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ジェームズ・クレーンはWTC北棟101階で働いていた。彼は全盲で、デイジーというゴールデン・レトリバーの盲導犬を連れていた。あの9/11当日、旅客機が20階下を直撃し、彼はこれで終りだと思い、デイジーだけは助けようと、そのハーネスを外し、彼女を自由にした。デイジーは照明が消えたビルの中を駆けていった。ジェット燃料の臭いと煙にむせびながら、ジェームスは最後の時を覚悟していた。ところが30分後、デイジーが戻ってきて、彼を112階に連れていった。
デイジーはビルの中を走り回り、ジェームズ、ジェームズの上司、その他300人もの人々を導いて、炎上するビルから脱出させた。彼女はまだ多くの人がビルに閉じこめられているのを知っているのか、ジェームズが止めようとするのも聴かず、再びビルの中に飛び込んでいった。
この二度目の挑戦で、デイジーは392人の命を救った。彼女はみたびビルに戻っていったが、その後にビルの崩壊が起こった。ジェームズはその音を聞き、涙にくれていたが、デイジーは帰ってきた。もっとも、この時は消防夫に担がれてではあったが。「この犬は怪我をする前に、我々を人々のところに連れて行ってくれたんです」。消防夫はそう説明した。
デイジーは最後の試みで273人の命を救った。彼女は煙を吸い込み、足の裏に深刻な熱傷を負い、足を骨折していた。しかし彼女は合わせて967人の命を救ったのだ。翌週、ジュリアーニNY市長は、デイジーに民間の犬としては初めて、名誉犬の称号を贈った。(引用以上)<Link>
9/11事件の直後から、いまも循環しているというチェーンメールだそうである。下の階が炎上しているWTC101階から、わざわざ上に登ってそこからどうやって脱出したのかが不明で、そもそも犬一匹に何が出来るかと考えれば、この話がフィクションであるのは明白だと思われる。
ところが、これほど派手な話ではないものの、このチェーンメールには二つの実話モデルがあるのだ。まずWTC北棟78階のオフィスにいたマイケル・ヒングソン氏。彼も全盲で、ロゼルというラブラドール盲導犬を連れていた。彼らは日頃の避難訓練のマニュアル通り、遅々として進まぬ脱出行にパニックも起さず、ビル崩壊の前に脱出している。
次の例はやはり北棟71階にいたエデュアルド・リベラ氏のケース。彼も全盲で、ドラゴというラブラドール盲導犬と一緒にいた。リベラ氏はメールの主のように、犬だけは助かるようにとドラゴを自由にしたが、いったん離れていったドラゴは再び彼の元に戻り、主人に付き添ってその脱出を誘導したのだった。
チェーンメールはこの二つのエピソードをつき混ぜ、盲導犬のあり得ぬ大活躍を付加したものであるのは明らかだろう。作者の意図がどこにあったのかは判らないが、あそこまでのスーパードッグ活劇にしてしまうのは、多少の顰蹙を買う行為といえなくもない。
ところで、この事実関係を確認するために検索していて、こういう講演記録があるのを発見した。演者は危機管理の話題になるとしばしば登場する、元内閣安全保障室長の佐々淳行氏である。彼は、あれだけの惨事のなか、避難活動が極めてスムーズに進んだことについて述べ、初めのマイケル・ヒングソン氏とロゼルの例を引いている。講演記録なので、若干の固有名詞や状況の誤りがあるが、それはさておき、彼はハンディのある人でも無事に避難できたことを、「国民全体に危機意識、危機に対処する時の基本的な教養や経験」があるからだと説明している。
「これは第二次世界大戦後100回を超える軍事紛争、特に朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争がありました。だから10人から30人に一人ずつくらい元軍曹、将校が必ずいます。それが『Don't panic!』と叫びながら誘導してきているんですね。そして、従うほうの人達も軍歴のある人がたくさんいますから整然と行動した」からなのだと。
国家というものはドンパチを欠かさぬようにして、戦争経験のある軍人をそこら中に配置しておけば、危機管理もしやすいものらしいのだ。私らが子供だった頃、大人というものはおおむね戦争経験があったもので、それでも集団パニックで被害が拡大したような事故・事件はいっぱい起こっていたような気がする。やっぱ、米軍に負けた旧日本軍では駄目だ、と言うことなのだろうか。佐々氏に会うことがあれば、詳しく尋ねてみたいものだ。
それに、ヒングソン氏とリベロ氏の体験を読むと、避難経路ではかなりの混乱がありつつ、人々は最終的には協調しあって脱出したことが知れ、元軍人さんたちの活躍はあまり関係なさそうに思える。たまたま書かれていないだけかも知れないけれど。
あの惨事の中、盲導犬に連れられた視覚障害者たちが幸運な生還を成し遂げたという実話には、相当の神話形成パワーがあるに違いない。それは無名の作者に、1000人近い人々を救ったスーパードッグ物語を書かせ、危機管理専門家には、軍事エキスパートたちによる「自助」的危機管理の夢を語らせるのだろう。
ヒーローが人間だとは限らないが、そのヒーローを創りだすのはやはり人間だということであろうか。
投稿者 webmaster : 2006年09月24日 22:52
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ディズニーあたりが映画化したら大感動娯楽映画になると思う。アメリカ人による「人間(特にアメリカ人)は素晴らしい!」という映画には個人的に拒絶反応を示しがちだが、犬ならかわいいし大丈夫だと思う。
投稿者 Tsukisumi : 2006年09月25日 19:11
名犬の話はともかく軍人がいたからパニックにならなかったというのは、いささかというか大いに疑問がありますね。
阪神大震災の時は、被災者にパニックはなかったですよ。
それに対して、アメリカの地震やハリケーン被害では略奪なんてざらですがな・・・w
たまたまWTCビルに居た人の〔客層〕が良かっただけではないですかね?あれが普通のショッピングモールなら、大パニック必至だったかもですよ。
投稿者 はかせ : 2006年09月25日 18:18