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2006年04月14日  BMJ4月バカ論文「やる気なし病」顛末 [都市伝説・デマ・トンデモ]

ちょっと前に出たばかりのBritish Medical Journal(BMJ)332巻に、オーストラリア・ニューキャッスル大学の研究者が書いた「新しい疾患の発見:やる気なし病」("Scientists find new disease: motivational deficiency disorder")なるニュースが掲載された。極端な怠け者だと端からは見られる、背後に医学的な疾患が隠されている状態が存在するというのだ。

「やる気なし病」と名付けられたこの疾患は、ニューキャッスル大学神経内科学教授Leth Argos氏によって発見され、動機付けレベル判定スケールとPETスキャンによって診断でき、オーストラリア人の実に5人に1人が罹患してる可能性があるとされている。Leth Argos教授はヘルステックというベンチャー企業を設立して、この疾患に対する特効薬であるindolebantの開発を行っているとも報じられていた。

このニュースがでていたBMJの332巻というのが、4月1日発刊であるところでちょっと考え込み、Leth Argos教授という名前から、これがエイプリル・フール記事であることがわかるのだが(Leth Argos≒Lethargy(無気力)、ほかにもindolebantなる薬剤が、カンナビオイド受容体阻害剤だというあたりはかなり笑える)、これを本物の記事だと思った人は多かったようだ(この疾患を論じるカンファランス開催を告げる記事(PDF)まで用意されている。手が込んでますなぁ*)。例えば私が講読している某医学系メールマガジンでは、こんな紹介がされている。

4月1日ということで最初はうそのレポートだと思いました。しかし、読んでみると嘘ではなくどうやら本当のレポートだったのでした。(中略)やる気が出ないときにやる気を出す生活改善薬として、indolebantが販売されるようになるかもしれません。
4月15日発刊のBMJでは、編集者コラムでこの記事をとりあげ、「あれはエイプリル・フール記事であった」と告白している。いままでエイプリルフールだけでなく、時期を問わず様々な英国風の冗談記事を掲載し続け、一度たりとも「あれはジョーク」と発表したことがないBMJが(すべて確認しているわけではないが、今まで読んだ限りではなかったような)、このような発表をするのは異例のことであろう。

そのコラムでは、「やる気なし病」を本当だと思って報じた報道機関から、「信頼性を損なった」と強い抗議を受けたとして、謝罪の意を表明している。しかし、今までBMJが掲載したエイプリル・フール記事は、すべて穏やかなユーモア感覚で受け取られて来た経過も説明されている。

しかし、BMJにとってはこの事態はやはり想定外であったようで、先ほどのコラムのリンク先が間違っているだけでなく、元記事へのコメント自体が別の論文につけられているという、医学雑誌としてはかなりの致命的混乱を示している。英国式ユーモアが通用しないというのは、彼らにとっては信じがたい現実なのであろう。

BMJはちょっと前から、全公開完全無料の原則を改変し、一部記事の有料化に踏み切っている。一定の期間が来れば無料公開するというのだが、おかげでこちらでネタにすることがほとんど出来なくなってしまっていた。この記事も、書き出し部分しか読めなかったので、面白ネタと知りつつ取り上げられなかったという経緯がある。なんせ今になっても、元のデマ記事を全部読もうと思うと金がかかるという理不尽さなので、この機会に有料化路線を見直して欲しいと切に思う次第だ。多少の寄付ならするからね。

(*)などと書いていたのだが、これは製薬会社や一部の医学関係者による、疾患の押し売り行為(Disese Mongering)を批判する目的で開かれた、れっきとした医学カンファランスでありました。疾患でっち上げを戯画的に示す目的で、Leth Argos教授が堂々の発表をするというコントをやったわけですね。(4月17日追記)

投稿者 webmaster : 2006年04月14日 23:55

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