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2007年01月06日  睡眠時無呼吸症への「支柱」埋め込み療法 [医学・科学関連]

pillar_system_s.jpg

今朝の毎日新聞朝刊に、「睡眠障害:免許処分、わずか6件 ドライバー申告で判断」なる記事が掲載されていた(参考:ウェブ魚拓キャッシュ)。要は、6年前の道交法改正で、運転免許取得上の準欠格条項となった睡眠時無呼吸症(sleep apnea syndrome;SAS)を自己申告する人間がほとんどおらず、ここ4年の間にこの疾患を理由に免許の停止・保留処分を受けた人は6人しかいない、という内容である。

そんなもの、自己申告すれば一方的に不利になるだけで、救済も殆どないような制度におとなしく従う人間なんかいるわけがないのだが、お上のいうとおりにするのが人の道だと考えているらしい大新聞記者にとっては、ただいらだたしい法運用の乱れと写るようだ。

大体、SASの疑いで免許更新が保留された場合、確定診断の上、「6カ月以内に治る」などと断言出来る専門医はいるのだろうか。ちょっと検索すれば判るが、SASの専門クリニックは最近結構増えてはいるものの、診断が付いても治療手段は睡眠時にCPAPという呼吸補助手段を装着する事ぐらいだ。付けている間は症状が改善するということであって、「治る」と言い切るのは無理。

しかも、寝る時にこの猪八戒の扮装道具みたいなものを付けるのはいかにも煩わしそうで、実際、すべての人がこれに堪えられる訳ではない。私も何人か、この治療から脱落した人を見ているが、皆あんな物付けて寝るぐらいなら、日中眠い方がマシだといっていた。

睡眠クリニックの宣伝文句には、ぐっすり眠れるので多少の違和感など気にならなくなるなどと書いてあるが、なかなかそう単純なものではない。大体、出張時とかどうするのだという話になるし、車内で仮眠しているプロドライバーのことまで考えてくれているわけではない。

もちろん、他にも地道に減量するとか、薬物療法や外科療法、レーザー治療、高周波照射法、マウスピース法、あるいはこの前紹介した「代替療法」などもあるのだが、やたらに苦痛が強かったり、効果が確実とは言えなかったりする(個人的には、掃除機の延長チューブを使ってディジェリドゥの練習を集中してやっていたら、『イビキが少なくなった』と評価してもらえましたが)。

その点、米国のRestore Medical社が考案したこのPillar Procedure(支柱療法)は、SASの治療にある程度の展望をもたらしてくれるかもしれない。この治療法は睡眠時気道をふさぐ原因となる後部軟口蓋に、ポリエステル繊維を編み上げた構造をもつ2センチ程度の「支柱」を3本埋め込んで、その落ち込みを防止するというもの。

同社によれば、この方法は簡単で合併症が少なく、一度の受診で処置が出来るという。1年間の治療成績観察では、80%以上の患者に対して効果が認められたと主張している。効果がなかった場合や、合併症が認められた場合も、原状復帰は容易とのこと。

同社サイトには、アニメによる説明と、実際にこのピラー挿入処置をしているビデオがあるので、興味ある方は参考にされたい。素人目にも、リスクは出血と感染、よっぽど見当はずれな場所に埋め込んでしまうというようなことぐらいかと思われる。もちろん、専門家から見れば上気道の深遠なる生理機能を無視した、とんでもない方法なのかも知れないので、充分な検討は必要だろうけれど。

治療費は日本円にして15万から30万というところで、向こうの保険でも認められる場合があるらしい。ざっと検索した限りでは、日本でこれを保険外治療で行っていることをおおっぴらにしているところはないようだが、そう複雑な方法でもないので、よほどの問題がなければ、ボチボチと広がっていくのでは。

もっとも、咽頭異物感症なんてのに悩まされている人をSAS以上にたくさん見ている立場からすれば、不快感がどこまで出るのかがちょっと不安なところ。<Via>

投稿者 webmaster : 2007年01月06日 16:22

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コメント

>しっかり認識している人ならば、免許の強制剥奪も納得できるはずです。

自主申告に頼るのを精神主義と言いますな。

正直者が馬鹿を見ない為に、強権(罰則規定)と救済(生活の保障とかタクシー割引とか)のアメとムチがある、ってブログ主さんは仰っていると思うんですが、僕の勘違いかな?

