった。俺たちは宇宙船の脚に圧搾空気の噴出孔をとりつけて、地面から浮き上がれるようにして車輪なしで移動できるようにしたんだ。宇宙船は本当に、エアクッションで床から1~2ミリ浮き上がった。ドックから運び出すときには、いくつかに分解してトラックに乗せ、撮影現場まで持って行った」。
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以上、昨日のBBCニュースから。

出だしが凝っていたので、すてきなオチがあるのかと読んでいったのに、なんもありません。スターウォーズの第6作目が公開されて話題をさらっているので、へそ曲がりの英国人としては、少しでもそちらに引っ張られることのない、トリビア関連記事を書きたかったんでしょうなぁ。私もへそ曲がりに関しては同様なので、いい加減に訳して紹介してみた。多少の蘊蓄用にはなるかも。

2005年5月18日  試験時祖母急死症候群[医学・科学関連]

イグ・ノーベル賞を選定する母体である"Annals of Imporable Reserch"に6年ほど前に掲載された論文。著者はコネチカット州立大学生物学教室の教官。以下はかなり恣意的な抄訳。
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大学生の親族にとって、試験に先立つ一週間はきわめて危険な時期だと言うことは、かねてより唱えられていることだ。著者が教職についてからも、同僚たちは曖昧ながら、「祖母死亡問題」の存在を認めてきた。この問題は海外にも存在しているが、学問的な考察が向けられるのはこれが初めてである。

この問題は実に簡単に述べることが出来る。

「大学生の祖母は、ほかのどの時期よりも、その学生が試験を受ける直前に死ぬ傾向が極めて高い」。

これは推測にすぎないとか、大学内都市伝説と言われていたこともあるが、著者はこれが事実であることを確かめることが出来た。20年にわたり収集したデータを検討した結果、ここでその事実を確認しただけではなく、この国の未来にもかかわる付随的問題を発見することが出来た。このレポートは専門家、大衆をとわず、健康と社会にかかわる戦慄すべき問題を提起するであろう。

まず次の表(クリックでポップアップ)を見られたい。試験がないとき、学生100人あたりの家族死亡率(FDR:Family Death Rate)は0.054にすぎないのに、中間期テストを前にすると0.574、期末テストでは1.042というそれぞれ10倍、19倍という数字に跳ね上がる。しかもこの傾向は成績が悪い学生ほど明らかになる。Aをとる学生が試験を控えていない時期のFDRと、結局落第した学生が期末テストを控えていた時期とを比較すれば、50倍以上の差が認められるのである。

これから得られる結論はひとつである。学生の成績を気にするあまり、親族たちは試験のたびに自らを死に追いやる危険にさらされるということだ。成績が悪いほど試験の結果は重要なものになり、それに対するプレッシャーが早期の死を招くことになる。死亡する予備軍が祖母であることも、そうしたストレスによって発作を起こしやすいからであることで説明できる。しかし、なぜ祖父はその犠牲者にならないのかは説明出来ず、まだ発見されていない別ファクターが存在するのであろう。
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論文はまだまだ続き、試験前にFDRが上昇する傾向は、学生の属する家族規模とは無関係であることから、死亡する祖母が足らなくなる危険性があり、十分な数の祖母を提供するために、アメリカ社会の離婚-再婚率の上昇が起こっているのではないかという考察がなされる。高い大学進学率が、試験前祖母死亡症候群を媒介にして離婚率を上昇させているという推論である。

また、この試験前祖母死亡症候群の頻度がここ20年間、加速度的上昇率を呈しており、このままでは百年後には100人の学生に対して、644人の試験前祖母死亡が起こるという驚愕の予言までなされるのである。著者はこの問題への解決策として、大学での試験の廃止、大学は孤児だけを受け入れるようにする、学生が家族に成績を伝えることを禁じる、というような提案を行っている。

著者は最後に、学識者たちによるこの問題の対策委員会を作ることを提起し、その委員会メンバーの成績を記録するよう要求している。そして、委員たちがどれだけ問題を理解しているかを示すデータを集めることで、さらなるフォローアップスタディを提示できるだろうと結ばれている。

なんだかんだ言っているけど、要はバカ学生が出来が悪かった口実に「直前におばあちゃんが死んだもので」といってるだけじゃないないのか、と正しいことを言うそこのあなた、多少人をうんざりさせようと、こんな風にネタ思考を徹底して貫くのが学問の本来の姿なのであります。オチは今ひとつ決まっていないけれど。

