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することもない土曜の午後に、ぼんやりとTVをザッピングしていたら、NHK教育で「ETVワイド ともに生きる」という再放送があって、「保存版”うつ”に負けない」という総集編をやっていた。コメンテーターが顔見知りであった(向こうは多分覚えていないが)こともあって、しばらくは真面目に見ていたが、そのうちうたた寝してしまい、気がつけば「お母さんといっしょ」になっていたのであった。
そんなわけで、内容はいまになってウェブ経由で確認しているような訳なんだけど、まあそこそこリーゾナブルなことが告げられているというべきなのだろう。ひとつだけ正直ではないことがあるとすれば、うつ病というものに対して、オーソドックスな精神科医はそれほど真摯に対応してくれるわけではない、という周知の事実をはっきり示していないことだと思う。
こういったマスコミ啓蒙番組でかならず言われることは、「うつ病は適切に治療すればかならず治る」ということである。その一方でここまで啓蒙が必要と言うことは、「適切な治療」というものが必ずしも得られないと言うことであろう。今日の保存版を見ても、患者の側が治療を拒否することとか、周囲の人間は正しい対応をしないことがうつ病の回復がうまく得られないことの理由であるような色づけがされていた。その一方で、医療がちゃんとした説明をしないことがその根本原因であるようにいうのも、マスコミとしては譲れない点であるようだ。
実際、呼ばれているうつ病経験者の芸能人のコメンテーターからして、10年以上すっきりしないまま治療を受けていた人なのだ。なーんも「かならず治る」例になってないじゃないか。彼の治療がどう不適切であったかを、じっくり検証するほうが世の人のためになるとおもいますがなあ。
一般向け啓蒙番組でこういうぐらいなのだから、医者の側ではうつ病というのは今の医療レベルではほぼ制圧されているつもりなのだ。薬物(主要にはSSRI)をちゃんと投与すれば、ほとんどのうつ病は3ヶ月ほどで治るが、まれには2年たってもクスブルこともある程度の疾患だと思っているわけ。ちゃんとした説明をして、患者側にそれなりの対応を覚悟させ、周囲の人に理解をもとめてあえて悪化させるようことさえしなければかならず治るのに、そのあたりがわからんアホが多くて困りますなぁ、というのが公式的意見になっている。
でも、そんなことが嘘っぱちなのは、ネットにあふれるうつ病者自身によるブログやサイトを読めば一発で判る。そういう具体的例を見る限り、彼らは医師の指示を気持ち悪いぐらいにちゃんと守り、周囲の人も過剰なまでに配慮して対応しながらも、さっぱり治りもせずに自己憐憫をつのらせ続けているのである。
その原因として何があるのか、というのを考えると正直言ってよくわからない。分裂病という、治療的使命感をもってあたると手ひどく敗北感に浸ることになる疾患を相手にしている多くの精神科医は、うつ病なんてタルイ疾患に真面目にやってられるかよ、と思っているところもあるのだ。総じて、彼ら(といって自分もそうなんだけど)は「まともなことを言う人に弱い」のである。
彼らにはまともで、かつ自己主張の強い人にたいして、「こいつはボーダーラインだ」といって逃げる道があるほどである。ちょっと訳のわからんことを言い出す人には対応できない一般身体科医と、患者から発せられるごく普通の人間的尊厳を求める主張を理解できない精神科医の解離が、日常的な医療でどう統合できるのか、私にはよくわからない。結局個々の医師の能力に帰せられることなのか、もっとちゃんとした方法論(バリントとかバイツゼッカーとか、たたき台理論は山ほどあると思うけど)を学ぶように強いるべきなのか、ちょっと判断停止するしかない。
途中で寝てしまったのには、その辺の突き詰めの甘さが目についたことが大きい。少なくとも、キューブラー・ロスの妙な改竄をもって、家族の対応への指針にする(それ自体は決して間違っていないが)ような自助団体に対して、プロが何にもコメントしないのはいけません。うつ病が遷延する最大の理由は、本人の不適切な治療態度でもなければ家族の無理解でもなく、ましてや職場の不適切対応でもない。それは単に治療自体の不適切さが第一なのだ、ということを主張しないかぎり、すべては無意味なのだから。
投稿者 webmaster : 2005年06月18日 21:52
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トラックバック時刻: 2005年06月30日 16:47
初めまして。トラックバックさせて頂きました。
薬で治らなかった人を連れてきて「薬で治ります」と言わせるテレビ番組の滑稽さ…
薬が効かなくて追いつめられる患者を量産していると、NHKは自覚しているのでしょうか?