投稿者 元院生 : 2007年01月10日 06:05

>事故を起こそうとしている人を救済してはいけないのでは?

へえ、この疾患があるかも知れない人は事故を起そうとしている人なんですか?なんか勘違いしていない?

いったん与えた免許を強権で奪うのだから、それなりの代替手段を考えるのは当然だと思いますがねえ。免許がなくても生活出来る職業を斡旋するとか。

そういう発想することが倫理に軽いってことなら、私はそんなクソ倫理など無視してもかまわんと思いますね。

投稿者 webmaster : 2007年01月09日 23:49

「救済も殆どないような制度」と書いてありますが、
根本的に完治しないなら救済してはいけないのでは?
事故を起こそうとしている人を救済してはいけないのでは?

人が死んでからでは遅いのは、三菱自動車のリコール隠しと同じ。
まして、プロドライバーになんてなって、大型トラックで
居眠り運転してほしくないです。
車の運転が人をどれだけ不幸にする能力があるかを
しっかり認識している人ならば、免許の強制剥奪も納得できるはずです。

医学系の人は倫理的に軽いのでしょうか?
技術的な議論も、人を助けるための技術を語ってるんですが。

投稿者 さとう : 2007年01月09日 22:50

そういえばワンコの無駄吠えを減らすグッズの応用版、あの吠え声に反応して電気ショックを与えるという首輪の、「あなたのパートナーのいびきを改善します」というアイテムがあったとか。
「ちょっと我慢してね、あーた」
と細君が嫌がる夫君にしぶしぶと取り付けさせると、なんともいえない凄まじい形相となり、身振り手振りでこれを外せと言うので、外してみれば細君の手からこれをもぎ取り力一杯壁に叩きつけると
「今度またこんなもの着けさせてみろ、その場で離婚してやる!」

投稿者 小狸工房 : 2007年01月09日 22:08

 あのCPAPマスクは慣れたら大したことないのは自分では実証済みなんですけど、根本的治癒にいたらないのがやはり難点ですねぇ。旅行に持っていくのも嵩張るし・・・

 その点、支柱療法で一生かかなりの間解決するならば試みられてもよいでしょう。日帰り手術でできそうなんで、いんちょ~のクリニックでもできるか検討させていただきますw
 日本では自費というのも、実は美味しかったりして♪

投稿者 いんちょ~ : 2007年01月08日 12:42

>CPAPで適切に治療されていれば、それがたとえ対症療法であったとしても居眠り運転リスクは最小限となります。その点を明示していただかないと誤解を生みます。

あのね、「付けている間は症状が改善する」と明記しているわけで、どうすればあなたが言うような誤解を招くんです?

症状は改善するし、命への脅威も少なくなるんだから、装着時の違和感なんぞグズグズいうんじゃない、というような木で鼻をくくった対応をされる不満が患者さんの中にはあるわけで、そういう専門家の対応とそっくりなコメントが釣れたというのが、私のつまらんエントリーの意義といえるのかも。

投稿者 webmaster : 2007年01月08日 10:14

未治療のSASならば居眠り運転のリスクは残ります。
CPAPで適切に治療されていれば、それがたとえ対症療法であったとしても居眠り運転リスクは最小限となります。
その点を明示していただかないと誤解を生みます。

著明な眠気に対しては対症療法で防げるということです。
また、生命が脅かされるのは重度の患者ではなくて、AHI(無呼吸低呼吸指数) 20回/時以上の中等症からです。
動脈硬化の促進から循環器疾患もしくは脳梗塞などの発症リスクが高まり、9年生存率が40%低下するというpaperが10年以上前に出ています。

というかまずは減量が第一でしょう。

投稿者 TKR : 2007年01月08日 00:20

母がちょっと悩まされておりまして、父とはもう何十年も寝室を別にしています。
もっとも睡眠時の姿勢にもずいぶん影響されるようで、眠れているときにはちゃんと眠っているのですが。
何度か母が自分のいびきで飛び起きる光景を目にしておりますので、老化とともに悪化さえしなければと思います。

ずいぶん以前にはこれの外科的措置として、喉にキャップを埋め込むというのもありましたが。
生命が脅かされるほどの重度の患者に対して提案されたものですが、寝るときにはキャップを外して気道を確保するというのはさすがに乱暴すぎるかと。

投稿者 小狸工房 : 2007年01月06日 20:59