Mike Adams. The Dead Grandmother/Exam Syndrome.:ANNALS OF IMPROBABLE RESEARCH.;p4,Volume 5, Issue 6.(PDF)

2005年5月16日  日本漁船の秘密[都市伝説・デマ・トンデモ]

インド・ムンバイ在住のシュレニック・シャー氏の個人ブログより。
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やあみんな、とっても面白い話を教えよう。参考になると思うよ。

日本人ってのはすごく新鮮な魚が好きなんだ。でも、日本近海はこの何十年も不漁が続いている。だから彼らは大きい漁船で、とても遠くまで魚を捕りに出かける。漁師たちが遠くへ行けば行くほど、捕った魚を持ち帰るのには時間がかかる。帰りに何日もかかれば、魚は新鮮ではなくなってしまう。

日本人はそんな魚を好まない。これを解決するために、水産会社は船に冷凍装置をとりつけ、捕まえた魚を海の上で凍らせる。このおかげで漁船はもっと遠くまで出かけることが出来るようになった。

でも、日本人ってのは、新鮮な魚と冷凍物の違いがわかるんだな。当然冷凍物は嫌われる。値段も安くなるため、水産会社は漁船に新鮮なまま魚を貯蔵するタンクを設置した。タンクに詰め込まれた魚同士は、はじめは多少小競り合いもするが、やがて疲れておとなしくなり、生きたまま貯蔵できるというわけだ。

残念なことに、日本人はそれでも味の違いがわかってしまう。魚は何日も動かずにいると、新鮮な風味を失ってしまうんだ。日本人は活動していた魚を好み、不活発だった魚を嫌う。そこで水産会社が考えた解決方法というのは何だと思う?もし君がそういう企業のコンサルタントだったとしたら、何を提案するかな?

魚を新鮮に保つために、水産会社はタンクに魚を詰め込んだわけだけど、彼らはそれに加えて、小さなサメをそこに入れたんだ。サメは魚を何匹かは食べるけど、魚はそれから逃れようと活発に動く。魚たちは逆境で挑戦をうけるというわけだ。

困難から逃れるのではなく、あえてそのゲームに挑もうじゃないか。困難に突き当たってもあきらめちゃいけない。疲れていないで、まき直しを図ろう。決断と、知恵と、助けを見つけよう。ゴールに達しても、もっと大きなゴールを目指すんだ。自分自身や家族のために何かをなせたら、次は社会や人類に貢献する道を進もう。成功に安住していてはいけない。君にはその資質と能力がある。さあ、君のタンクにサメを入れて、どこまで遠くまでいけるか見ようじゃないか!
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日本人の知恵と工夫に感動してくれているらしいシャー氏の、ポジティブで前向きの主張はあまりにも潔いので、日本の漁船にはサメ入りタンクなんか設置されてないなんて、とても言えません。

2005年5月15日  世間とアル中[医学・科学関連]

小田嶋隆さんというコラムニストが、フォーク歌手の高田渡さんの死を報ずるマスコミの姿勢(主要には筑紫哲也の番組)について自分のブログで意見を述べていた。高田氏が死んだとき、毎日新聞に中川五郎が追悼記事を書いていて、彼が完全なアル中であり、周囲にとんでもない迷惑をかけ続けていたのを知っていたので、そういう生き方を「天使みたいな人でした」というようなまとめ方をしていたのなら、それこそとんでもない犯罪的行為であるように思われる。

もっとも小田嶋氏の非難にしても、彼の生涯が木造アパートで終わったことをもって、無価値と非難するのも引っかかってしまう。郊外にしゃれた家を建てて、ローンに苦しみながら、つまらんガジェットをそこに詰め込んでいくのが人の道なんだと主張しているように見えてしまうのだ。実際、そのように感じた反論のコメントを寄せている人もいた。小田嶋氏のブログでの論争を追っていくと、小田嶋氏自身がかってアル中だったことがあり、なんとか自己管理出来ている立場から、筑紫哲也などが代表するような、アルコール中毒者を美化するような発言にいらだっていたのだということを知った。

断酒者というのは、酒飲みに対して普通の人以上に辛辣である場合が多いですからなぁ。私自身がそうだが、禁煙者がしばしば過激な喫煙排斥論者になるのと通じるところがある。かっての自分に対する自己嫌悪をつい他者に重ねてしまうので、過剰に否定してしまうのも仕方ないのかもしれない。

