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眼瞼痙攣というのは私らがメインに見る疾患とはいえないが、パニックもちの人などにこれがあると、自分の身体的な統御はやはりうまくいかないのだ、という不安感を引き出してしまうこともある。抗不安剤の投与で筋弛緩作用がほどほどに得られるため、そこそこ改善はするのだが、やはり全く消えてしまうことはなく、それが大事に至ることはないという説明をするだけでは満足してもらえない場合も時にはある。また、この状態とよく似た片側顔面痙攣というのもあり、一応別のものだが、区別しがたい場合もあるように思う。
その場合は脳外科に紹介して、根本的な手術法を説明してもらうと、「あ、それなら結構」とあきらめてもらえるのだが、中には敢然とそれを受ける人もいて、別に命に関わるわけでもなしというこちらのノンキなとらえ方は、悩む本人を傷つけていたのだなぁと思ってしまう。それでも深刻とはいえ、こういう悩みを、命に関わることもある手術的解決にゆだねさせる方針には、いささかバランスの崩れを感じないでもない。
というわけで、いわゆるボツリヌス毒による眼瞼痙攣治療という奴がアメリカなどでは第一選択になっているという話を聞き、これなら私にも対応可能だと、自分でもやってみることにした。もちろん、それだけが目的ではなく、ある種の筋緊張異常疾患にも応用可能であるかも知れないと思ったからでもある。古い精神病院で働いたことがある人なら、そこに入院している慢性化した人の間に、脊柱の強い変形が認められる人が結構いることを知っておられるだろう。昔はそういうのは古い脊椎結核だと思っていたが、筋ジストニーのためにかなり短期間の間にそうなる人もいることをその後知った。そして、それに対して一般的な薬物療法はほとんど無効なのである。
それに対しても、このボツリヌス療法は有効だという話もあり、余技としての眼瞼痙攣だけでもないからと、この薬を出している製薬会社が求める講習会なるものに、長時間じっとしていられないハンディをも押して参加したのである。治療手技そのものは極めて微量のボツリヌス毒をまぶたの周囲や痙攣部位に注射するだけで、それほど難しいところはなく、講習自体も毒素の処理方法、とくに使い残しをどうやって失活させて廃棄するか、というあたりが重要ポイントであった。
そして、以前から眼瞼痙攣を何とかしてくれと依頼していた、比較的身内の患者の調達もすみ、いざこの薬物を購入するという段になったら、これがなんとまた面倒くさい手続きが山ほどあるのだ。書式を定めた承諾書の記入の確認の後、治療計画書みたいなものを出して患者の登録をおこない、その後やっと売ってくれるというような体制になっているらしい。これを求める薬屋さんの担当者も、普段のMRさんとは手のひらを返したようなお役所的態度で対応してくるので笑ってしまう。
そりゃいつもは不必要にヘコヘコしている相手に、「この書類がそろってないから売れないよ」と言い捨てることが出来るのは素晴らしいカタルシスだろうから、ついついああいう口調になるんだろうなと感情移入してしまわないでもない。でもね、この薬は薬価が1バイアル10万円近いのだ。保険はとおるが、それでも自己負担3万円で、それ以上にそれを購入する病院には全く値引きがないので、消費税分はそのまま持ち出しである。普通の局所注射と同じ扱いのわずかな処置料が入るだけで、しかもあらゆるリスクはすべてしょわないといけない。
そこまで製薬会社に有利なだけの薬を売るのに、あのお役所態度はないのではないかな? しかもである、この薬はいわゆる美容外科では「しわ取り薬」として使われていて、その場合はまずこういった面倒な手続きなどは厳密に求めていないはずである。そしてそういう自費治療の場では、一本のバイアルから10人以上の患者に小分けしてこれを打ち、しかもそのたびごとに1バイアル分の元を充分取れる治療費を要求しているはずである。
簡単に言えば、末端価格をつり上げるだけつり上げている自費治療機関には野放図な使い方を認め、保険薬価が定められている一般治療の場では精一杯の売り惜しみをしているのだ。要は、麻薬業者がギャングにおろしてもうけようとするのと、ほとんど同じ構造を持っているといえる。保険医療機関が、正当な価格で買って治療に使った残り(なんせ1バイアル100単位で、実際の治療には2~3単位しか使わないのだから)を、もしコッソリしわ取りにでも使われては溜らん、という不信の構造があの厳しいチェックなのであろう。
そんなの、初めから数千円分の小分け薬を出しとけばいいのではないか?隙を見つけたら儲けのために悪さをする傾向がある医療機関があるのは認めますよ。利益を確保したいのは企業として当然だとも思うが、だからといって、自分たちの製品の9割を廃棄されることを前提にして法外な価格を正当化するようなことを、よくも平気でやるものだというのが正直な感想である。
少々頭に来たので、これは今後使わないことにした。どうにも使いたい時は、カラシレンコンでも買ってきますわ。治療予定だった人も、結局よその病院に紹介することになるが、あのクソ会社を儲けさせるのかと思うと少々不愉快。
投稿者 webmaster : 2005年11月15日 23:31
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ポ○ックスの厚労省での承認条件を見て見ますと、再審査期間中は使用症例全例を登録制にして使用成績調査を行わなければならない事になっています。又、講習会を行って情報と施注手技を教育したあとでないと売ってはならないという縛りがあります。添文を読む限り適応外で使うことに対しては警告が出ており、製薬企業としては手間ばかりかかってそれほど売れる薬剤ではないのではないでしょうか。
美容整形の世界についてはよく知りませんが、まともな製薬企業なら自費治療であっても適応外でどんどん使わせるという危ない橋は表だってはわたらないと思います。ただ、日本は医薬品の個人輸入については規制がないに等しいので外国から簡単に手に入り使われているのだと思います。
まともな対応を取らざるを得ない国内の企業は、面倒な手間をDrに押しつけざる得ず、それで嫌われて、一番儲かるところは輸入代理店などに吸い上げられいい迷惑出はないでしょうかね・・・・・以上、立場が変わればこんな感想もありでした。
投稿者 kinoutabito : 2005年11月17日 19:28
例のMR氏が開口一番
「そもそも僕らの業界には「薬九層倍」って言葉があってね」。
ワタクシ、この人物には信頼されているのかそれとも舐められてるのか。
今後のビジネスのことも考えれば尊重しなければならないのではありますが、ひちこいオファーもあるし(笑)。
それでも彼の城へ呼ばれるときには応接室どまりなのですが。
とはいえ執務室へ踏み込みたいならこちらも武装せねば(そもそもあちらから願い下げだそうですが)。
使いたいのなら、先ずは大広間へ呼んで欲しいものです。
エエ、道化以外のポストで(笑)。
投稿者 小狸工房 : 2005年11月16日 01:28