« 神童はヘヴィメタルを聴く | メイン | ヴェイン・ヴューアー »

2007年03月26日  iPodで聴診の達人に [医学・科学関連]

ipod_auscaltation_s.jpg

患者は医師に病変徴候を読み取ることを委ねており、とりわけ一般的な心雑音聴取に関しては、その技量はベストであるのが当然だ。幸いなことに、その技術を高める方法は簡単で、何度も聴診することだけである。事実、集中的な反復訓練-典型的心音を最低400回聞くこと-で、医師の聴診能力は飛躍的に高まるという研究が、米国循環器学会年次例会で発表された。

昨年、医学生に対してiPodに記録した心音を繰り返し聞かせることで、聴診能力を高めたという試みを発表したテンプル大学医学部内科学助教授で循環器専門医のマイケル・バレット医師は、開業医に対して同じ訓練を行った。

90分のセッションが行われ、参加した149人の一般内科医師は、大動脈弁狭窄、大動脈弁閉鎖不全、僧帽弁狭窄、僧帽弁閉鎖不全、無害性収縮期雑音の5種類の心音を400回繰り返して聴診した。前もって調べた医師たちの聴診能力は、正解率40%であったが、セッション以後は80%にも上昇した。

聴診器による診察に熟練し、異常心音を聴き取る能力を持つことは、高額な検査に頼らずに、危険な心疾患を識別する重要なスキルである。「心エコーや負荷試験といった検査をどんな場合にオーダーするのか、というのは重要ではあるが、免許更新*の際に一般内科医に課せられるこういう基本的スキルを、研修医や他領域の専門医も当然習熟すべきである」、そうバレット助教授は語る。(*注:米国の医師免許は定期更新制である)

心音の聴診という技術は、講義や実習といった伝統的な方法ではなく、集中的訓練と反復によってのみ習熟が可能で、その上で臨床に望むべきたというのが、バレット助教授の意見だ。「これは人から聞いて覚えるという訳にはいかないのだよ」、助教授はそう語る。

バレット医師は、3月25日、26日にニューオルリンズで開催されている米国循環器学会の際、専門医たちの基本的聴診能力をテストし、その後iPodを使った心音聴診訓練を課してその改善度を測定する予定であるという。彼が教えるテンプル大学医学部では、卒業まで毎年次のカリキュラムに、iPodを含む心音シミュレータを使って、心音聴診技術という重要にして絶滅しつつあるスキルを伝えて行く予定であるという。

各年次毎に、心音ファイルがオンラインで提供され、学生はそれをダウンロードしてiPodにセーブして繰り返し聞いた後、聴取能力のテストが行われる。バレット助教授が学生に対する訓練を報告して以来、心音ファイルへの需要が増えたため、循環器学会の協力でファイルのオンライン化とCD化が可能になった。

バレット助教授は、近い将来、医師が通勤途中に心音ファイルを聞くことが一般化すると予測している。「忙しい開業医が新しいスキルを学ぶために、学会と通勤路という二つの機会をもつことになる」。

なお、助教授は、車で聞くときにはACCファイルをCD化しておくよう、勧めている。(以上、テンプル大学プレスリリースより)

私が学生だった頃はまだ心エコーもない時代で、この心音聴取技術というのは結構重視されていた。新しもの好きの循環器学教官がアメリカで買ってきたという、心音シンセサイザーなるものを、散々聞かされた覚えがありますがなぁ。それが今は消えゆく伝統芸能扱いになっているらしい。実際のところは、専門医でなければ、なんかおかしいということが判れば良いわけなんだけど。

確かに、ちょっと心臓の具合が悪いという受け持ち患者を循環器の医者に紹介すると、ほとんど問診もしないのに、心カテをやるようにいわれたと、逃げ帰って来るような例もあって、基本的技術を無視することの弊害は大きいとは言える。あくまで信頼関係を勝ち取るための儀礼的技術だと、割り切ったうえで習熟するのが正しい態度ではないかな。

なお、テンプル大学の心音ファイルのサンプルは、こちらから右クリックでダウンロード可能。(1)正常心音、(2)異常心音(多分、僧帽弁閉鎖不全と思われる。私の耳には、Ⅲ音が聞こえないけど)<Via>

投稿者 webmaster : 2007年03月26日 20:33

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://med-legend.com/mt/mt-tbcba.cgi/1064

コメント

やっぱ、音量とか、音響特性、周囲のノイズを拾う率などを考えると高い奴が一番ですねぇ。

ちなみに、私はほとんど聴診器なんか使わないが、それでもたまに使う時には音量が大きい方が聞こえやすので、米国製の心臓専門家向けの高いのを使ってますが、直販ルートで買っているので6割引ぐらいです。

電子聴診器というのがあるのですが、これはまだ発展途上ですね。音量だけは高いものの、S/Nがもう一つです。

投稿者 webmaster : 2007年03月31日 19:54

心音で連想してしまったんですが、聴診器っていろいろありますよね。
1000円のカラフルなやつから数万円?もするやつ。
あれって、何か違いがあるでしょうか?

投稿者 さいふぁ : 2007年03月30日 23:35

コメントしてください




保存しますか?