私の立場でちょっと面白いと思うのは、小田嶋氏の元の文章では「アル中」と書かれているのに、批判コメントに答える文章の中では「アルコール依存症」とされている点である。どうも「アルコール依存症」という言い方は、「アル中」の丁寧語として機能しているらしい。アルコール依存には患者側の主体性が強調され、中毒といってしまうと酒だけが悪者みたいに感じられてしまうのだが、私自身は「アルコール中毒」という方が、事態をより正確に表現していると思う。だって、酒のバカ飲みがない限り、この状態にはならんのだから。酒以外に代替できるものでもないし。

なんであれ、治療する立場からいえば、小田嶋氏の発言は至極もっともといえる。アル中さんを本格的なアル中さんに追いやるのは、なんといっても周囲の中途半端な援助と、酒に耽溺する人に対する美化が最大のドライブになる。人が自分を野垂れ死にに追いやるのはすべての人に認められる固有の権利だと思うが、だからといって、家族や友人に下らん八つ当たりや、不始末の尻ぬぐいをさせてもいいわけではない。酔っぱらいは酔っぱらいなのだ。自己主張するのは醒めてからやればいい。

アル中治療の出発点は、どんな形であれ、本人が酒を飲んで無様な真似を引き起こすことに対して、本人以外が尻ぬぐいをしないと言うことを徹底するところから始まるのだが、世の中には、名医がどこかにいてそこにはせ参じるとすべてを解決してくれるようなあり得ない幻想が蔓延している。何より、それは医療関係者自身が根強く持っていて、「アル中治療エキスパート」に紹介すれば一見落着だと思っている人も多い。

国立久里浜病院みたいにちゃんとした治療プラグラムを持っているところでも、笑っちゃうほど粗末で商売ポーズだけの「アルコール専門病棟」を持っているようなところでも、治療成績というのはそう変わりはしないのである。いうならば、放っておいてもあんまり変わらんわけ。楽天ゴールデンイーグルズのチーム打率ぐらいが歩留まり率ではないかな。

確かに、アルコール症の治療を看板にして、それに心血を注いでそれなりの成果を得ている治療者がいるのは事実であるが、優秀な治療者であればあるだけ、結局本人の底付き体験を徹底させることが出発点であることを熟知しているものだ。お茶目な酒の問題を起こしつつ、愛され続けた才能豊かな故人なんてこといってるなら、それは首つりの足を引っ張っているのと同じである。

なんでアル中というものに、人はあんなに幻想を持つのだろうというのはひとつの謎であるが、実際、アル中者には才能豊かな人が輩出しているのも事実である。ただ、その命題の逆となる、才能豊かな人が皆アル中になる訳ではない、という常識的なところまでは人は注目してくれない。この世知辛い世の中にあって、アル中レベルの酒飲みに対する甘い受容というのはある意味では心暖まることではあるのだが、それが周囲にも本人にもなんの役にも立たず、破壊的なだけという事実は、多少の誇張を伴っても世に知らせた方がいいと私は思う。

これは昨夜すでに書いていたのだが、自分自身ぐでんぐでんの状態であったため、本日推敲したうえアップする次第。おまえだって酒のコントロールが出来ないじゃないか、という人もいるかも知れないが、少なくとも私はそのまま飲み続けて仕事も約束も知らんふりなんてことはない。要は、いくら大酒飲みであろうと、期待される社会的な機能さえ果たしていればそれでいいのです。その意味では、高田渡さんはどうだったんでしょうな。周囲の正直な意見が聞きたいところ。

2005年5月13日  Google Content Blocker[PC・MT]

Google Content Blocker様々なWebアプリを次々に提供してくれているGoogle社が、満を持してリリースするのがこの"Google Content Blocker"である。他のWebアプリと同じようにまだベータ版ではあるものの、Web上で豊かなビジネスを発展させる可能性に満ちたものといえよう。以下にそのabout画面の解説を抄訳してみる。

-----引用開始

  • コンテンツ・ブロッカーとはどんなものですか?
  • グーグル社の使命は、ウェブ利用者に世界中の広告を出来うる限り閲覧させることにあります。残念なことに、わずらわしいウェブ・コンテンツがページを占領し、ユーザーに広告を見逃させる原因になっています。ここで登場するのがコンテンツ・ブロッカーなのです。これはウェブ・コンテンツを効率的にブロックし、広告だけを表示させます。