私はうつ病から立ち直りましたし、薬が窮地を救うことは理解しています。しかしただ症状を抑えるだけの薬を「治療薬」と呼ぶ「ウソ」が許せません。
投稿者 うつ病ドリル管理人 : 2005年06月30日 17:04
はじめまして。いつも興味深く拝読しております。たまたまニュースを見て弊blogにエントリーしたものですから、トラックバックいたしました。専門的なことはわかりませんが、うつ病は薬だけで治らない、というイメージも(ある意味実感も)ありますし、それなら上手にうつと付き合う方法を模索してそれを患者に身に付けさせることも治癒のひとつかな、と思ったりしています。今後ともよろしくお願いいたします。
投稿者 scapa : 2005年06月24日 21:24
うつ病の治療が好きな,一精神科医です.
「適切な治療とは」という大問題は,あまりに難しいので,さておいて,何はともあれ,この医者とは,通常のコミュニケイションが取れないな,と思ったら,さっさと医者を変えましょう.
しかし,本格的にうつの沼に足がはまってしまった人たちには,「さっさと」が難しいかも知れません.それでも,この医者は?という疑念が浮かぶときがあるはずです.その時は,私は,一体どうなるのでしょうと,治療方針を聞いてみて下さい.あまりに簡単に回答したら,その医者はやめた方がいいです.んー,と苦渋の表情を見せて,それはですね…と,何かいろいろなこれまでの医者の治療経験を述べだしたら,信頼してもいいかもしれません.
うつ病に,おきまりの治療法などなく,いろいろ手探りしてくれる医者を信じてみて下さい.細かいところに目が行って,小さく,時には大きく揺さぶってくれる医者なら,任せるに足るでしょう.ほったらかしはダメ,きっかけを提供してくれる医者がよろしいです.
なお,認知療法というのは,治療法というか予防法でしょうね.うつの時は,頭では分かっているんだけど… でしょうし,本格的(重症)なうつ状態では,思考がまったく働かないか,あるいは,混乱しているわけだから.
投稿者 同業者 : 2005年06月21日 02:05
以前、こちらで紹介されていた鬱患者(?)のブログを見ても感じられたのですが、「患者の側が精神科医に期待する事」の内容がちょっとずれている場合が多々あるのではないでしょうか。もちろん、医師それぞれのスタイルの違いによるブレはあるにせよ。「精神科はちょっとアレだから心療内科へ」というのも既にそこから問題があるような。医者側も結構それを見越しているようですが。
そうしたずれを抱えたまま、なんとなく違和感を感じながらも、「まあでもお医者様の言う事だし」っていうことでとりあえず指示に従っているとしたら、治療効果は期待薄そうですね。
私は最近、認知療法の本を読んでいるのですが、「なんとなく感じていた事」をはっきりと言葉にしてもらえている感じで、大変面白いです。でもこれを読んでいると、日本的な物の考え方(謙虚に、周囲との協調を重んじて、など)自体が、鬱への傾向を有しているのだと感じずにはいられません。
日本の精神科医の間では、認知療法の位置づけはどうなっているのでしょう?それともこれは臨床心理士の分野なのでしょうか。
投稿者 kudryavka : 2005年06月20日 20:37
こんな言い方は、よくないのかもないですか・・・うつ病も含め多くの精神的な病に対しての考え方には、Stigumaがはいってることがよくある気がします。精神的な病は、ちょっとしたことで誰もがなる事だと私は、考えているのですが・・・私は、小さい頃から何かをチェクする癖、忘れ物のチェックがすごく激しくて、三年前ぐらいから鍵と目覚ましのセットの繰り返さなければいけないチェックに悩まされています。友達も親もそれを見て笑うので私もジョークにするしかありません。心理学を勉強しているので、自分で自分を診断してしまい余慶に苦しくなります。今では、人の目が気になっるのもあるし誰に言うのがいいのか分からず、チェックをすることによって自分が安心できると言う事で自分の性格の一部として認めることに・・・
投稿者 コアラ : 2005年06月19日 23:12