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米国の犯罪小説とか映画では、向こうの刑務所は全くの無法地帯で、特に若い受刑者は男女関わらず過酷なレイプの嵐に見舞われるような描写がしばしば見られる。政府の嘱託をうけた人類学者の調査は、これはあくまでフィクションであって、そのような行為はまれであると主張している。
この研究を行ったのは、クリーブランド州ケース・ウエスタン・リザーブ大学で文化人類学的手法を用いて暴力行為の予防研究に携わるマーク・フレイシャー教授たちのグループである。彼らは全米の刑務所、矯正施設に収容されている男女受刑者たちと延べ数百時間に及ぶ面接をおこない、受刑者たちの社会的性生活に対する意識を明らかにしようと試みた。
この研究は、2003年に制定された「刑務所内レイプ防止法案」"Prison Rape Elimination Act (PREA)"の効果を判定する目的で政府機関から委託されたものだが、得られた結果は矯正当局の意図からはかなりはなれたものだった。PREAの制定意図は、映画や小説に出てくるような暴力的強制的レイプが刑務所内に横行しているという認識の元、それらを排除するというものであったが、実際の受刑者たちの現状とはかなり違うものであることがこの研究で示された。
受刑者たちの間では、確かに性的暴力が今も蔓延しているような訴えが見られたものの、実際にそのような被害を自身で経験しているものはほとんどなく、多くの受刑者は噂や言い伝えのレベルでそれを語っていたのである。そして、レイプ常習者が実際にいたとしても、他の受刑者がそれに従うことはなく、むしろ排除(これには殺害されることも含む)されるのを恐れるレイプ常習者の方が、他の受刑者と円満な関係を築くようになるのだという。
受刑者たちは、ギャングやカルト集団が組織している共益グループとか、もっと私的な友人関係によって作られる集団的な安全保障自助グループの輪からなる社会システムを形成していて、暴力的なレイプ常習者が乗じる隙などないというのが実体らしい。刑務所内が無法地帯であるという噂や伝説が維持されるのは、むしろそのような自助グループの結束を固める効果があるのだろう。もっとも、そうした集団自体が、ある時は性的であるなしにかかわらず、暴力の源泉となることもあるらしいのだが。
この研究は2004年に議会に提出されたPREAの効果に対する年次報告書(PDF)の後半26ページ以降に添付されているので、興味のある方は流し読みを。こちらのヒューストン・クロニクル紙の記事には簡単な要約がある。
妙に管理が厳しい精神科病棟に限って、陰湿なイジメとか逸脱行為みたいなことがよく起こり、患者自治みたいなのをうまく促せば、そこそこの環境が作れるようなことは私らの商売ではよく経験することで、それはもっとハードな人がうじゃうじゃいる向こうの刑務所みたいなところでも同じなんだなぁというのが感想。まあ、こちらの場合「病気を治す」というほとんど幻想ではあるものの、一応の錦の御旗となる理念を握っているので、刑務所とくらべたら圧倒的に運営は楽なんですが。
投稿者 webmaster : 2006年01月18日 23:49
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トラックバック時刻: 2006年04月14日 06:30