  • それはどうやって使うのですか?
  • コンテンツ・ブロッカーをひとたびインストールしたら、あとはいつものようにウェブサーフするだけです。コンテンツのあるサイトは自動的に広告だけになり、あなたは何もする必要はありません。

  • どんな広告を見ることが出来ますか?
  • コンテンツが取り除かれた後、あなたはコンテンツに妨げられることなく、すべての種類の広告を見ることが出来ます。グーグル・アドセンスと、その他の広告です。

  • コンテンツがなくなったら、何をすればいいのですか?
  • 広告をクリックしてください。読む必要もありません。クリックのたびにお金が動くのです。こんなオーディオオプションファイルも選べます。
    そして広告を眺めてください。広告は興味深く、楽しみそのものです。そう思っていなくても、眺めているうちにそう思うようになるものです。
    そしてまた広告をクリックしてください。そして、友人に広告について知らせるのです。そしてもう一度クリックすること。

    ほかに質問はありますか?こちらのヘルプページもご覧ください。
    ------引用終了

    なんぼなんでも広告ばっかりではという人のために、このアプリにはちゃんとオプションが用意されていて、表示項目にはグーグル検索とポルノだけは残す設定が出来るようだ。まさにネットの未来を先取りしたアプリというほかない。なお、URLがgoogle社と違うのは、まだベータだからだと思っておいて頂きたい。

    元記事はこちら。ここのサイトはコンテンツ・ブロッカーをかけたあとも、結構読み応えがありそう。

    Posted at 21:52 | トラックバック (0)

    2005年5月12日  13日の金曜日と交通事故[医学・科学関連]

    明日は久々の13日の金曜日なので、恒例の関連医学論文の検索。有名なのは1993年にBMJにのった"Is Friday the 13th bad for your health?"(13日の金曜日は健康に悪いか?)というもの(1)。これは13日の金曜日には病院入院率が5割ほど増し、交通事故も増えるので、その日は家でおとなしくしていろと主張した画期的論文であった。

    その後も同工異曲の論文は数多くでていて、こちらでも取り上げたのは2002年の米国精神医学雑誌にのったフィンランドの研究者によるもの(2)。これは13日の金曜日には、女性の交通事故死が7割近く増えるというものだった。女性は男性より迷信にとらわれ易いので、不安から余計事故に巻き込まれるのだという結論である。

    その後調べてみたところ、昨年11月に同じ米国精神医学雑誌にこれに対する反論が掲載されていた(3)。交通事故死は即死ばかりではなく、それ以前の事故による死亡も含まれるのだから、13日の金曜日に死亡が多いということは、それ以前の事故が多かったということだ、というのがその反論の骨子である。瀕死の怪我で治療を受けているとき、迷信がその予後に及ぼす影響は考えるべきであろうというコメントはあるものの、なんでこんな論争を精神医学専門誌上でやらねばならんのかが謎と言うしかない。

    やはり同時期に、元論文への反論が別の雑誌に掲載されている(4)。これは同じフィンランドの心理学研究者によるもので、初めの論文と同じフィンランドの交通事故統計を用い、その分析手法を批判したうえで、交通事故死には統計的優位な差が生じないことを論証している。もっとも、元の論文はかなりの小数例の比較をして、たまたま差があるように見える結果が出たのに後付けした確信犯的なネタ系論文であるのは明らかで、こういう風にマジに批判することもないのではと思ってしまう。しかし最後まで読んでみれば、この批判論文もまた手の込んだノリツッコミであることがわかる。彼らはこの論文をこう結んでいるからである。

    「我々は、フィンランドの交通事故統計から、13日の金曜日には女性の交通事故死が、自動車、バイク、歩行者いずれにおいても、増加していないと結論づけることが出来る。我々とは反する結論が得られた論文では、きわめて少数例からの不適切なサンプリングが行われている。しかし、これは(13日の金曜日が)何のリスクもないと言うことを証明した訳ではない。『暗黒の金曜日』をおそれる人々は家にこもって、少なくとも運転を避けたのかも知れない。限られたものとはいえ、幹線道路の交通量減少を示唆する報告もあり、さらなる拡大的な調査が望まれるところである。」

