« クソ忙しい当直と酔っぱらい当直、どちらがイカン? | メイン | 床屋政談総括 »
4日前に書いた猫の死骸をバイオ燃料にする(実際はそうではないんだけど)という話であるが、どうも似たような話を以前にも取り上げたような記憶があり、自分のサイトを必死で探してみたら、ブログ化する直前の日記記事の中にそれを見つけた。タグを追加するのも面倒なので、以下に再録する。
"Changing World Technologies(CWT)"という会社が、生ゴミを燃料と無機物に分解する技術を開発したんだそうである。この技術は、発酵というような既存の方法に依拠せずに、ほとんどの物質、たとえば七面鳥の内臓、古タイヤ、プラスチック瓶、浚渫汚泥、古いコンピュータ、一般ゴミ、とうもろこしの茎、パルプかす、医療廃棄物、製油過程の副産物、なんなら炭疽菌のような生物化学兵器であっても分解することが出来ると主張されている。えらく順不同だが、これは同社のCEOが言ってる順序に沿ったもの。高分子重合過程の逆を行うことで、ほとんどすべての生ゴミを安価に炭化水素と無機質に分解するというのだが、どう考えても熱力学第二法則に反すると思われますがなぁ。同社の主張によれば、現在すでにフィラデルフィアで、七面鳥の廃棄内臓を燃料油に変換する実験プラントが稼動中だとのこと。
コストさえ無視すれば、廃棄内臓といったってどうせ炭素と窒素、水素その他の化合物がより合わさったものなんだから、炭化水素化合物に変換することは出来るだろうけれど、それはあらゆる物質はその質量に光速の二乗をかけたエネルギーになるといっているのと、あまり変わらないような気がする。ところがこの会社は、ガソリンと軽油を半々に混ぜたような燃料油を、1バレル(≒160リットル)あたり10ドル前後のコストで作り出せると主張している。
すでに個人投資家が4000万ドルの投資をしていて、州政府も1200万ドルを援助しているという。なんか、日本でもプラスチックゴミを灯油に変換するとかいって、手品風のプラントを作って自治体をだましていた手合いがいたような気がするのだけど、これもその類としか思えないのですがね。
とにかく、これを懐疑抜きで報じる雑誌記事と、当の"Changing World Technologies"のサイトをじっくりご覧になることをお勧めする次第。斜め読みした限りでは、熱力学第二法則の桎梏をクリアする独創性がどっかにあるとは、とても思えなかった。私としては、詐欺であるという方に4000万ガバス。(2003/05/14)
それみろ、やはり夢の技術なんだ、例の猫燃料もニュアンスの違いはあったにせよ本当なんだ、これからの時代は廃棄物からエネルギーを得られる夢の時代になるんだと思われる方もいるかもしれないが、それはちょっと甘い。化学反応式からみれば、有機廃棄物はちょっと工夫すれば燃料になるように思われるかも知れないが、それをいえば水だって水素と酸素だけから成り立っている。二つを分ければ燃料として水素が取り出せ、燃焼させても二酸化炭素すら出ないではないか。
でも、それが無意味なことは誰でも知っている。電気分解すれば水から水素を取り出すことは簡単だが、当然それに必要なエネルギーは、得られた水素を燃やしてもまるで足らない。CWTのサイトはその点に全く触れていないが、これを解説するブログではかなり詳しくそのコストについて書いてある。それによると、このプラントの処理コストは1バレルあたり80ドルだそうである。これは8月終りに付いた原油最高値である70ドル強を大きく上回る。CWTは州政府から多額の補助金をもらってその差額をうめて商売にしているらしいが、さすがに新しくプラントを作る計画はないとのことだ。
その上、このプラントは猛烈な悪臭を放出し、その問題は解決する目処すらたっていない。理屈からいえば、合衆国がだす有機物ゴミをすべて燃料に変えれば、中東から原油を輸入する必要は全くなくなるそうであるが、この燃料化に必要なコストというか、エネルギーはどこから調達するのか、考え始めると夜も眠れなくなってしまいそうな話。
こうして、現実のバイオ燃料技術の方から例の猫燃料を見直すと、そのうさんくささは増すばかりという印象である。うまい話はそうあるものではないという好例でありましょう。
投稿者 webmaster : 2005年09月19日 20:33
このエントリーのトラックバックURL:
http://med-legend.com/mt/mt-tbcba.cgi/568
このリストは、次のエントリーを参照しています: バイオ燃料プラント稼働中:
» [quatsch] BTTF 放送記念 from 阿呆石の取り除き方
何だか、Googleで「Alphakat」と検索すると日本語サイトでうちがトップに来ている模様。困った。それでも、今日はテレビ東京でデロリアンがバナナの皮で動く... [続きを読む]
トラックバック時刻: 2005年09月23日 17:09
テレピン油が航空燃料になるからと国挙げて松の根掘り返してたこともあるわけだし、何でもやってみてコストに見合うかどうか見極めてる最中じゃないですか。
有機廃棄物をまとめて再利用できないか、というアメ公らしい大雑把な実験なんじゃないですかね。
投稿者 T2 : 2005年09月20日 13:54
かのフリッツ・ハーバー博士が祖国ドイツ復興の密命を帯びて参加した極秘プロジェクト。
-海水から金を抽出せよ-
あれこれ言われているようですが、少なくとも抽出には成功しているわけです(笑)。
最大の難関は現実に得られた金の量が期待値の百分の一から千分の一だったという事実ですね。
一方あの「空気から火薬を」生み出したドイツの化学力のことですから、ひょっとしたらと少なからぬ国が神経を尖らせたそうです。
僕の叔父の一人は核融合発電の実験炉建造に人生の三分の一を費やしましたが、必要とされる周辺技術のあまりの膨大さに手を挙げてしまい、今はエホバの証人として第二の人生を歩んでいます。
投稿者 小狸工房 : 2005年09月19日 23:36