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2005年06月24日  医師の高自殺率について [医学・科学関連]

かのThe New England Journal of Medcine6月16日号の巻頭コラム"Taking Their Own Lives — The High Rate of Physician Suicide"より。こういう観点から逆に見えてくることもある、という典型例。

筆者はハーバード大医学部教官のエバ・シェルンハマー博士。彼女はウィーンで腫瘍内科の研修医をしていた頃、二人の研修医と一人の診療科主任が自殺した経験を持っているそうだ。自分たちの患者を守るだけでなく、まず自分自身の命を守るためのプログラムを作る必要性を痛感したという。

博士がまとめた統計はなかなか興味深い。米国での医師の自殺については様々な調査があるが、それらをまとめると男性医師は同世代の非医師男性に比べ、約40%高い自殺率を示す。一方、女性医師は130%近い増加率を示すという。一般に女性の自殺率は男性より低いため、女性医師と男性医師は、ほぼ同じ割合の高自殺率を示すとも言える。

シェルンハマー博士はその原因として、強いストレスと孤立が背景となって増悪したうつ病が主な原因であり、薬物嗜癖とアルコール中毒がそれを後押ししていると考えているようだ。ライセンスを失う不安から、気軽に精神科的コンサルテーションを受けにくいことも一因だとしている。

女性医師の自殺率の高さは特に外科、救急医療に目立つらしく、性差別的な雰囲気がいまだにその領域に強いことも示唆している。自身の経験もあるのだろうが、露骨なセクハラもまだ健在であるとされている。

しかし、シェルンハマー博士の考察の中で一番目からウロコの感が強いのは、こうした医師の自殺率の高さは、結局「既遂率」の高さであることを喝破しているところにある。彼らはいったん死を決意すると、医学的知識を使って、確実に死に至る方法を取るのだ。薬物を手に入れやすい条件がさらにその可能性を高める。医師の自殺未遂というのは、むしろ希なことなのだそうだ。

一般に女性の自殺率が低いのは、要は未遂率が高い(米国統計では既遂率は15分の1〜10分の1だとのこと)からで、男性が取るような大胆な方法を女性たちが取りにくいのが主要な理由だというのだ。前に、うつ病は女性に多いことが示されているのに、自殺率が低いことについてちょっと触れたことがあり、社会的な要因を考える必要があるようなことを言っていたのだが、こういう点から見れば理由の一端は理解できるわけですな。

精神的な疾患でなくても、医者という連中は自分の病気を人に診せるのには抵抗があるもので、まして日頃の間抜けぶりを知っている人間に命をあずけるようなことは、死んだってやりたくもないものだ。まして自責やら不全感にさいなまれている状況で、他人の専門的意見を聞くようなことは少々困難であっても仕方がないかもしれない。

幸い、日本ではまだ医師の自殺というのはそう多いことではないので(医学生の自殺は多いけどね)、問題が深刻になる前に対策を検討する余裕があるといえるだろう。一番有効な方法は、利権たっぷり、責任逃れはやり放題という、昔ながらのおいしい地位を復活してもらうことかな。

うーん、柄にもなくNEJMなんぞから引用したから、ネタを交える余裕もないぞ。一応ニュースレターは取っているんだが、無料会員なので内容は勤務先の紙媒体の方から。

投稿者 webmaster : 2005年06月24日 21:34

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トラックバック時刻: 2005年08月31日 21:18

コメント

昔救急外来にいた記憶としては、女性のリピーターのほうが圧倒的に多かった記憶があります。というか女性の場合はそもそも死のうとしていないような感じもしますが、まあ専門も違うし深入りはしませんけど。クソ忙しいのに来られた日にゃぁとりあえずほたっときますが、こういうのも病気に対する対応としては悪いんですかね。まあ励ましてないからいいだろってのが統一見解でした。うちの精神科はあまり積極的にかかわる感じではなかったです。今すぐにでももう一回自殺を試みそうならとりあえず入院をとってくれるくらいの感じで。

投稿者 Aspirin : 2005年06月26日 11:52

昔の日本では、身投げがあったときに、女の人なら助けて、男の人なら放って置くものだった、という話をテレビで聴いた覚えがあります。女の人は説得も効くんだけれど、男の人はどうせまたすぐ死のうとするから、なのだそうで。本当のところはどうだったんでしょうね。

投稿者 kudryavka : 2005年06月24日 22:20