    さらにネタ論文を出す余裕をちゃんと用意してくれている先達たちに答えて、もっと面白い切り口で答える研究者が出てきて貰いたいものである。

    (1)Scanlon TJ. et al: Is Friday the 13th bad for your health? BMJ. 1993 Dec 18-25;307(6919):1584-6.
    (2)Näyhä S: Traffic deaths and superstition on Friday the 13th. Am J Psychiatry 2002; 159:2110–2111
    (3)SMITH DF.: Traffic Accidents and Friday the 13th. Am. J. Psychiatry, Nov 2004; 161: 2140.
    (4)gor Radun & Heikki Summala: Females do not have more injury road accidents on Friday the 13th. BMC Public Health. 2004; 4: 54.
    Posted at 23:49 | トラックバック (0)

    2005年5月11日  象さんの靴[アートとかグッズなど]

    テネシー州ホーエンバルドにある象保護区には、動物園やサーカスで飼われていて、老いたり病気になったりした10数匹ほどの象が引き取られている。象たちはそこで病気の治療や、リハビリを受けながら第二の人生というか、象生を送ることが出来る。

    ティナは1970年に生まれた野生のインド象である。彼女は捕らえられてポートランドの動物園に送られ、そこで暮らしていたが、前足の骨髄炎を患い、2003年1月にこの保護区に送られてきた。その疾患のため、ティナはごくゆっくりと歩くことしか出来なかった。そこでスタッフたちは、彼女が少しでも楽に歩けるよう、靴を作ってあげることにした。

    この靴の製作には、日本でもおなじみのサンダルメーカーのティバ社、登山靴底メーカーのビブラム社、スポーツプロテクターメーカーのブロック社などが協力した。スタッフたちはプラスティックギプスを使ってティナの足形をとり、メーカーはそれを元に靴を作り上げた。一連の写真はこちらこちらにある。なかなかしゃれた靴のできあがりである。

    しかし、ティナはこの靴を試すことが出来なかった。彼女には先天性の心疾患があったらしく、この靴が完成する前の2003年7月に急死してしまうのである。ティナがこの保護区に引き取られてから、まだ半年しかたっていなかった。スタッフたちは、ティナと同じような状態に苦しむ象に役立つかも知れないと、完成した靴を古参のタラに履かせてその機能を確かめた。その写真はこちら

    最近、悲惨な大事故があったり、気の毒にもとらわれの身になってしまったりする人がいたりするのだけど、歳のせいなのか、正直言って人間が不運な目にあうのは、身から出た錆としか思えなくなっているのですな。その分、物言わぬ動物たちの不遇な運命に同情してしまう。この象の靴の記事は、ほのぼのネタだろうと思って読んでいたのだけれど、ついついホロリとしてしまったのでありました。

    直接関係ないのだけど、日本語記事はないかと検索したら、ベトナムの民族資料館みたいな所に展示されている「象の靴」の写真を見つけた。農作業に象を使うとき履かせたと言うのだけど、構造的に象に履かせることが出来そうにないのと、妙に写実的なつくりといい、工芸品の傘立てかなんかじゃないんでしょうかね。

    2005年5月10日  iPod shuffleが当たった?[日常]

    このサイトをホストしているサーバーを、先月から米国系のVPSに変えたのだけれど、そのサーバー会社から今日メールが来ていた。時々ダウンする不具合のお詫びかと思ったら、「新規契約者の中から厳正な抽選の結果、貴殿にiPod shuffleが当たったので連絡する」とのこと。なんとラッキーなと、一瞬間喜んだのだが「ついては賞品を送付する住所、氏名、電話番号を折り返し連絡されたし」と続いていたので、しばし考え込んでしまった。

    これがフィッシングでないという保証がどこにあるであろう。念のため、サーバー会社のサイトを隅から隅まで眺めてみたのだが、iPod shuffleが当たるなんてキャンペーンはどこにも書かれていない。普段、確かめることなんかないメールヘッダーをしみじみ観察してみても、偽物でないという確信は得られない。

    これで、月会費も返納するから口座番号を教えろとか、パスワードを確認させてほしいなどと続いていたらさすがにインチキだと思うが、せいぜい住所と電話番号程度なら、人に知られても実害はあるまいと、さんざん考えた末にiPod shuffle欲しさが先行して住所氏名を知らせてしまった。

    ストレートに騙されたことがわかった時、何らかの参考になるかと、郵便や宅配に不都合が出ない程度に、住所氏名に微妙な変形を加えておいたが、実際インチキだったら、そんなことでは気分の収まりはつかんだろう。まあ、タダでiPod shuffleが手に入るメリットを考えれば、この程度のリスクがなんでありましょう。それにしても素直にこういうものを喜べない、ヤな世の中になったものですな。

    2005年5月 9日  地下道のマリアに新発見[ネタ]

