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ほかの分野のことはよく知らないが少なくとも医学教育の場では、マルチプル・チョイスと呼ばれる選択試験が習熟度公式的評価の手段として使われるようになって久しい。米国のやり方をまねたこの形式が、医師国家試験に導入されるようになってすでに30年以上になり、いささか妙だとも言えないこともないこの試験形式に慣れることが国試対策、というような風潮があるほどである。
これは基本的にはマルペケを組み合わせた五択式で、一つの設問はいくつかの知識を組み合わせないと答えられない仕組みになっている。部分的なことをたまたま知っているだけでは正答できないため、広い範囲にわたって理解があるかどうかを問えるのである。あまりの難問奇問の場合、エンピツを転がして答えた場合とほぼ同じ正答率になるので、設問自体の適切性も簡単に判断できる。
一方で、どんなに複雑な知識を問うものであっても、答えは結局五択の記号式なので、カンニングが横行するという危険性があるのも事実である。この事情はどこの国でも同じとみえ、5月8日に発行されたBMJの最新号には、医学卒後試験のカンニングを統計処理プログラムをつかって察知する方法についてのパイロット・スタディが報告されている。
"Acinonyx"(これはネコ科の『チーター』のこと。"Cheater"と掛けてあるわけですな)とよばれるこのプログラムは、統計パッケージのSPSSで作られており、受験者総体の中から任意のペアをとりだし、その回答パターンの類似性を割り出す仕組みである。高得点になるほど回答パターンが類似するのは当然なので、このプログラムが割り出すのは、得点と類似率のバランスが崩れたペアと言うことなのだろう。昔教師のまねごとをやった経験から言えば、記述式ならこんなのは丸わかりなんだが、多数設問の記号式となると、こういう統計的手段を使うしかないと言うところか。
この論文では、英国で2002年から2004年の間に行われた小児科卒後試験の、延べ一万強の受験者の回答を解析した結果を発表し、そのうち13例にカンニング疑いがあったことを報告している。もっとも、この解析結果をもとに、受験者にカンニングを白状させているわけではなく、試験会場での座席順などから、その疑いを確認しているだけで、「犯罪摘発」といったニュアンスはない。あくまで「医師として信頼に足る存在でなくてはならない」というモラルの指標とする姿勢なのが、英国流と言うところですか。
丸写しの率があまりに低いのも、少々驚き。ジョンブル医学生はやたらに真面目なのか。もしかしたら、「丸写ししてもバレない、ゆらぎ導入テクニック」なんてのが伝統的に存在するのかも。
McManus,I C.:"Detecting cheating in written medical examinations by statistical analysis of similarity of answers: pilot study";:BMJ 2005;330:1064-1066
投稿者 webmaster : 2005年05月08日 23:59
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