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普段はそんなに忙しくもなく、ネットでネタ探しするいいチャンスになる外来が、今日はなぜか新患が何人か重なってしまい、お茶を挽くどころか一口飲むヒマもない有様だった。そんな日があるのも仕方ないとして、解せないのはそのうちの何人かが口をそろえていうのが、「他の病院に受診申し込みをしたのだが、予約が一ヶ月ぐらい先しかとれないといわれてここに来た」ということ。
ハイハイ、その点うちはいつもヒマですからね、といささかムッとしないでもなかったのだが、考えてみれば妙な話である。そんなにこの業界が繁盛することなどあるのだろうか。最近、周辺の総合病院では心療内科という名目で、実質的精神科の外来が開設されるところがぼちぼちみられるようになり、結構な事だと思ってはいたのだが、そういうところがもう患者さんをさばききれないほどになっているというのは、自分の経験からすればあり得ないことのように思う。ある程度繁盛するようになるには、せめて1~2年の信頼獲得準備期間というものが必要な場合が多いからである。
それに、精神科や心療内科の外来診療は時間をたっぷり掛けないといけないというのは、私にいわせれば真っ赤な嘘である。だいたい、患者さんに服を脱いで貰う必要もなく、そう検査というものもありはしない。時間がかかる道理がない。新患ならよっぽど複雑な事情がある人でも、30分も話を聞けば事態は把握できるはずだし、ましてや経過のいい人をフォローする場合なら、「どないだす?」「ぼちぼちでんな」「そらまた結構、ほなさいなら」で終わりである。電子カルテ化された今となっては、処方せん発行も瞬時に終わり、約30秒程度もあれば十分ではないか。
足元の怪しい高齢患者の出入りとか、多少は聴診のまねごとをしないといけないような合併症の人とか、時間がかかるにしても、せいぜい数分であろう。午前中に30~40人ぐらいを診ても、たっぷり余裕はある。もちろん、今日みたいに新患がかぶった場合は大変だが、それでも具合のいい人には多少マキで接すれば、いつもよりアタフタする程度で済ませられる筈なのだ。
もしかしたら、最近開設された所では、連日100人近い患者さんが押し寄せ、それらをこなすだけで精一杯なのかも知れない。でも、もしそうなら収入は莫大となるはずで、ほとんど設備資金のいらない精神科・心療内科外来は丸儲けであろう。全国の一般病院は次々に精神科開設にはしり、我々精神科医は引っ張りだこになってドンドン給料はあがり、売り手市場のこの世の春になっているはずである。
でもそんな話は聞かないぞ。知り合いで精神科クリニックをやっている連中も、老人の在宅医療などで着実に稼いではいても、精神科診療そのものは商売としては地味な展開だと覚悟している場合が多い。それでもやっているのは、精神科診療というのは、細分化された現代医療の中では、そのほとんどの部分を先端システムに依存しないで自分なりの方法論が貫ける分野であるからだ。
そりゃもちろん、大興奮でやることなすこと全く無茶苦茶というような状態の人の場合、短期間の入院治療も必要になるわけだが、その場合だって別に最先端の細分化システムに送れば終りという、難病のようなものとは違う。本格的治療が始まるのはそういう急性期がおさまった後なのであって、一番肝腎どころをやり抜くのは市中の治療者なのである。腹痛と風邪っぴきを適当に診て、数で稼ぐようなタルイ生活にはならないから、多少割が悪くてもこの商売をやっているわけだ。
その点からすれば、予約も取れない大繁盛というのは、一線診療機関が困難な症例をたくさん引き受けてくれている証であるのかも知れないが、どうみてもめんどくさい患者は引き受けないようにしているという勘ぐりのほうが正しいような気がする。自殺未遂で大騒ぎ、というような人に一ヶ月後に来いというのだから、そう思うのもあながち間違ってはいないのではないか。
長々とどうでもいいような愚痴話につきあってやることが精神科医の職能であるとしたら、そんなしょうもないことをやりたい後継者はいなくなっても仕方ない。つまらん長話の末に、セルシン3錠処方するだけの精神科医はもう結構。個別の疾患の中に、すばやく独自性と一般性の両方を見いだし、適切な処方と指示がおこなえるような、そんな総合病院精神科医が育ってきてほしいものだ。
なんか、変に忙しかったもので、高揚がまだ続いてるみたいで。
投稿者 webmaster : 2005年06月30日 21:53
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トラックバック時刻: 2005年07月01日 21:27
予約制はとっていませんが、私が住む某地方都市には毎日100人近くの患者が押し寄せ、待合室はいつも座りきれない患者でごった返し、入り口前の廊下にまで患者が座り込んで待っているというクリニックがあります。受診するには、4時間は待たないとだめですね。特に一人当たりの診察時間が長いわけではないようです。
私も行ったことがあるのですが、躁うつ病=「フルタイムで働いていたときのことは忘れてください。もとのように働けるようにはなりません」と言われ、そういわれても養ってくれる人もいない私は困るので、別の病院に変えました。
知り合いの話によると、みなさん、「あなたは会社務めはできない」、「この症状は改善しません」など、押しなべて否定的なコメントを受けるそうで。でも、たいがいの人は病院を変えて、その後なんとか社会生活送れるようになってますけどね。
待ち時間が長くて、診察をうけるだけで半日、運悪ければ1日かかるのに、なんで患者があんなに集まっているのか、不思議でたまらないですね。
でもみなさん朝早くから診察を受けるために、必死に順番取りをして、何時間も待ち続けられるのだから、比較的軽症な人が多いように思います。
投稿者 ぴょん : 2005年07月07日 18:42
以前精神的に調子が悪く、『心療内科か精神科にかかったほうがよいかも、』というアドバイスを受け、近隣のクリニックをタウ○ぺー○で探して片っ端から電話を掛けた事がありますが、8件中6件が、同じような状況で『新患診察は再来月まで予約でいっぱいです』と言われたことがあります。そのときはかなり電話を掛けただけで落ち込みましたが、『今日かかりたい』という希望がかなえられるほうが、こちらの立場としては嬉しいのにな、と思います。
でも、予約がいっぱいだと、『名医なのかも・・?』とも思ってしまうところが、恥ずかしい。
投稿者 mori : 2005年07月02日 12:58
>近所の病院の精神科の方がTVや新聞などのメディア媒体で「名医」あるいは「権威」として紹介されたのでは?
そうならご同慶の至りなんだけれど、そうではないようで、一日に数人しか診ないと決めておられるそうです。私みたいに、バイト先でも給料と稼ぎ高バランスをいつも考えているような人間からすれば、信じられないのですが。
投稿者 webmaster : 2005年07月01日 22:51
近所の病院の精神科の方がTVや新聞などのメディア媒体で「名医」あるいは「権威」として紹介されたのでは?
うちの科でもときどきそのような理由による新患ラッシュが起こっていますので…
投稿者 ふむう : 2005年07月01日 20:13
本日のお題、どこがと言うわけでは無いのですが、感じ入った次第です。
現在何の必要性がある訳でも、恐らくこれからも無いであろうと思いますが、その必要性が生じた折には観て頂きたいものだと思いました。
まあ、何らかのカタチでエールを送りたいと思った訳であります。
投稿者 久立珍重 : 2005年07月01日 10:06