    先日、シカゴの小汚い地下道の壁に顕現したマリア像について報告したが、現地では大騒ぎが続いていて、ついにはあのシミというか、マリア像をペンキで塗りつぶしてしまった人間まで現れたのはすでに知られるところ。シミを修復しようという動きまであるんだそうで、ほとんど集団ヒステリーの様相を呈していると言ってもいい。

    そのマリア像に対して、合衆国副大統領チェイニー氏の夫人、リン・チェイニーさんが新たな発見をしたことがwhitehouse.orgで報じられている。同サイトによれば、チェイニー夫人はシカゴで開かれたクリスチャンの集会に出席し、スピーチでマリア像が現れた奇跡への感謝を述べると同時に、あの像に対する彼女自身の新たな発見について解説した。

    チェイニー夫人によれば、あの像はマリア様の御姿が現れただけでなく、その聖処女性をも示したものなのだという。彼女はあの像が女性外性器を克明に表現しており、とりわけ、まだ破瓜されていない処女膜がそのまま描き出されていることを発見したのである。whitehouse.orgでは、彼女が発見した聖なる「処女膜」の詳細について画像入りで解説されているので、興味ある方はじっくり読んで頂きたい。

    なお、whitehouse.orgは合衆国政府とはまったく関係なく、某任意団体によって運営されていて、内容はパロディであって必ずしも事実ではないことが明記されているのでお間違いなく。日本のニセ官邸みたいなものですな。なお、本物はwhitehouse.govで、whitehouse.comだと不動産屋さんのサイトになるのでご注意を。

    2005年5月 8日  カンニング探知プログラム[医学・科学関連]

    ほかの分野のことはよく知らないが少なくとも医学教育の場では、マルチプル・チョイスと呼ばれる選択試験が習熟度公式的評価の手段として使われるようになって久しい。米国のやり方をまねたこの形式が、医師国家試験に導入されるようになってすでに30年以上になり、いささか妙だとも言えないこともないこの試験形式に慣れることが国試対策、というような風潮があるほどである。

    これは基本的にはマルペケを組み合わせた五択式で、一つの設問はいくつかの知識を組み合わせないと答えられない仕組みになっている。部分的なことをたまたま知っているだけでは正答できないため、広い範囲にわたって理解があるかどうかを問えるのである。あまりの難問奇問の場合、エンピツを転がして答えた場合とほぼ同じ正答率になるので、設問自体の適切性も簡単に判断できる。

    一方で、どんなに複雑な知識を問うものであっても、答えは結局五択の記号式なので、カンニングが横行するという危険性があるのも事実である。この事情はどこの国でも同じとみえ、5月8日に発行されたBMJの最新号には、医学卒後試験のカンニングを統計処理プログラムをつかって察知する方法についてのパイロット・スタディが報告されている。

    "Acinonyx"(これはネコ科の『チーター』のこと。"Cheater"と掛けてあるわけですな)とよばれるこのプログラムは、統計パッケージのSPSSで作られており、受験者総体の中から任意のペアをとりだし、その回答パターンの類似性を割り出す仕組みである。高得点になるほど回答パターンが類似するのは当然なので、このプログラムが割り出すのは、得点と類似率のバランスが崩れたペアと言うことなのだろう。昔教師のまねごとをやった経験から言えば、記述式ならこんなのは丸わかりなんだが、多数設問の記号式となると、こういう統計的手段を使うしかないと言うところか。

    この論文では、英国で2002年から2004年の間に行われた小児科卒後試験の、延べ一万強の受験者の回答を解析した結果を発表し、そのうち13例にカンニング疑いがあったことを報告している。もっとも、この解析結果をもとに、受験者にカンニングを白状させているわけではなく、試験会場での座席順などから、その疑いを確認しているだけで、「犯罪摘発」といったニュアンスはない。あくまで「医師として信頼に足る存在でなくてはならない」というモラルの指標とする姿勢なのが、英国流と言うところですか。

    丸写しの率があまりに低いのも、少々驚き。ジョンブル医学生はやたらに真面目なのか。もしかしたら、「丸写ししてもバレない、ゆらぎ導入テクニック」なんてのが伝統的に存在するのかも。

    McManus,I C.:"Detecting cheating in written medical examinations by statistical analysis of similarity of answers: pilot study";:BMJ 2005;330:1064-1066
    Posted at 23:59 | トラックバック (0)

    2005年5月 7日  失踪花嫁トースト[ニュース]

