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7月16日発刊のBMJ最新号に、「成人における抗うつ剤の効果について」という論文が掲載されている。これは英国政府が運営している"The National Institute for Health and Clinical Excellence (NICE)"が最近出した「成人うつ病の治療にはSSRIを第一選択剤とするべき」という、うつ病の治療指針に対して真っ向から反論した画期的なものである。かねてより私は、SSRIはあんまり効かんのではないかと思っていて、滅多に使うことがないので(『論文読む限りでは、毛唐には効くみたいなんですけどねぇ』なんて説明したりする)、こりゃ有り難い援軍だと、早速内容を斜め読みしたので紹介してみる。
この論文はロンドン大学精神衛生科学の講師、ジョアンナ・モンクリエフとプリマス大学心理学教授、アービング・キルシュの共著であるが、ふつうなら言わないようなきつい調子で、製薬会社に都合のいい提言をする政府機関や、まず結論があるような論文を書く研究者を批判していてなかなか小気味がいい。
著者たちはまず90年代に行われたうつ病克服キャンペーンでSSRIが宣伝された結果、処方量が10年で2.5倍に増えたことを指摘する。そのうえで、NICEがSSRIを推奨した事は、NICE自体が行った調査データを無視したものだと批判し、すでに使用が制限されている18歳以下の場合のように、成人においてもその効果を冷静に検討する必要があると主張している。
そのNICEが行ったメタアナリシス結果を端的に示すのがこのグラフである。赤線がSSRI治療群のハミルトンうつ病スコアの分布、青破線がプラセボ群である。スコア点数にしてわずか1点の差、たいして違いはないことがわかるだろう。しかも、SSRIとプラセボを比較する場合前者の副作用は独特なので、いくら厳重に二重盲検手順を行ったとしても、ほとんどの被験者には、自分がどちらを飲んでいるかというのは丸わかりなのである。プラセボに催吐剤か、よっぽど胃もたれするような物質を使うしかないが、さすがにそういうわけにもいかん。
ここまで二重盲検手続きに無理があれば、はやりのEBMの観点なら、この程度の差など薬の効果判定にはなんの意味もないとされるはずである。ところがNICEはそうせずに、カットオフ値に絶妙な数字を選んで、無効有効群の数差が一番多くなるような操作をしているのである。
他にもこの論文が主張していることは何点かあるのだが、とにかくSSRIはたいして効かないと主張しているのは私だけではないことがわかって、実に気分爽快である。あれがよく効くと言ってる、観察能力すらない奴らの顔が見たいぞ。SSRIを延々と飲まされてさっぱりよくならない全国の遷延うつ病の皆さん、この論文をプリントアウトして、主治医のところに持って行ってあげようね。(その場合はPDFがコンパクトでおすすめ)
投稿者 webmaster : 2005年7月15日 23:05
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このリストは、次のエントリーを参照しています: SSRIは本当に効くのか:
» SSRIは効かない? from Do You Need Me?
◆via 医学都市伝説 うつ病治療で一番人気のSSRIが実は効かないのではという論文を紹介。オレも一時期はSSRI、SNRIと飲んだが、実は全く効果を感じなかっ... [続きを読む]
トラックバック時刻: 2005年7月16日 01:34
どの科でも、信頼できる医者は、2割程度しかいないと言うのが実感です。だから、自分の患者さんで、他科の疾患のことを相談されたら、5人の中で一番信頼できる医者にかかってみて下さい、と言いますが、実際には、そういうドクターショッピングは難しいでしょうね。しかし、もし私が、そういう状況になったら、10人ぐらいは探すでしょう。自分の健康と命を預けるわけですから。
うつ病は、心の風邪なんてウソです。薬だけでそんなに簡単に治りません(でも、治る人もいます。最近は受診に至るまでの経過が短いから)。
「うつの遷延化」というのは、昔から、重要なテーマです。なかなか治らない理由は大変複雑ですから、この場では、何とも言えませんが、新屋さんは、一度、主治医になぜ長い間治らないのかと問うてみてはいかがでしょうか。問わなければ、その医者が信ずるに足るかどうか、決して分かりません。
最後に、気になることを言われた場合はきちんと抗議をすべきだと思うので、言いますが、私は、この仕事(精神医療)に関して、お気楽な気持でやったことはありません。失礼な言い方です。
投稿者 同業者 : 2005年7月23日 00:35
・知識と知恵が同時に働かない精神科の医師が蔓延しているこの世の中で、治りたい患者はなにをすればよいのでしょう。
・中には風邪と同じ、2~3週間で直して見せますと言い切った医者に出会い、治療を頼んだのですが、予想通りに見事に裏切られました。
・製薬会社&厚生省承認の新型保険対象薬を出していれば、レセプト点数は稼げるし、長期にはなるので、生活安泰・・・と思っているのではないかと思ってしまう。
・患者は「犬も歩けば棒に当たる」の諺を信じつつ、新たな医者を見つけるべく、精力的に行動することが求められているのでしょうか?。 ・・・直せる医者って存在するの??
・ここの同業者発言が、お気楽な「おれは知ってるぜ」を、ご披露している場所に過ぎない気がして・・・。
・「励まさず、褒めず、そーっとしておくのが・・・」を平然と言う医者に向かって一度でいいから「アホ」と言ってみたい、医学知識皆無の現うつ状態十数年の「ボケ」より。
投稿者 新屋 : 2005年7月22日 02:30
ちなみに,誤解を生じると困るので,付け加えます.
アルゴリズム妄信,SSRI放置プレイが悪いと言っているだけで,
SSRIの有用性を否定しているわけではありません.
うつ病以外のいくつかの疾患にはかなり有効だし,
うつ病だって,他の薬との併用で,効果と副作用のバランスが取れた良い結果を出します.
実際,私も,よく使います.
投稿者 同業者 : 2005年7月17日 01:22
>アルゴリズム世代の精神科医は、全く頭を使わずに、パキシル出し続けますね。
そうなんですよね。大学からパートできている医者が本当にそうするので不思議で仕方なかった。パニックおこしっぱなし、リストカットしっぱなしの患者の話をフムフムと30分以上聞いて、それで同じ処方出し続けるのだから理解しがたい。
何かの都合で私のところにきて、薬をかえて改善していてもまた次の受診で元に戻すのだから、一種の破壊工作みたいなもんですよ。
一番不思議なのは、そういうアホを大学で指導しているのは私らと同世代なんだが、連中はいままでまともな臨床やったことないのかしらね。
投稿者 webmaster : 2005年7月16日 07:29
たしか、SSRIが発売される前と後で、製薬会社の株価が急騰して、その後暴落したのは、ほとんど効かないからという理由だったような。
三環系を使いこなしてきた精神科医は、すぐ見抜いたのだと思います。
アルゴリズム世代の精神科医は、全く頭を使わずに、パキシル出し続けますね。
かくいう僕もその世代ですが、アルゴリズム撲滅運動家です。
外来でいきなり三環系を出すなんて野蛮という教育を受けているのですよ。大学病院のお馬鹿な指導医から。刷込って怖いです。
投稿者 同業者 : 2005年7月16日 00:15
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