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2005年7月24日  生まれが良ければすべて良し? [医学・科学関連]

7月23日発刊のBMJより。「社会経済的位置と小児インスリン抵抗性:デンマーク、エストニア、ポルトガルの比較研究」。ブリストル大学の社会医学研究グループを中心にした研究者たちによるもの。

人間、贅沢をしていればどこかでその報いというか、帳尻があうことになるに違いないという確信というのはかなり強いものがあるようで、健康診断などで「生活習慣病の危険」なるものを指摘されて来た人々は、みな一様に自分が普段やっている節制をアピールするものだ。「アブラものを減らして、野菜を一杯とっている。朝晩一生懸命歩いている」、なのになんで高コレステロールだ高血糖だとインネンつけられるのだ、やっぱ、遺伝がすべてなのかねと、気の毒になるほど落ち込んでいたりする。まして逆に、多少不摂生を自覚しているような人は、容易にその手の脅しにのっかって、医療機関の従順な顧客になってくれるものだ。

私なんかは正直に、あれは悪徳リフォーム業者が「このままでは家が崩壊する」などと脅すのと同じなので、あまりアタフタしないことを勧めるのだが、やはり命に関わると思いこまされている側は、怪しい田舎医者がちょっと違うことを言っていても、ほとんど耳に入らない場合が多い。

まして、幼い頃から経済的に恵まれて、いいものばっかり喰っているようなガキなら、そのうち手ひどい天の配剤が来るに違いないという確信もあるようで、まさしくそれを実証しようとしたのがこの研究であろう。デンマーク、エストニア、ポルトガル3ヶ国から、9才から15才の小児、それぞれ1000強のサンプルを取り出し、彼らのインスリン抵抗性*と、その両親の収入と学歴との相関を見るというものである。小児期からの豊かな食生活が、糖尿病の原因となる高インスリン抵抗性を来すのではないかという仮説が、この研究の背景にあるのは明らかだと思える。(*内因性インスリン値と血糖値から算出されるHOMAを使用)

22日のBBC報道でもこの研究がふれられており、その題名「金持ちの子供は必ずしも健康ではない」(" Wealthy kids not always healthy")をみれば、因果応報的な結果がえられているように思えるのだが、実際はそうではない。サンプルにした3ヶ国のうち、エストニアとポルトガルでは、確かに高学歴の親を持つ子供たちは10%から18%のインスリン抵抗性高値が見られたのだが、デンマークでは逆に20%低下していた。(グラフ参照

つまり、ヨーロッパ最貧国を競うエストニアとポルトガルでは、高学歴、高収入家庭の子供にインスリン抵抗性(他にも、中性脂肪、BMI、血圧なども)が高くなる傾向が見られたものの、富裕国の代表であるデンマークではそれとは反対の結果が得られたのである。これをどのように解釈すべきであろうか。容易に思いつくのが、「社会全体が豊かでないと、本当の豊かさは味わえない」というもの。ビンボー人に囲まれた状況で多少の金があっても、ろくな金の使い方は出来ないということであろう。

つまり、富や教養を有用に使える環境がないと、ジャンクフードや不摂生に金が回るだけ、というところではないかというのが、私の考察。とってつけたように遺伝子をもち出すよりは、いくらかでも教訓になるのではないだろうか。もっとも、日本の場合を考えれば、ヨーロッパ最貧といわれるようなところとくらべたって、そのインフラと基本的な文化背景が情けないのは明らかなので、デンマークと同じような結果はまず得られないでしょうけどね。まあ、日本の場合、学歴と収入というのがそれほど相関しないというか、そういうところでは社会経済的位置が決まらないので、既得利権との相関を調べた方がいいかもしれないけれど。

Lawlor DA, Harro M, Wedderkopp N, Andersen LB, Sardinha LB, Riddoch CJ, Page AS, Anderssen SA, Froberg K, Stansbie D, Davey Smith G. Association of socioeconomic position with insulin resistance among children from Denmark, Estonia, and Portugal: cross sectional study. :BMJ 2005;331:183 (23 July)

書いている途中に、この論文がすでに極○ブログで言及されているのを知った。富裕化は不健康のもとというような視点で、当初この論文を読み間違えられていたようで、根強い粗食信仰が典型インテリにもあることを知れて興味深い。もっとも、ご本人が実践しておられるように、人が皆、クソ高い手作り食品を各地から取り寄せるようにしていれば、高収入とよりよき健康は相関するかも知れませんがね。

投稿者 webmaster : 2005年7月24日 22:44

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読んでみると、たかが三国の調査というより、デンマークは西欧を示唆させていることがわかる。これに対して、エストニアは東欧、ポルトガルは南欧というわけだ。概要を... [続きを読む]

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コメント

まあ餓死に近けりゃインスリン的に健康なわけはないんですけどね。

投稿者 Aspirin : 2005年7月26日 20:46

貧しい社会の貧しい人間は、ジャンクフードさえ食えずに肉体労働して餓死に近い状態なので、インシュリン的には健康でも、プロテイン不足で洟垂れだったり、肺炎になりやすかったりで、本当には健康では無い。
貧しい社会の金持ちは、美食+車で太めになるが、それがもてるタイプ。
豊かな社会の貧しい人間は、ジャンクフードと運動不足で、インシュリン的には不健康。
豊かな社会の金持ちはフィットネスに励んで、理想的な健康状態。

投稿者 kk75 : 2005年7月26日 00:57