    数日前に日本のマスコミでも報じられた、米国ジョージア州アトランタで起こった花嫁失踪事件は、結局自分の結婚に不安を感じていた花嫁候補自身の、自作自演であることが明らかになった。その失踪した花嫁候補、ジェニファーさんの姿が朝食で食べようと思ったトーストの表面に顕現し、その神秘的出来事を世に明らかにしたいと思った目撃者が、トーストをeBayオークションに出品して話題になっている。

    このオークションは事件の真相が判明した直後の5月1日にはすでに始まっており、1ドルで始められた落札価格は、5月7日現在、1万6千ドルという高額の応札を得ている。競売期間はまだ丸1日残っているので、この神秘的にして歴史的価値の高いトーストを落札したい人はぜひオークションに参加してほしいものだ。

    ジェニファーさんの失踪事件に関するeBayオークションは、ほかにも彼女の「結婚式への招待状」や、結婚式まじかに失踪を試みる花嫁用の「失踪花嫁用品セット」も応札期間中なので、こちらもぜひ参加されたい。

    私の知り合いには、結婚式直後に空港で花嫁に逃亡された経験を持つ人がいた。周辺の誰もが彼に同情を寄せつつ、一方では幸福というものはかならずその反作用を伴うものだとうすうす感じていたものだから、「塞翁が馬と言うじゃないか。これはむしろ吉兆だったのかも知れないよ」という、妙に慰めにもならぬ確信的慰めをしていたものだった。

    彼女の姿が浮き出たトーストをオークションにかけた人も、一時の幸せと見えるものも新たな苦の始まりだという、ある意味で東洋的な真理を世に広めたいと思ったに違いない。それにしても、もうすこし手の込んだ絵柄にならなんだのかね。

    2005年5月 6日  脱毛症の要因としての文化的進化[医学・科学関連]

    脱毛症(禿頭症)は近年、その性を問わず若年層にまで多数の発症を見せるようになってきている。その理由の一つに、発生原因に対する無知があるといえる。人類は「裸のサル」となるべくその進化を続けてきたが、「ハゲたサル」となるように運命づけられれているわけではない。

    ここで示す理論は、脱毛症が不適当な文化的実践、たとえば過度に髪を切ったり、短髪スタイルにすることによって、毛髪同士や外部環境との接触が妨げられて脱毛が促進されるための変質過程であることを明らかにする。毛嚢基部への脂質の流れを妨げ、幹細胞を毛乳頭に届かなくさせて毛髪の萎縮を引き起こすのが、こうした文化的行為の結果である。やがて他の要因も加わり、この影響は非可逆的なものになるのだ。

    ---------
    そのようにサマリーがまとめられるのが2003年の"Medical Hypotheses"(医学的仮説)誌に掲載されたスペインの研究者、アルマンド・ホセ・イェネスによる脱毛症に関する論文である。前にもこの雑誌にのった、分裂病の原因はかかとのついた靴をはくためだ、という論文を紹介したことがあったが、その時と同じように、このイェネス氏も所属がはっきりせず、連絡先としてなんとホットメールのアドレスが書かれているという大胆さである。

    内容自体は毛はえ薬のCMでもよく主張される、毛根に酸化した脂質が詰るからハゲるのだというものと基本的には同じなのだが、そのあたりをもっと詳細にというか、「見てきたような」説明をしているところが面白い。彼によれば、毛嚢には脂質を分泌する脂腺があるが、そこから分泌された脂質は、皮膚に向かう流れと毛嚢の基部に向かう流れの二つにわかれ、基部に向かう脂質は幹細胞を運んで毛根の再生に寄与しているのだという。

    基部に向かった脂質は毛髪に取り込まれ、その流れは維持されるのだが、何らかの要因でこの流れが滞ると、脂質は酸化されやすいためにますます流れは滞り、結果として毛根基部は酸化した脂質によって押しつぶされるよう名状態になって萎縮していくというわけである。

    そして、その流れが滞る最大の理由が、皮膚の方に流れる脂質がうまく排出されないことが原因になり、これは短髪、とりわけ剃髪が一番の理由なのだという。なぜなら、皮膚に流れ出る脂質は髪の毛に絡まって排出されるので、皮膚の外に出ている毛髪が短いと、効率的に排出できないのだという。外に向けた流れが滞ると、「当然」内部への流れも悪くなるので、毛根は萎縮していくとのこと。

    かなり禿げている人でも、後頭部や襟足はそこそこ毛髪が残るものだが、これは人生の三分の一をすごすベッドの中で枕にいつも接しているため、脂質がそこで拭き取られるので脂質排出がうまく行くからなのだとのこと。逆に聖職者とかスキンヘッドの若者などは、脂質をあえて排出させないようにしているようなものなので、本当にハゲが進んでしまうのだとも言う。女性があまり禿げないのは、長髪にしている人が多いので、髪の毛に沿って自然に脂質が排出されるのが理由なのだとのこと。

    論文本文を読んでいると、毛嚢基部への脂質の流れ自体が脱毛の原因みたいに書いてあったり、それ自体は毛根の再生に役立つと書いてあったり、私の読解力のなさもあるのだろうが、どうも基準がはっきりしないところがあって、上に書いたのはかなり自分で補ってわかりやすくしたものである。完全な誤解なのかもしれないが。ほかにも、えらくアドホックな説明がやたらに目につくし。

    私自身は身近に剃髪していた人をたくさん知っていて、そう人が必ずしもハゲを発展させるわけではないという「反証」を山ほど提出できるので(その逆に、長髪者がどんどんハゲたり)、この人の説を信じることはできないが、かなり強引な力技とはいえ、脱毛という現象に実践的なアプローチを可能にしようという使命感だけはひしひしと感じることが出来る論文といえる。こういうのがホントだったら、人々にはいかほどの福音となるでしょうかね。

    Yanez Soler AJ.:"Cultural evolution as a possible triggering or causative factor of common baldness.";Med Hypotheses. 2004;62(6):980-5.
    (ちょっとインチキなんだけど、論文原文はこちら(PDF)で読むことが出来る。)

    2005年5月 2日  聖母授乳像[ネタ]

    maria_lactans_s.jpg幼児イエス・キリストに乳を与えるマリア像は、「授乳の聖母」(Virgo Lactans/Maria Lactans)とよばれ、聖母子像の最も古い型とされる。キリスト教成立以前の大地母神崇拝の系譜を引き継いだ、よりプリミティブな信仰形態がそこに表現されていると言えよう。

    こうした人間的な聖母マリアの一面を描くことは、キリスト教を国教としたローマ帝国によってやがて禁止され、再び描かれるようになるにはルネッサンスの到来を待つ必要があった。ルネッサンスが人間性の復興と呼ばれるゆえんの一つである。

    当時の人々にとって聖母の授乳は、ただ幼子キリストだけではなく、人類全体へと向けられた母性に満ちた神と自然の恵みをも意味したのである、ってコラ、オッサン、お前そこで何してるんだよ。ホント、油断も隙もないんだから。

    告:連休の間、更新は休ませて頂きます。

    2005年5月 1日  MacOSX10.4"Tiger"[PC・MT]

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    衝動予約申し込みをしていたOSX10.4"Tiger"が、律儀にも発売日当日に送られてくる。私はOSX10.2、つまりジャガーの時にこれを使い始め、そのときはパッケージがヒョウ柄であったのが、次のパンサーで黒になっていたため、今度のタイガーになったら、当然黄色と黒のシマ柄の箱に入ってくるのだと思いこんでいた。

    もしかしたら黄色のハッピとメガホン、応援旗もセットで入ってくるのではないかとまで期待していたのだが、前回のパンサーの時と同じ、地味な黒い箱だけだったのでいささかガッカリである。

    早速MacMiniにインストールしてみるが、妙なデスクトップのガジェットと、HDD内の検索アイコンが加わったぐらいで、それほど霊験あらたかな功徳は感じられない。多少期待していたWindowsとのプリンタ共有も、パンフレットにはできると書いてあるのに、少なくとも私の持っている機種では全然ダメである。なんか自分で工夫せんとイカンのかもしれんが、その手がかりもないのではあきらめるしかない。

    ほかにも細かなこと言い出したらキリがなく、デスクトップのガジェット(ダッシュボードというんだって)はデータを拾ってこないタコが混じっているし、サファリは相変わらず不安定ですぐ落ちる。仕方なしにFireFoxを使って、しゃれたテーマでお化粧すると、スライドバーがでなくなるのも同じである。

    ワンボードマイコンや8ビット機の昔から、カモられまくりの人柱には年季が入っているので、この程度の不具合には腹もたたない。こういうのに、またどこかで仕入れてきた怪しげなハックを加えて、結局再インストールの羽目になるのも人生の彩りなんだと、今から自分を慰める言葉すら用意されているのである。